見出し画像

#020.呼吸3(呼気のしくみ編)

前回、前々回で吸気(空気が体内に入ること)について説明しました。ご覧になっていない方は、ぜひ吸気の仕組みを理解した上で今回の記事をお読みいただくのが良いと思います。

それでは、呼気の原理について解説します。


呼気とは

呼気こきとは空気を体外へ出すことです。体内に入った空気は肺の中にある気管の末端、肺胞で酸素を血液に取り込み、二酸化炭素を排出する「ガス交換」をします。その不要になった空気に含まれる成分を体外に出しているので、吸気と呼気では空気の中身が違います。

呼気の仕組み

出典:https://nurseful.jp/nursefulshikkanbetsu/pulmonology/section_0_01/

体内に空気を取り込む「吸気」は、横隔膜と肋間筋という筋肉が働き、胸膜腔を引っ張ることで陰圧状態を起こします。すべての筋肉は働いている「収縮」と、休んでいる「弛緩しかん」がありますが、ずっと収縮し続けることはできません。

吸気で働いた横隔膜や肋間筋もやがては弛緩し、元の位置に戻るわけですが、その動きによって肺が押され、空気が体外に放出されます。これが呼気です。したがって呼気は「吸気のために働いた部分が元の位置に戻る」ことで起きるシンプルなものです。

トランペットと呼気の関係

しかしこの呼気こそがトランペットを演奏する際に必要な「音を発生させるための素材」となります。

通常の呼気では「フッ」と、軽くまとまって出て終わるので、このままでは演奏に使えません。体内にある空気に圧力をかけ、舌の奥で制御し、スーーーっと長く細く出したり、強い圧力をかけて多めの空気を一瞬出したり
舌を使って空気の流れを調整してリズムを生み出したり、圧力変化で音量を変えたりと、音楽的表現をするために呼気時の空気を意図的に加工するコントロール力が必要です。

その加工をする上で最も重要な部分のひとつが「腹筋」です。

腹筋と腹圧

出典:https://blog.coruri.info/entry/breathing/mechanics_of_abdominal_breathing

おなかにある臓器は腹腔ふくくうという袋に収められています。腹腔は横隔膜のすぐ下から、骨盤の中までの、とても大きいものです。横隔膜より上の肺や心臓の周りには臓器を守るように肋骨がありますが、腹腔の周り、特に前と横には骨がありません。そのために、腹腔内を守るために腹筋があります。腹筋は3層構造で、様々な働きを持ったいくつもの腹筋があり、働く筋肉によって体(主にお腹周辺)の動きが変化します。

そして、腹筋が働く(収縮)と、腹腔を外から押して腹腔内に圧力をかけることができます。腹腔は程よく膨らんだビーチボールようなイメージが良いかもしれません。腹腔内に圧力がかかることを「腹圧」と呼び、腹圧がかかればビーチボール(腹腔)は横隔膜を下から持ち上げて、肺より上にある空気を通常の呼気よりも強く押し出すことができます。

トランペットを演奏しているときは、鼻(軟口蓋)が塞がっていて、そしてアパチュアという小さい穴しか出口がなく、しかもその先のマウスピースや楽器本体にも「細くて曲がって出口が遠い」空間が用意されています。さらに、これが最も重要で、舌の奥と上顎が接近することで空気の出る量を制限し、コントロールするので、アパチュアには空気量が制限されたスピードのある空気が到達するようになります。

トランペットを演奏する際の空気圧コントロールはこのように様々な部分が連携プレーをすることで成り立っています。それぞれの役割を理解することが、的確なブレスコントロールを手に入れることにつながるのです。

トランペット演奏時の呼気の原理、理解できたでしょうか。

では、具体的にどのように使うのが的確で効率的かは、次回の記事で解説します。


荻原明(おぎわらあきら)


荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。