わらび詩@沁み入る小説を書きたい。

【死ぬまで書きたい、読みたい、勧めたい!】 をスローガンに掲げる、わらび詩(うた)と申…

わらび詩@沁み入る小説を書きたい。

【死ぬまで書きたい、読みたい、勧めたい!】 をスローガンに掲げる、わらび詩(うた)と申します。 小説は読まず嫌いでしたが、大人になってからその魅力に気付いてしまいました。 小説が苦手な人も好きな人も、「わらび詩の話が好き」と言って貰えるようになるのが目標です。

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サイトマップと自己紹介(4/26更新)

◇自己紹介◇・名前  わらび詩です。小説を書いています。  名前の由来は、わらべ歌のように、心や記憶に残るものを作りたいのでそれにあやかったのと、わらび餅が好きだからです。 ・私についてのあれこれ ◇本を好きになったきっかけ◇  子どもの頃は漫画とゲームが大好きで、小説なんて授業に関係なきゃ読まない子どもでした。ですが、社会に出てから「小説とか読んでみようかな……」と思い始めました。多分、【本は無理矢理読まされるもの】というイメージが卒業と同時に消えたんだと思います。

    • 【掌編小説】無意味な人生と色鉛筆

       鳥になって空を飛びたいとか、魚になって海を泳ぎたいとか、そんなキレイな夢を見なくなってから数十年が経った。  今の願いはただただ、休みがほしい。  三連休……いや、二連休でも良いからゆっくり体を休めたい。  そんな事は夢のまた夢で、定年退職する年齢まで、まだまだ時間がある。  年々時間が早く感じるようになったとは言え、定年退職は遥か彼方だ。そもそも定年退職出来るだろうか? そして、その後の生活は大丈夫なんだろうか?  悩みの種は尽きない。やり甲斐も使命感も無い日常を、死に向

      • 【掌編小説】スミレさま

        ――そう呼ばれている、たった一つの学校の怪談がある。  スミレさまは学校の花壇に住んでいて、貢ぎ物を花壇に埋めると願い事を一つ叶えてくれるらしい。  恋人が出来たとか、第一志望の学校に合格したとか……そんな噂が流れている。 「くっだらない」  リカはスミレさまの話をすると途端に不機嫌になる。 「そんな話で盛り上がって許されるのは中学生までだよ」 「別に、本気で願いが叶うなんて思ってないよ。ただそう言う話が回ってきたってだけじゃん」  ユカリの反論に、リカは鼻で嗤った。

        • 【掌編小説】今日も、映画を見る

           俺の祖父は、妊婦のような腹をしていた。ハゲ頭で大柄で無愛想。老眼鏡の向こうで光る吊り目も相まって、人相は最悪だった。  食欲旺盛で隠れ甘党だが、酒は赤ワイン一択と変なこだわりを持っていた。  甘納豆をツマミに赤ワインを呑む姿は、今になって思えばお洒落だったな、と感じる。当時小学生だった俺は、何とも思っていなかったけど。  そんな祖父の趣味は、映画鑑賞だった。  レンタルビデオを借りてきては俺に再生させた。祖父はビデオデッキを使えなかったのだ。  俺は祖父に頼まれ、ビデオを

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        サイトマップと自己紹介(4/26更新)

          【掌編小説】PARADISE

           今時、そんな事するか? だってそうだろ? このご時世に、瓶に手紙を入れて海に投げ込むなんて……。時代錯誤も甚だしい。  そう思っているのに、俺は浮ついた気持ちで瓶を開けた。  袋で何重にも守られていた手紙には、確実に伝えたい想いが込められているような気がした。   手紙にはどこかの住所、そして『PARADISE』と書かれていた。  俺は早速その住所を調べたが、山奥で木に覆われているせいで、航空写真では何が何だか分からなかった。ストリートビューでも見られない。  そもそも何

          【掌編小説】猫の星

           猫が星になる夢を見た。つまり、猫が死ぬ夢。  予知夢なんて大層なものではない。私が飼っている猫はもうすぐ旅立つ。だからそんな夢を見たに過ぎない。  タマ、なんて古い名前を付けたのは半分ギャグのようなものだった。 「逆に珍しいでしょ」と、ノリで名付けた。命の責任などと深いことは考えずに。  タマはよく学内をウロウロしていた。珍しくも何ともない茶虎の猫で、学生や事務員から餌を貰って生きていた。  私は大学の近くで独り暮らしをしていたので、道端で見かけることもあった。でも餌を

          【掌編小説】嘘つき教師は今日も誠実な嘘をつく

           六月に回収した進路調査票にはそれぞれの希望が書かれている。具体的なものと、ふざけているもとが半々。高校生でもまだ将来が見えていない子は割といる。 「これはどういう意味?」  進路指導室に呼び出したのは私のクラス、二年二組の三枝木真奈だ。動物やキャラクターなど、落書きだらけになっている調査票を二人で眺めた。

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          【掌編小説】嘘つき教師は今日も誠実な嘘をつく

          【短編小説】煙草の煙が救った命

           深夜にうなされて目が覚める。  首筋にまとわりつく汗をぬぐっても、気持ち悪さは消えなかった。  恐ろしい夢だった気がするが、目覚めてみると内容を思い出せなかった。ただ、いつも煙草の匂いがする。  それは毎年、俺の誕生日に起こった。  枕元のスマホを見ると、時刻は深夜零時を少し過ぎたところで(あぁ……誕生日か)と納得した。  毎年のことなので、うなされる日イコール誕生日、と方程式が出来ている。嫌な方程式だが、おそらく死ぬまで変わることは無いだろうと予感していた。

          【短編小説】煙草の煙が救った命

          【掌編小説】熟年親子

           子どもの頃から、私は父が嫌いだ。  歩幅が広くて一緒に歩くのが大変だった。手を繋いで歩くと私だけ小走りになるし、手を繋がないで歩くと見失ってしまう。  気遣いの出来ない父はいつもの呆れ顔で、私を見つけるなり 「ちゃんとついて来なきゃダメだろ」 などと的外れな注意をする。  もっとゆっくり歩いてくれたら、はぐれたりしないのに。なんて、何度思ったことだろう。  幼い頃に母が死に、男手一つで育ててくれた恩はもちろん感じている。けれど、好き嫌いの感情は頭で決められるもの

          【掌編小説】花筏伝説

           細い川に寄り添うように、蕾のままの桜が一本立っている。それ以外に見えるのは、どこまでも続くかのような若菜色の草原と代わり映えのしない暗い空。  空はいつでも紺碧に染まっている。時々乳白色の霞が空の端に浮かぶものの、明かりを感じるのはそれだけ。光の粒さえ見せること無く、太陽は去ってしまう。  桜は、この世にいるのは自分一人だけだと思っていた。  そんなある日のこと、桜の前に金色に輝く神々しい龍が降り立った。立派な髭が夜風になびいている。鋭い牙と爪は夏雲のように白く、瞳は