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空中戦の人事施策を打ち込んで満足している人事さんたちへ、1,000年続く組織づくりの原則を投げ込んでみる。

CHROという冠は被っていないものの、僕は立場上それに該当するのだが、やはり常に考えるのは「この組織がいかに持続可能性を持ち続けられるのか」ということである。

ビジネスの大原則に「TTP(徹底的にパクる)」や「愚者は経験から、賢者は歴史から」というものが並ぶ以上、やはり組織論を考える上でも過去の歴史を紐解いていき、「もっとも持続可能性を持つ(持っている)組織」に焦点を当てるのがセオリーだろうと。

こんな発想からスタートすると、よくありがちなのが「世界最古の企業はどこだろうか?」「日本で1番歴史のある会社とは?」といった類の思考ゲームに突入していくことなのだが、僕はあまりそう思うことができない。

会社(特に株式会社)なんてものはたかだか数百年の歴史しか持ち得ていないわけで、そこから得られるアウトプットは数百年の持続可能性を持った組織のあり方であるが故に、求めている状態とはやや遠いと感じる。

じゃあ何がそれに該当するかと言えば、間違いなく「宗教」である。わかりやすい例で言えば、キリスト教。少なくとも2,000年は続いているわけで、やはりそれくらいの持続可能性を持った企業を生み出したい。

それが仏教なのか、キリスト教なのか、イスラム教なのかはそれほど大事な論点ではないと思うが、確実に言えるのはこれら宗教こそが組織論的に言えば最強の古典に当たるわけなのだが、僕が調べる限りでは、これら宗教と現代における組織のあり方との関連性を説いた論文や書籍は存在していない。

「誰もが当たり前のように思いつくアウトプットではないのか?」と思う中で、「何か自分が考えが至っていないだけで、もしかしたら宗教から学習することがダメな理由でもあるのかも?」などと考えを巡らせてみたが、どうも今も僕にはそのリスク観点を洗い出すことはできなかった。

ということで、誰かに助けを求めずに、いったんこれまでに自分が考えてきた「宗教×組織」の要諦について備忘も兼ねて記していく。

宗教には「これが揃ったら宗教だよね」という三種の神器的なものがある。

  1. 教祖 = 教えを説く人

  2. 教典 = 教えが伝播するような仕組み

  3. 教義 = 教えそのもの

キリスト教に置き換えていくと

  1. 教祖 = イエス・キリスト

  2. 教典 = 聖書

  3. 教義 = 贖罪、隣人愛、etc…

仏教に置き換えていくと

  1. 教祖 = ブッダ

  2. 教典 = 般若心経

  3. 教義 = 輪廻からの解脱

といった具合になる。

まずは原則として、会社組織においてもこれらの存在は欠かせないことがわかる。そして、これらを中心に会社組織を回していくことは超前提に置かれるということだ。

会社組織で言えば

  1. 教祖 = 創業者

  2. 教典 = 定款、カルチャーブック、etc…

  3. 教義 = 理念、ミッション、パーパス

という形だろうか。まず間違っても、事業がこの要素に入ってきていないことや、利益追求型で何かしら、という話もここには要素として含まれてこないことがわかるため、現代社会の資本主義市場に晒される株式会社という存在は、持続可能性を追求し続けることにおいて不利な状況に陥りやすい。

特にIPOをし、会社組織がパブリックなものになっている状態であったり、VCからの資金調達をしていることによる意思決定が揺らぎやすい状態であったりすることも、まさにその不利な状況の最たる例であると言える。

はてさて、話を戻すと、宗教の構成要素は3つに絞られることがわかるが、宗教繁栄においてはまた別の要素も必要なのではないかと思う。それが以下のもの。

  • 宣教師 = 教えを教祖の代わりに広める人

  • 儀式 = 教義や教祖との直接/間接的な接触機会

  • 場所 = 教義に賛同する人たちが集う場所

会社組織で言えば

  • 宣教師 = 理念、ミッション、パーパスなどを他のメンバーに伝える人

  • 儀式 = 総会や社内ミーティング

  • 場所 = オフィス、ワークスペース、チャットツール、etc…

という形かな。

つまり、全体の構図を捉えると、以下のような要素をしっかりと充足させる必要があると考えられる。

①教祖が教義及び経典を整備する

創業者が、会社で成し遂げたいことやありたい姿を名言化する。それが理念やミッション、パーパスに該当する。そしてそれを何かしら見える形に落とし込んでおく。また、教義は宣教師たちが布教する対象であり、宣教師たちが布教したいと思える内容でなければならない。教祖の自己利益のための設計だと、必ず綻びが出てしまうため注意が必要。

②宣教師となる人材を教育する

教祖だけだと布教に限界があるため、宣教師たり得る人材を探し出し、宣教師になるべく教育する。これは日常的な対話の量と質が物を言うため、教祖自身が直接対応しなければいけない案件だと思われる。

③宣教師たちが活動しやすい土壌を整える

例えば、教義や教典の話をしやすくするために、オフィスを整えてあげることができる。また、儀式を設定しておいてあげることで、宣教師たちはその儀式や祭りに誘導しやすい状況も作っておいてあげることができる。

④宣教師たちが次なる宣教師たちを増やし続けていく

ここまでの設計が適切なのであれば、ここから先はねずみ算的な増え方をしていくことが予想される。

組織開発、組織マネジメントといった言葉を最近よく耳にするが、歴史上もっとも力を持っている組織にその有り体を拝借することができるのであれば、これほどシンプルに経営や組織論を整理できることに気がつく。

GAFAをはじめ、メガベンチャーたちがキラキラと輝かしい人事施策を世に放ち続けることによって、いつしかそれら「空中戦が人事施策の醍醐味」といった見られ方をするようになってしまったが、本質的に考えていくとこれだけで十分な質を担保できるのではないかと思う。

やはりここまで整理しても思うのが、なぜ宗教論から紐解いた組織論の書籍や論文、研究がなされていないのかが不思議でしょうがない。誰かわかる人がいれば是非教えて下さいませ。

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