西洋料理ビストロらあく

青森県七戸町の洋食屋「西洋料理ビストロらあく」。過去につくった料理とそれにまつわるエッ…

西洋料理ビストロらあく

青森県七戸町の洋食屋「西洋料理ビストロらあく」。過去につくった料理とそれにまつわるエッセイのようなものを綴っていきます。レシピについてはかなり簡易的に書いてます。1記事あたり800字くらいにおさめるようにしています。

最近の記事

ホワイトアスパラのサラダ 卵白のソース

2024年2月、7年ぶりに震えるほど美味しいお店を見つけました。江戸川橋のフランス料理店「シオタ」。カウンター6席でシェフがワンオペで切り盛りされています(奥さまもスポットでお手伝いされているようです)。 提供される料理は、白身魚に焦がしバターのソースだったり、鹿肉にザクロのソース、ミルフィーユなど、古典的で伝統的などちらかというとやり尽くされた料理。ただ一つ一つの仕事が丁寧で、食べるととても美味しく、ソースの酸味のつけ方や香りのたち方、食感のアクセント、食材の火入れの

    • 胡麻と鮎魚醤でマリネした真鯛のサラダ

      鮨屋の仕事は、魚介を扱う上で非常に勉強になります。料理業界で働くようになって、新鮮なネタをのせただけの鮨よりも、高級なネタを使用していなくても良いので、仕事が施されている鮨の方を好むようなりました。大間の鮪の大トロの鮨よりも、養殖の鮪の赤身をヅケにしたものの方が好きだったりします。 さて、先日、銀座にある「鮨 太一」さんで食事をした際に、昆布締めしたヒラメを胡麻と山葵と一緒に握ったものを頂きました。また、別の鮨屋で平目を胡麻醤油でヅケにしたものの握りを頂いたこともあり、

      • 鱈の白子と生姜のアラビアータ 生スパゲッティ

        青森県に住んでいると子供の頃から鱈という魚は馴染みがあり、家庭の冬の食卓にはよくでます。とはいっても身の方ではなく、頭や内臓がスーパーで安く売っていてそれを使って「キク汁」や「じゃっぱ汁」をつくるのですが。で、身の方はどうするかというと、冬の鱈は栄養が内臓の方にとられているので身はそれほど美味しくない。なので干鱈にして水分を飛ばして味を凝縮しつつ、冬場の保存食にするのです。鮭なんかも同じですね。 調理師学校でフランスの肉食文化を学んだ際に、冬が来る前に豚を一頭屠蓄して、

        • チョコレートのテリーヌ、生姜の温かいスープ、柚子のアイスクリーム

          別にバレンタインを意識しているわけではないのですが、ここ最近、2月になるとこのデザートをつくっています。 個人的にチョコレートは、甘いものより苦味の強いものが好きです。なおかつそれ単品で食べるより、オレンジやラズベリーのようなフルーツと合わせたり、胡椒や唐辛子のような辛みのあるものと組み合わせた食べ方が好きです。 このデザートはチョコレートの苦味とコクのある甘さに、生姜の辛み、柚子の酸味と香り、さらに温かいものと冷たいものの温度差と味を構成する要素がたくさんあります。口の

        ホワイトアスパラのサラダ 卵白のソース

          オニオングラタン·キッシュ

          寒い日のフランス料理といえば、オニオングラタンスープ。20年以上前に秋のパリに行ったときは、どこのビストロでも「本日の料理」にオニオングラタンスープがありました。 ただ、このオニオングラタンスープは熱くて旨くてボリュームがあるので、多皿のコース料理には使いにくい。前菜、メイン、デザートのビストロの定食コースなら大丈夫ですが。 そこで、小さめのアミューズとしてキッシュにリメイクしてみました。オニオングラタンという冬の季語もあいまって、季節感を演出する最初の一皿になり、これは

          オニオングラタン·キッシュ

          干し海老のビスク カレー風味のカプチーノ仕立て

          海老や蟹などの甲殻類を使ったスープのビスクは、間違いない(アレルギーの人以外は全員美味しく感じる)フランス料理の1つです。元々は、市場で値段のつかない小さな海老や蟹だったり、身を使ったあとのオマール海老や手長海老の殻や頭を無駄無く美味しく頂くための料理です。なので、ビスクを作るためにオマール海老や手長海老を仕入れるっていうのは、本来の趣旨とは少し違う感じがします。 味についても、魚介の旨味と甲殻類の香りがあれば良いわけで、わざわざ高額な甲殻類を使う必要はないように思います

          干し海老のビスク カレー風味のカプチーノ仕立て

          北寄貝のマリネ サルサベルデ

          2000年はじめ、敬愛するみうらじゅん氏が発端になったゆるキャラブームがありました。どこの自治体も乗り遅れまいとそこそこの予算を投入していかがわしいマスコットキャラを作ったものです。その中でもひときわ異彩を放ち、各方面(主に個人発信のsns)から突っ込みが入ったのが、青森県三沢市の特産の北寄貝を模したゆるキャラ「ホッキーナ」と「ほきのすけ」。 ほきのすけ(左)は別に良いんですが、問題はホッキーナ(右)。見た目が卑猥!! との声が多数寄せられたとか。それに対して市の担当者は

          北寄貝のマリネ サルサベルデ

          スパイスとチーズのスープ

          隣町にネパール人の方がシェフをしているカレー屋さんがありまして、そこのセットメニューについてくるスープがすこぶる美味しい。 鶏ガラベースの白いスープでスパイスが効いていて。といっても辛いわけでも、ラッサムのように酸っぱいわけでもなく。 これを冬の寒い日にアミューズ(突き出し)としてコースの最初で提供したら良いだろうな、と試行錯誤して洋食っぽいテイストにして作ってみました。 前述のネパール人のシェフは話によるとインドやドバイの高級ホテルでシェフを歴任してきたらしい。 ち

