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お金のある国、お金のない国【スピリチュアル童話】

あるところに
人口1億6000万人のお金のない国がありました。

ある日ある人が、
ある人に「ありがとう」と言って100円玉を手渡しました。

100円玉をもらった人は、とっても嬉しくて、
何に使おうかな〜、などと考えたりもしましたが、
いや待てよ、こんな嬉しい気持ちを他の人にもお裾分けしたいなと思って、
その100円玉をまた別の人に手渡してみました。

そしたら、100円玉を受け取った人は大喜び。

その人は「何に使おうかな〜」と考えたりもしたのですが、いや待てよ、こんな嬉しい気持ちを他の人にもお裾分けしたいな、とひらめいて、100円玉を別の人に手渡しましたら、受け取った人も大喜び。

そして、その人もやっぱりお裾分けをと思い。。。

こうして、その100円玉は、
とうとう1億6000万人の手を渡り、
けっきょく最初に100円玉を差し出した人の手元にまるまる戻ってきたのです。

あれれ、けっきょく誰も何も買わなかったのか。
役立ててほしくてあげたのに。

その人は拍子抜けしましたが
ーーいや、でも、待てよ。

よく周りを見てみたら、
その国は
とっても笑顔であふれていたそうな。

たった100円玉1枚で、1円もかけずに
その国はますます幸せが満ちあふれていたそうな。
めでたしめでたし。

「なに言ってんだ。
 そんなにうまい話がありますか」

これを見ていたお金持ちの国のある人は、
道端で拾った100円玉を貯金箱に入れました。

「お金がなければ生きてはいけない世の中だ。
 国は信用できないし、
 もちろん人も会社も、
 サンドイッチのハムの分量さえ信用できない。
 今は大丈夫でもこの先何があるかわからない。
 たった100円じゃなにもできない。
 お金は大事に取っておかないと」

こうして拾った100円のみならず
手持ちのお金を誰にも与えず
極力使わず
誰かが奪いにこないかと
日夜、目をギョロギョロさせて
募金箱などには目もくれず
世の中、悪人と偽善者ばかりだと憤り
その貯金箱を後生大事に抱えて
とうとう棺桶の中まで持っていきましたとさ。

その国はそんなお金持ちの人がたくさんいました。

誰かがお金を独り占めすれば
ますます独り占めする人は増えました。
独り占めはけしからんと言ってる人も
ひとたびお金が入ってくると
独り占めをし始めます。

その国は、他のまずしい国に比べれば
お金を持っている人がとても多かったのですが
いくらお金を貯めても稼いでも
どんなに使っても使わなくても
投資をしてもFIREしても
心から幸せになれる人は少なかったそうな。

お金がいっぱいあるのに
どうしてなんでしょう。
ふしぎですね。

そんな国で生きる子どもが言いました。

「先生、もっと稼げば幸せになれるんじゃないですか」
「もっといいものを食べれば幸せになれるんじゃないですか」

「Switchを買ってもらえれば幸せになれるんじゃないですか」
「好きなことで生きていけば幸せになれるんじゃないですか」

「フォロワーが倍増してバズれば幸せになれるんじゃないですか」
「市場価値が上がれば幸せになれるんじゃないですか」

「嫌な思いをしなければ幸せになれるんじゃないですか」
「ちゃんとした大人になれば幸せになれるんじゃないですか」

「人から認められれば幸せになれるんじゃないですか」
「失敗しなければ幸せになれるんじゃないですか」

「不足感が無ければ幸せになれるんじゃないですか」
「願いが叶えば幸せになれるんじゃないですか」

なるほど、そうだそうだとクラスが沸きます。
そこへ空気を読まないハナタレ坊っちゃんが言いました。

「えー、なに言ってんの。
そんなの全部全然ちがうよ。

いいかい、幸せになるためにはね、
いま幸せになればいいんだよ。


おいらを見てれば分かるだろう?」

そしたら、みんな、あははと笑ったり、
これだからハナタレ坊っちゃんはと呆れたりしました。
そんなことで幸せになれるなら誰も苦労はしないよと。

「先生、ぼくたち、幸せになれる気がしてきました」

「そうだね、じゃあ努力・根性・勝利のためにがんばろう」

「今は辛くてもがんばろう!」

「幸せは歩いてこない。だから歩いて行くんだよ」

そうしてみんなどこかへ歩いていきましたとさ。

いったいどこへ歩いていったのでしょうか。
希望に満ちあふれた社会でしょうか。
未来でしょうか。
そちらに幸せの未来があるのでしょうか。
あるかもしれません。
きっとあります。
あると祈りましょう。
最初からハッピーだったら
ドラゴンクエストは始まりません。

僕たちは
お金のある国、お金のない国、
どちらへ住んでみたいだろう。

あるいは今、
どちらに住んでいるのだろう。

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