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有史以来の闘い。『インフルエンザ危機 』河岡義裕

人間とインフルエンザの戦いは、「ヒポクラテス以来」のこと。つまり、有史以来。インフルエンザは人間と共にある、そして戦争や貿易等の文明と共にあるといった感じ。今では、これにコロナが加わってしまいましたが。

スペイン風邪の大流行は、第一次世界大戦中におこりました。兵士たちが、銃器とインフルエンザを抱えて転戦したために、世界中で2000万人以上の犠牲者を出したとか。そういえば『クスリ社会を生きる』という本でも、マラリア等の病気が戦争や貿易で世界中に広まったことが書いてありました。人類は旅行であれ、戦争であれ、大人数で一斉に移動してはいけないことを歴史が示しているようです。

著者の河岡先生は、鳥インフルエンザ研究の第一人者。なので、この本を読むと、ほぼ日本を含む世界のインフルエンザ研究史に重なります。インフルエンザウィルスが手ごわいのは、自己複製するときに間違いやすいこと。そのせいで、簡単に亜種を作って、薬に対する抵抗種を作ってしまいます。しかも、水禽類や魚類から家畜へ人へ、どんどん媒介するものを広げます。

人は、一度でもインフルエンザにかかれば、次にまたウィルスが入ってきて、それが多少形の違うものでも免疫で対応することができます。予防接種は、今年流行しそうなインフルエンザの死んだウィルスを体内に注射することで、免疫を作る働きを促してくれます。

気をつけないといけないのは、抵抗力の低下した65歳以上の高齢者。インフルエンザ以外の細菌も、増えてしまうからだとか。そして、インフルエンザにかかったことのない、3歳以下の子どもも免疫がないので要注意。なにより、一番やっかいなのは、予防接種の効果も免疫がない子どもには限界があるとのこと。

この本を読んだとき、ちょうど新型インフルエンザが流行っていました。うちの2歳児は、まだインフルエンザにかかったことがなかったので、いろいろ心配して、かかりつけ医に相談したのですが、「こんな小さい子だと、予防接種の効果は今一なんですけどね」って言われました。その理由がよくわからなかったので、この本を読んで勉強したというわけです。

新型インフルエンザでは、タミフルも話題になりました。タミフルはカプセルで、もう同じ効果を持つリレンザは噴射式。過去に開発されたアマンタジンに比べて副作用は「ほとんどない」と言ってもいいぐらいだとのこと。日本での普及率がダントツなのは、啓蒙活動検査キットの普及だそうです。コロナ禍を経験した今なら、ここに不織布マスクが加わるはず。

そして、解熱効果の高さへの信頼性もあるのですが、ここでも子どもに対する解熱剤の使用が問題になります。熱が下がった3日目で、人はだいたい服用をやめてしまいがち。でも、それは耐性菌をつくってしまう悪いやり方なのだとか。抗生物質もそうですが、もらった分量をきっちり飲むことが大事。

なんにせよ、風邪もインフルエンザでも、基本は「うがいと手洗い」、そして「不織布マスク」。それでもかかったら、かかりつけ医のいうことをしっかり聞いて、安静と栄養、睡眠。これに如くものはなし。外出や出勤は論外ってことで。


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