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わかおの日記161

弟の学校行事があるとかで家族がみな出払っていたので、ぼくは犬とふたり留守番していた。20歳になっても快く留守番を引き受けるぼくの予定のなさを、家族はもっとありがたがるべきだと思う。普通の20歳はもっと外で遊び回ったりしてるらしいよ?知らないけど。  
あまりにも退屈だったので、前からやろうと思って先延ばしにしていたある作業を行った。冷蔵庫におびただしい数貼ってあるプレミアム・モルツのシールに書かれたQRコードを読み込む作業だ。

これ

両親ともに酒飲みで、その血を引いたぼくが酒飲みでない道理はありえず、結果として我が家の一晩あたりのビール消費量は野球部が夏場の練習で飲むスポドリの量くらいになっているため、居酒屋よろしくカクヤスでプレミアム・モルツを大量に仕入れるのだが、その缶ひとつひとつにシールが貼っており、みんながビールを飲むたびに、そのシールをまるで募金でもするかのような感覚で剥がしては冷蔵庫に貼り付けるのが慣例になっている。
ぼくと母と父が毎日コツコツ努力して作り上げたこのモザイクアートがついにその真価を発揮する!そのためにはQRコードをひとつひとつ丁寧に読み込む作業が不可欠であり、その様はまるで茶摘みのようである。夏も終わって八十八夜。ぼくは茶葉ではなくオレンジのシールをスマホ片手にペリペリ剥がしては読み取っていく。

お気に入りのラジオ番組「田中みな実あったかタイム」を聴きながら作業をした。田中みな実が毎朝白湯を飲んだり、炭酸パックをしたり、日光を浴びないようにしたりしているという話はぼくくらいのあったかタイムリスナーからすれば常識だし、そんな美容知識を得たとてなんの役にも立たないのだが、なんか田中みな実が美容の話をしているのは面白い。ずっと聴いてられる。多分これは大谷翔平とか室伏とかのトレーニング風景の動画を見ているときの感覚に近い。こないだYoutubeで室伏が足の指の可動域を広げるトレーニングをしていたのを観て十分驚いたが、田中みな実も負けていない。聴くところによると、なんと田中みな実は額のシワ予防のために、目の奥の筋肉を鍛えているのだ!意味がわからない。村田兆治は、指の間の腱を切ってフォークボールを投げられるようにしたらしいが、田中みな実も美のためなら骨の一本や二本抜いたりするんじゃなかろうか。恐ろしいひとである。 

さて、シールの数は優に150枚を超え、コンビニで大量のビールと引き換えることができるポイントが溜まった。まさに塵も積もれば。弛まぬ努力の成果である。

毎日ビールを飲むように、コツコツ努力をすれば、目の奥を鍛える重要性を悟るような境地にたどり着けるのだろうか。道のりは遠い気がする。



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