見出し画像

シルヴェスター・スタローン「ロッキーVSドラゴ ROCKY IV」

≪誰もが変わることができる≫
それは『ロッキー』だから描ける宿命なのでありまた、ロッキー・バルボアの使命、そしてこの作品を通したテーマになる。人は変われない。
だからこそ人生には変わるための努力を、挑戦を、闘いを必要とする。
ロッキーVSドラゴ。その決死の激戦こそがそのテーマを浮き彫りにするあまりに見事な映像のダイナミズムを目撃する。人が生身で行う闘いがどれほど人の心を動かすのかについて、まるで『ロッキー』の原点に変えるような新規編集リマスター版『ロッキーIV』はまざまざと映画が見せる輝かしい希望と人間の力を描き出している。
自然のなかで自分を磨き上げるロッキーと機械に鍛え上げられるドラゴ。対称的な二人の闘いはまさしくビーストVSマシンの様相を呈する。だが、一つ一つのパンチが、その衝撃が、血肉が躍る闘いのワンカットワンカットが二人の心を揺さぶっていくのが見ていれば手に取るようにわかるはずだ。
やがて闘いは闘志を剥き出しにした人間対人間の「己自身」を懸けた闘いへと変わっていく。友のために闘い始めたロッキーは自らの拳のために、国のために闘い始めたドラゴは己の誇りのために、お互いが自らの魂をパンチに込める。
その結末は壮絶だ。シルヴェスター・スタローンは一人の人間が今まさにより強く変わろうとする瞬間を描ききった。そして信じている。誰かが心からの変化を望むとき、その挑戦は他の誰かの魂さえも動かすのだと。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?