ウニー・セント・クレアー

ウニ・プロダクション所属作家。

ウニー・セント・クレアー

ウニ・プロダクション所属作家。

マガジン

  • ワーク&シュート(小説 全13回)

    2013年頃に書いた作品です。 舞台は90年代後半から2002年にかけて、純粋にプロレスラーの強さに心酔し、プロレスを信じていた少年がミスター高橋本の登場で衝撃を受けるという内容。あれからもう20年近く経ち、プロレスに対する世間の見方もずいぶん変わってしまいました。いまのプロレスファンもこの作品の主人公のようにはプロレスを見ていないと思います。 当時を知らない人には想像するのも難しいかもしれませんが、こんな時代があったことを知ってもらえればと思って掲載しました。 申し訳ありませんが後半は有料とさせていただきます。

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ワーク&シュート 第13回(終)

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    • ワーク&シュート 第12回

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        • ワーク&シュート 第10回

           より自分の戦いを進めていくにはどうしたらよいかを考えていたぼくは、自分のホームページを立ち上げることに思い至った。プロレスラーの強さを世に広め、そしてそのホームページが盛り上がってプロレスラー本人に届くようになれば、こんなにプロレスを想ってくれるファンがいるのか、ならばもっと練習してどんな格闘技の選手と戦っても勝てるように強くならなきゃな、と考えてくれるかもしれない。  ホームページの構成はこうだ。まずはプロレスの歴史コーナー。単に力道山から始まるものではなく、イギリスのラ

        ワーク&シュート 第13回(終)

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        • ワーク&シュート(小説 全13回)
          13本

        記事

          ワーク&シュート 第9回

           孤独がどうした。ずっとぼくは自分にとって都合のいい他人がどこかにふと現れて面白楽しい生活が始まるものだと思っていたのだ。無自覚のうちにそう望んでいたのだ。そんな人はどこにもいない。一人でも抵抗を続ける。プロレスを守るのはぼくだけだ。気が進まない就職活動などもうやめた。やはりプロレスと関わって生きていきたい。ぼくは自分の使命を既に知ってしまったのだ。あとは実行するのみ。  バイトで貯めたお金がそこそこの金額になっていたのでついにパソコンを買い、プロバイダも契約して実家にADS

          ワーク&シュート 第9回

          ワーク&シュート 第8回

           結局いくら布教し求めてもプロレスファンの仲間を作ることは叶わなかったか。ぼくはアサクラさんとの二枚分をチケットぴあで注文し、リングサイド席を買った。しかしこれでもよかったではないか。二十一年生きてきたなかで一人でも同じ趣味で語り合える人に会えたのだ。多くの人を巻き込もうとして「八百長なんておもろない」「弱いくせに嘘ばっかりつきやがって」などといちいち腹の立つことを言われるよりは、雑音の入らないところで二人心行くまで楽しめればそれで十分だ。チケットを買ったことを電話で伝えたら

          ワーク&シュート 第8回

          ワーク&シュート 第7回

           長い夏休みが明けて久々に大学を訪れ目に入った掲示板には、ぼくらの学年向けの就職ガイダンスの通知が張られていた。この大学生活もあと一年ちょっとで終わってしまう。この先、どこで働き始めようが、同じような孤立を続けるだろうことは想像に難くない。親からも就職のことを聞かれ始めた。特に希望はないのだが。働ければどこでも、いや、できれば家の外に一歩も出ずに済めば何よりもいい。と親に言ったら今まで見たこともない表情で様々な叱責を受けた。  大学に通うまでは、将来はただプロレスを楽しめる環

          ワーク&シュート 第7回

          ワーク&シュート 第6回

           三回生に進級しまた新歓のライブの時期となったが、さすがに新入生の前で面白くない先輩を見せたくないと判断したカザマはぼくとサノのコンビの出演を許可しなかった。ついに方向性やサークルへの協力態度ではなく、単に「おもろない」という理由で拒否されたのだ。このことをカザマから告げられたのが、橋本真也が最後の挑戦として小川直也に引退を掛けてのぞんだシングルマッチが、またも惨敗に終わった衝撃的な試合の直後だったので、試合の翌日に丸坊主姿で引退を表明した橋本がぼくに完全に乗りうつり、もう何

          ワーク&シュート 第6回

          ワーク&シュート 第5回

           よく考えたら、いやよく考えなくても春になれば新入生が入ってくるのだ。ぼくの後輩ができるのである。そこでプロレスファンを作ればまた新たな居場所を作ることができる。と意気込んで新入生の勧誘ライブに挑んだがここで人気を博したのがカザマとハザマの漫才であった。この同期の二人、何というか見た目がそこそこ格好いい。ジャニーズ系のアイドルのような路線とは違うが、ロンドンブーツ1号2号的な、身近にいそうで格好良い、しかも面白いお兄さんといった雰囲気が、地元の高校を出てきたばっかりの少女たち

          ワーク&シュート 第5回

          ワーク&シュート 第4回

           夏休みの間は暇だった。大学に行くことがなければアサクラさんともサノとも会う機会がなく、また家に閉じこもってビデオを見たり雑誌や本を読んだりする生活だった。ただそれでも時間が有り余っていたのでバイトでもしてまたプロレスを見に行くお金を稼ぐかと思っていたところ、サークルの仲間たちが草野球のチームを作ったので参加しないか、という連絡がきた。  ぼくは野球には興味がないし、第一ボールを狙ったところに投げられないし、バットを振ってボールに当たったことがない。小学生の頃ぼくがクラスの連

          ワーク&シュート 第4回

          ワーク&シュート 第3回

           それからしばらくして、ライブを見た人や、ライブの評判を聞きつけた新入生が何人か入部希望してきた。そしてそのなかには、念願のプロレスファンもいた。ついに理想の友人関係を手に入れたのだ。小・中・高の学校生活では感じられなかった充実感が体中に満ちていくのがわかる。最終的に新入部員は男女合わせて十一人に落ち着き、先輩たちは新入生歓迎会を開いてくれた。居酒屋に集められた我々は、互いの自己紹介などをしながら酒宴を満喫した。ぼくはプロレスファンだというサノとプロレスについて語り合った。サ

          ワーク&シュート 第3回

          ワーク&シュート 第2回

           そして自分の学力で無理なく行ける大学に入ったぼくはプロレスファンがいそうなサークルを捜した。もちろん、レスリング部や柔道部などに入ってレスラーを目指そうという気持ちはなかった。ぼくは何より運動が苦手なのだ。ぼくは見る専門家であり、語るプロになりたかった。入学式のあとの学部ガイダンス期間のときにいろんなサークル勧誘のブースを回ったが、プロレスファンの同好会のような会はなかった。ここでも自分はマイノリティーなのかと嘆息しながら大学に通い始め数週間が経った頃、新入生歓迎イベントで

          ワーク&シュート 第2回

          ワーク&シュート 第1回

           1995年の10・9、東京ドームにおいて、武藤敬司は高田延彦を足四の字固めで破り、新日本プロレスとUWFインターナショナルの団体対抗戦を新日本側の勝利で締めくくった。格闘技スタイルのUWFの選手を古典的なプロレス技でねじ伏せた新日本プロレス。どや、かっこよすぎるやないか。高校一年生のぼくは、以前「プロレスラーなんかほんまの格闘家の前では何もできん」と同級生に言われたことが耳から離れず、ずっといらいらしていたのだ。そいつ、今ごろこの事実に顔面蒼白となっているのではないか。  

          ワーク&シュート 第1回