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和歌がすきですきですき

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和歌がすきですきですきなので、好きな和歌のことを書いています。
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卯の花の咲きぬるときは白妙の波もて結へる垣根とぞ見る

《私訳》
卯の花の咲くときは、この垣根をわたつ海の白波をもって結いめぐらした垣根と見よう。

新古今集・夏・重家。 本歌取りの歌である。
本歌は古今集。

わたつ海の挿頭にさせる白妙の波もて結へる淡路島山

まずは本歌のほうをみてゆく。
いきなり難をつけるようだが、ちょっと三句がもたつくのが気にかかる歌である。
三句に枕詞を入れ、あえて留保する技巧はある(半臂の句)。しかしこれは、それとは違う

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雲もなく凪ぎたる朝の我なれやいとはれてのみ世をば経ぬらん

《私訳》
雲もなく、風もない朝。それが私なのか。
ただ晴れに晴れた空として、ただ疎まれて、この世を暮らすのか。

《出典》
古今集・恋五・753、紀友則

古今集は恋の歌を恋の段階の進行順に即して分類し配列している。
すなわち恋一は恋の始まり、恋二はつらい片思い。恋三は成就しても揺れる心、恋四は終わりゆく恋。この歌の含まれている恋五は、もう終わってしまった恋である。

作者は紀友則。
「ひさかたの

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