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なんらかのレビュー

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本・漫画・映画などのレビュー置き場
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#マンガ

恨むことを選ぶ権利:『マギ』

恨むことを選ぶ権利:『マギ』

この夏、私の睡眠時間を奪ったのはサッカーではなく『マギ』だった。

私はネタバレが大嫌いなのだが、というのは私自身が、我慢できずにネタバレを読んでしまったことをいつも後悔しているクチだからなのだが(新鮮な気持ちでこの展開に出会えたらどんなによかったろう…と不可逆性に臍を噛む)、『マギ』の面白さをネタバレなしで伝えることは困難であるから、今日は解禁したいと思う。そうであっても、新鮮さはやはり大事なの

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昨日まで本当だったこと:『おやすみプンプン』

昨日まで本当だったこと:『おやすみプンプン』

漫画というのはなんと自由なんだろう、と私は改めて考えた。

「プンプン」の住む世界は、プンプンたちと読者で見えかたが違う。

主人公のプン山プンプンおよびその親族は、落書きみたいな鳥の形をしている。最初は、ドラえもんのように、この漫画は変わった形の人たちも受容される世界で展開されているのだと思って読んでいた。「プンプンと愉快な仲間たち」的な漫画なのだと思っていた。

しかし、これはあくまで記号化の

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休み休みつらくてもいいじゃんか:『岡崎に捧ぐ』

休み休みつらくてもいいじゃんか:『岡崎に捧ぐ』

私は、私だけがつらいと思いたい。
他の誰よりも私がつらいと信じたい。
私のつらさについて話してもどうせわかってもらえないから(というか、向こうが「わかるよ」というのがいまいち信用できないから)人に話したくはないけど(というか話してはいて、その度に「やっぱりだめだった!」と敗れ続けているけど)、なんか、寄り添ってもらった、って実感がほしい。

…というときに読むべき漫画が『岡崎に捧ぐ』である。

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いい人の外の世界:『凪のお暇』感想

いい人の外の世界:『凪のお暇』感想

空気読みまくり人間だったOLの凪ちゃんが、退社して、家具も人間関係も過去の自分も断捨離して、清貧ライフを満喫しようと奮闘する漫画、「凪のお暇」(おひまではなくおいとま)が、好きだ。

絵がレトロでかわいい(80年代を髣髴とさせる感じ)、 節約レシピを読んでるとアガる(「すてきな奥さん」読む楽しみに近い)、辺りは既に語り尽くされてそうなので、ほかに好きなところを挙げよう。

たぶん私は、この物語が

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六方美人:『A子さんの恋人』

六方美人:『A子さんの恋人』

「八方美人」は、顔を向ける人の視点からみた言葉だけど、向けられる八方からその人を眺めたら、たぶん、よくても「六方美人」くらいなんじゃないかね。

A子さんの恋人は、「二方ぶす」も丁寧に描いている作品で、だから私は好きだと思う。もっと言えば、「六方ぶす」も「一方ぶす」も、色々出てきて、それぞれがきちんと描かれているから、好きだと思う。

例えばA太郎という人が出てくる。この人、モテる。恋愛だけじゃな

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