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地方は人口減少の抑制に時間を使っている場合ではない

人口減少は地方自治体の課題として挙げられることが多い問題です。

最新の国勢調査によると、82.4%もの自治体で人口が減少しているそうです。

弊社の拠点である山形県酒田市も毎年1〜1.5%ほど減り続けています。

しかも、その内訳を見てみると、高齢者の減りが緩やかなのに対し、生産年齢人口が急激に減少していることがわかります。

これは酒田市に限らず、人口減少に苦しむ自治体の多くに当てはまることです。

人口流出の抑制はするべきなのか

先日、酒田市長との意見公開会に招かれたので、東京都民ではありますが酒田のこれからについて意見を述べさせていただきました。

若い人、特に女性が都会に出るため結婚と出産が減っていること、やりがいを持てる仕事を増やし伝統的な性別役割分担意識をなくすこと、日本一女性が働きやすいまちを目指し、人口減少を抑制したいこと、が酒田市が目指す街づくりです。

人口減少のメカニズムからやりがいのある仕事を増やすという対策まで、地方自治体のテンプレ的な方向性だと思います。

ですが、そもそも地方の人口減少を止める必要性はあるのでしょうか。

私はいくつかの理由から、人口減少の抑制に行政が力を入れる必要はないと考えています。

若者が都会に求めるものはやりがいのある仕事ではない

そもそも、やりがいのある仕事があるからといって地方に留まる若者はいるのでしょうか。

酒田市や山形県の人口ビジョンに則って、やりがいのある仕事を①高度に専門化され、②給与水準の高い仕事と定義します。代表的なのはエンジニアやデザイナーといった職種です。

私は地方の会社の経営者ではありますが、社会に出てから現在まで7年間東京に住んでいます。

私自身がかつて地方から都心に来た若者でしたし、上京してきた若者もたくさん知っています。

新卒でIT企業に入社したので、社内外問わずエンジニアやデザイナーが周りにたくさんいました。

仮に彼らの出身地(地方)に東京とまったく同じ職務内容と給与の仕事があったとしても、彼らは東京に出てきたはずです。

なぜなら、彼らは常に成長に繋がる環境を求めているからです。

たとえば、周りにお手本となる能力の高い人材がたくさんいることや、転職したくなるようなレベルの高い会社や組織がたくさん存在していることです。

たとえ地方でやりがいのある仕事を用意できたとしても、そのような継続的に成長できる環境がなければ、彼らが地元に残るインセンティブはないと思います。

若者は仕事ではなくキラキラした生活を求める

また、高度なスキルを持たない若者も都心に出たがります。

それは、仕事がないことや給与が低いことだけが原因ではありません。

労働政策研究・研修機構が発表した2023年12月現在の最新のデータによると、山形県の有効求人倍率は1.38です。

これは、宮城、愛知、大阪、福岡といった都市よりも高い数値です。

そして、以前こちらの記事でも紹介したように、山形県は全国でもトップレベルで個人が自由に使えるお金に余裕がある地域です。(逆に、東京は最下位に近いです)

もちろん都心と地方では産業の種類が違いますが、統計データを考慮すると、地方からの若者の流出を仕事だけに起因するものと考えるには無理があります。

では、なぜ高度なスキルを持たない若者までもが都心に出るのか。

それは、自己実現欲求を満たすためです。

そのためには仕事が充実しているだけでなく、流行りや話題のお店にすぐにアクセスできることや、気になるイベントに参加できることなど、遊びを充実させることが必須です。

そのような環境で日常をおくることで、彼らなりのキラキラしたライフスタイルを確立することこそが、彼らが都心にでる動機です。

ですから、いくら地方で条件のいい仕事を用意したところで、根本的に若者の流出を抑制することは難しいと言えます。

人口流出の抑制は問題の先送りにしかならない

私が人口流出の抑制に注力する必要がないと考える最大の理由は、それが問題の先送りにしかならないということです。

日本の少子化はこの先ますます加速することは容易に想像できますし、日本全体の人口は移民を受け入れない限り増えることはありません。

仮に地方の人口流出を抑制できたとしてもジリ貧ですし、婚姻すること自体が減っていますから、いつか元々の人口減少トレンドに戻ってしまうはずです。

全国各地から人を吸い上げている東京ですら、2030年から人口減少が始まると言われています。

ですから、目の前の人口流出問題を解決したからといって、未来が変わるわけではないのです。

人口減少を前提とした産業づくりを

これから地方がすべきなのは、人口減少を前提とした産業構造をつくっていくことではないでしょうか。

幸い、地方は豊富な自然とそこからもたらされる様々な天然資源や地域資源に恵まれています。そして、良くも悪くも地方は事業に係るコストが安く済みます。

豊富な地域資源を利用して高付加価値な商品やサービスを生み出し、都心や海外の消費者から“外貨”を稼げる利益率の高い産業をつくっていく。

そして、人口は少なくとも経済的に豊かな地方を目指すべきだと思います。

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