          スパイスとチーズのスープ

          カボチャのモンブラン

          「○○のモンブラン」っていうのはお菓子業界のパワーワードといっても過言ではないかもしれません。なんだったら、モンブランは季語です。ちょうど5文字だし、五七五に入れ込みやすいでしょ。 ここで一句。 「モンブラン 若人たちの 死屍累々」 お菓子業界は肉体労働です。何十キロの粉や砂糖を扱うし、作る量が家庭とは比べ物にならない。だから、憧れだけでお菓子屋さんで働くとだいたい腰をやられて、リタイアしてしまう。 そして、モンブランを作るための素材の裏ごし作業や、クリームを泡立てる

          カボチャのモンブラン

          ラタトゥイユにのせたスクランブルエッグ、自家製ベーコン添え

          調理師学校でフランス料理を学びはじめのころは、正直なにが正解なのかわかりませんでした。和食や中華は、基本的に白いご飯に合う味だし、家庭や外食でも馴染みがあったので味の方向性はなんとなくつかめたのですが。 ある日、フランス料理の実習で大竹伸郎シェフに教わったラタトゥイユ(野菜のトマト煮込み)を食べたときに初めて「フレンチは美味しい」と思うことができました。大竹シェフの作るラタトゥイユは、食感を生かした軽く煮込むものではなく、オーブンで30分ほどじっくり煮込むタイプで、複

          ラタトゥイユにのせたスクランブルエッグ、自家製ベーコン添え

          鮪のポワソンクリュ

          今回の料理「鮪のポワソンクリュ」は、タヒチの郷土料理で、生の鮪をライムとココナッツミルクで食べるという日本人には味の想像しにくい料理です。 タヒチは南半球にある島国で、ハワイの下、オーストラリアと南米大陸の中間あたり、といえばわかりやすいでしょうか。 もともとフランス領ということもあり、伝統的なポリネシア料理とフランス料理がミックスしたような料理がレストランやホテルでは提供されるようです。そういう意味では、ベトナムと似ていますね。 フランス料理の特徴はエス

          豚肩ロースのラケ マスタードソース

          2020年、調理師学校時代の友人が中国料理初のミシュランの三ツ星を獲得しました。南麻布の有栖川公園ちかくにある一軒家のレストラン、茶禅華。そこへ食事に伺った際にコースの中の一品で炭火で焼かれた叉焼がでてきまして、これがすこぶる美味しかったのです。漬け込みのタレの甘さと香ばしく焼かれた豚の脂身の旨さが、とても合うのです。しかも食べ終わったあとに口の中にベタつくような感覚が残ることもなく。 そのエッセンスをなんとか自分の店で表現できないか、と思って作ったのが今回の料理です。

          豚肩ロースのラケ マスタードソース

          ナポリ風ズッキーニのスパゲッティ

          2000年以降、食卓にのぼるようになった夏野菜といえばズッキーニ。当初はみんなキュウリの亜種だと思われていたようですが、実際にはカボチャの仲間。ちなみにズッキーニの皮や種には胃腸を刺激する毒素成分があるのでキュウリのように生食するとお腹を壊しますのでご注意を。死にはしないですが…。 で、このズッキーニは収穫するのが大変で、ある日いっせいに実をつけ、半日もほおっておくと巨大化してしまうんですよ。大きすぎるズッキーニは食べられないことはないのですが、種が大きくなることと、中心

          ナポリ風ズッキーニのスパゲッティ

          ティラミスのセミフレッド

          2007年~2010年ごろまで、当店が力をいれていたデザートは「自家製のアイスクリーム」でした。 味もキャラメルや苺といった定番のものから枝豆や菜種油、バジルといった変わり種のものまでいろいろな食材を試しました。テレビや雑誌の取材もきて、そこそこ評判になりましたが、近くに牧場直営のジェラート店ができたために一気にシェアを奪われてしまいました…(泣) やはり質の良い牛乳と高額なジェラートマシン、一面の菜の花畑やひまわり畑という最高のロケーションが揃うと叶いません。しかも

          ティラミスのセミフレッド

          西瓜のゼリー 塩のアイス添え

          「西瓜に塩」の発祥は諸説ありますが、茶人の千利休をある大名がもてなす際に、当時高級品だった砂糖を西瓜に添えたところ、「これでは西瓜の持ち味が失われている。むしろ塩をかけた方が西瓜本来の甘さが引き立つ」と喝破した…という説が一つ。 もう一つは千利休のライバルと評された丿貫(へちかん)が、急な来客に対し、天候が悪く味の悪い西瓜しかなかった際に塩をかけるというひとてまを加えてもてなした、という説です。 後者については、漫画「へうげもの」を参照。 ちなみに私はかつて江戸千家流

          西瓜のゼリー 塩のアイス添え

          鴨胸肉のロースト オレンジとエスプレッソ珈琲のソース

          昔、ほんの少しだけ大学の学食で働いていたことがありました。ろくに学生が来ない大学で、仕事と言ったら大学で寮生活をしている卓球部の学生に朝昼晩の食事をつくることでした。 私以外に二人調理師がいまして、1人は青山や麻布のイタリア料理店でシェフを歴任して、テレビ番組「料理の鉄人 デザート対決」でイタリア人とペアで出演した方、もう1人はフランスの三ツ星レストラン「ラムロワーズ」で部門シェフを歴任された方。 食事も自家製のベーコンを使ったり、トロットロのスクランブルエッグだったり

          鴨胸肉のロースト オレンジとエスプレッソ珈琲のソース