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郷土玩具趣味誌『片言』について―民俗学研究者・日野巌の旧蔵資料より

 拙noteでも度々紹介している加賀紫水『土の香』は第4巻第6号(1931年)に「私たちの兄弟」として当時発行されていた自分の雑誌と同様のテーマ(民俗、方言、郷土史など)を扱っている雑誌を紹介しているが、その中に加藤武が発行していた郷土玩具趣味誌『片言』が含まれている。川口栄三『郷土玩具文献解題』(郷土玩具研究会、1966年)によれば、『片言』は第1期6冊、第2期6冊の合計12冊が発行されたという。この雑誌は図書館や研究機関にほとんど所蔵されていないので、現物を確認する機会を伺っていた。先日、日本の古本屋で一部を発見して購入したので、本日は第2号(第1期)を紹介したい。以下に書誌情報と写真を載せたい。

大きさ:約11.8cm×約16.8cm、謄写版印刷、和装本
発行:昭和6年6月10日
編集兼発行人:加藤武 東京市牛込区早稲田南三三
印刷所:太陽堂 東京市四谷区永住町一
発行所:郷玩社 ※編集発行人と住所は同様。
頁数:15頁

首人形について 川崎巨泉
京都祇園祭の鉾 加藤武
浅草神社厄除鈴 有坂與太郎
名古屋市の禁忌玩具 浜島静波
寄贈御礼
でんでん太鼓(編集後記)

表紙
目次
奥付

 川崎巨泉、有坂與太郎、浜島静波という当時有名であった趣味人が投稿しており、編集後記で加藤の御礼が述べられている。当時の趣味界では、創刊されたばかりの新しい雑誌に有名人が投稿するということがしばしばあったようだ。

 ところで、私が購入したのは妖怪研究の民俗学研究者・日野巌(注1)の旧蔵資料であったことが以下の写真のような蔵書印でわかる。

日野巌の旧蔵資料

第2号の「寄贈御礼」では、日野が発行していた『日向郷土志資料』2輯が紹介されている。以下の紹介したように、日野は郷土玩具も蒐集していたので加藤は『片言』を送呈したのだろう。ちなみに、「寄贈御礼」には『土の香』22号(第4巻第4号)も記載されている。前述の『土の香』の「私たちの兄弟」では、『日向郷土志資料』も紹介されているので、『土の香』、『日向郷土志資料』、『片言』は加賀以外の当時の同好者の間でも同じカテゴリーの雑誌であると認識されていたと考えられる。

(注1)日野巌については、以下の記事で紹介したWATANABE様「日野巌の年譜―民俗研究を中心に―」『みやざき民俗』第73号(2023年)が詳しい。

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