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私が考案した紙版画技法を第三者が連絡もなく、自身のワークショップで使用する件について

私が考案した紙版画技法を第三者が連絡もなく、自身のワークショップで使用する件について

私は2018年より科研費採択事業として紙版画の技法開発の研究に臨み、現在に至っています。その成果は当該事業における研究成果公開のためのホームページ『紙版画研究室』で公開し、の一部はこのnoteでも紹介し、またYouTube、そしてこのnoteでも紹介しています。

科研費事業での取り組みの研究の中で美術の専門でない先生方が版画の指導に苦労されている姿を見てきました。そんな先生方に私の資料を参考に実

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みんなの紙版画<改訂版>

動画の後半、ネットで見つけたいろいろな方の紙版画ワークショップを紹介しています。釈然としないところもありますが、紙版画が普及するのはよいことだと思います。
改訂で削除した1件は、先方から連絡があり円満に着地しました。

表現と生命

表現と生命

2023年3月28日に刊行された「音楽と生命」(坂本龍一/福岡伸一)の中に引用された江戸時代の自然哲学者であり医者である三浦梅園の言葉。

枯れ木に花が咲くような珍奇なことに驚くのではなく、生きた木に花が咲くという当たり前の中にある正に自然の摂理に驚きなさい。

自分の作品にしろ人の作品にしろ、それを見たとき私の心が動く、動かないの違いのひとつはそこにあるんだろうな…と。
あまた並ぶ表現の中、自ら

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エンボス版紙版画について

エンボス版紙版画について

紙という素材は木や金属等に比べ簡単に多様な加工をすることができます。多様に加工できるということは多様な技法が可能になるということです。紙版画の既存の技法、私が考案した種々の技法についてはホームページ「紙版画研究室」で紹介していますのでそちらを見ていただくこととして、ここではその中のひとつ、「エンボス版紙版画」という技法について述べます。
エンボス版紙版画とは、プレス機を使って版用紙に様々な素材を押

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「コラグラフ」について

 紙版画のドライポイントのことを「コラグラフ(collagraph)」と称している事例をよく見かけます(国内だけでなく海外でも)。
 コラグラフの「コラ」は「コラージュ(collage)」のこと。つまり何らかの素材をコラージュ(貼り付け)して作った版による版画のことです。ドライポイントはニードルなどで描画する、あるいは版の表層を剥がして図柄を表現する技法であり、何か別の素材を貼っているわけではあり

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紙版画研究室

2018年から科学研究費助成金採択事業として紙版画の研究に取り組んでいます。紙版画が図画工作、美術の授業にも版画教材の新しい選択肢として有効なものとなるように、新しい技法と指導法を考案するのがこの研究の趣旨です。作家としては10年以上前から紙版画による作品制作に取り組んでいます。紙版画が教材としての可能性に加え、プロの作家の表現技法としても十分有効であることを実証していきたいと考えています。

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紙版画の可能性 個展によせて

 大学では造形基礎を担当していますが、長年携わってきたのは紙版画の研究です。木版画は誰もが知る版画技法の代表です。その次にメジャーな技法は銅版画でしょう。展覧会で見かける版画の大部分は木版画か銅版画です。それとは対照的に紙版画を知る人はほとんどいません。知っていたとして小学校低学年の図画工作、あるいは園児の造形あそびの教材という認識で、成人の版画作家の表現手法としてイメージする人はほとんどいないと

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ambient tune 聴取の詩学VII

カメラを持つと意識が変わる。
面白いものを探して歩くようになって、
慣れ親しんだ道にさえいろんなものを発見するようになる。
よく言われることですね、実感してます。

私にはもうひとつ、
慣れ親しんだ道でさえ見え方が変わるような習慣があります。
それは、このシリーズで紹介しているような曲を聴きながら歩くこと。

電車の中、街頭、カフェ、公園、ショッピングモール…
曲がBGMとなって、何でもない風景が
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ambient tune 聴取の詩学VI

これは私にとって、とても不思議な曲なんです。

パソコンで音楽作り始めたのがかれこれ15年ほど前。
そのころ、MIDIキーボードもなく、ギターを録音する機材もなく、
黙々とマウスで音を入力しながら何曲か作ったうちのひとつ。
当時、特に気に入ってたとか、思い入れが深いとかそいうものでもなく、
数回聴いてすっかり忘れてました。

それから何年後、突然あるフレーズが頭の中に浮かんできました。
聴き覚えの
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ambient tune 聴取の詩学V

眼前の風景を楽譜と見立て、それを見ながら演奏する。
そんなふうに即興演奏することを夢想しています。
加古隆がクレーの絵をみながら演奏してたみたいに、
楽譜じゃないものから音楽を読み取って演奏する。
世界の全てが私に音楽を奏でさせてくれる…そんな素敵な境地に入ってみたいな、と。
…まあ、修行中です。

昔、ある時ふと思いました。
スケッチって、特に速写するスケッチ(クロッキーというほうが適切ですね)
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ambient tune 聴取の詩学IV

私の教え子、一昨年大学のギャラリーで開催した個展を私が記録した動画です)。

これまでの3本、この「聴取の詩学」シリーズのために音楽に画像を加えて新しく動画を作ったものを紹介してきました。
今回紹介する曲もそうするつもりだったんですが、
「そういえばこの曲、以前動画のBGMに使ったなあ」
と思い出し、引っぱり出してきました。

自分で言うのもなんですが、作品と音楽、なかなか良い感じにマッチしている
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ambient tune 聴取の詩学III

世界はたったふたつのものでできている。
反復するもの。
変容するもの。

以前、個展の案内に添えた言葉です。
バッハのゴールドベルク変奏曲に触発されたイメージ。
音楽ってやっぱり世界の縮図だなって。

変奏曲を作る…やってみたいけど残念ながら能力が追いつきません。
ならば変奏曲ではないけれど、
単純に繰り返すフレーズと絶対繰り返さないフレーズを組み合わせてやってみようと。
それがこの曲。
繰り返す
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ambinet tune 聴取の詩学II

私の曲も感触が大切、というか感触が全て。

音楽についての知識ってほとんどなくて。

どこを押さえると何調の音になるか、それはわかります。
和音、理屈は知ってますが、即興の中で臨機応変に使えないです(ジャズの人、凄すぎです)。
私が奏でる和音は調のスケールの中の音を適当に選んで押さえているだけ。それがなんという名前の和音なのか私はわかりません。

音、弾く前にどんな音、響きになるのかイメージできま
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ambient tune 聴取の詩学I

数日前に作った曲があります。
正確には「作った」ではなく「そのように成ってしまった」もの、即興です。
「作る」というのは目的や完成のイメージがあって、それに照らして「こうしよう」「こうすべき」「これは違う」「こっちのがもっと良い」…といった具合に吟味していくものです。
でもこの曲はそのようにしてできたものではありません。
適当に弦を押さえる。何調にするにはどの音を押さえるか、という知識はありますが
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