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ラタトゥイユ、全て煮込んで慈しみ

大人になればなるほど、そこかしこにあるいわゆる良さみへの感受性が高まって毎日面白おかしい。よくいえば寛容になり、悪くいえば鈍感になった結果なのか、美味しいと思うものや楽しいと思うものが増えた。

些細なことである。夏野菜という言葉が好きなのだ。わざわざこんなことを書いたのも、夏野菜というワードに対する嬉しい感情が年々募ってることを自覚したからだ。

これまで夏の美味しいものといったらソーメンとアイスだけだった。あとはみな、言ってしまえば空気のように存在はするもののわざわざ知覚するほどではないタイプのものだとか、もしくは香りや風味が強くて心から美味しいと思えるかと言われると謎だったものだとか、そんなふうに思っていたのに。
今やラタトゥイユが無性に食べたくて、スーパーでゴロゴロと夏野菜を買うようになった。歳を取るのは最高。

チューブのニンニクも大変便利でよく使うが、私はラタトゥイユに関しては生のニンニクを使うことになんとなく決めている。ゴン!と潰してから刻むのも良いが、最近キャロットラペ用のスライサーでニンニクを(手の怪我に気をつけながらね)ガッと刻むのが楽しくて美味しくてハマっている。

この千切り機、キャロットラペにもよく使うが、かなり料理が楽しくておすすめだ。意外とお手入れも複雑じゃないところも好き

さて話を戻す。
遠い昔、家庭科の授業で先生が「旬の野菜というものは何が良いでしょうか?」という質問を投げかけた。「栄養がたくさんあるとかですか?」という生徒の回答に、先生はチャーミングに笑いながらこう答えたことを今も覚えている。
「正解!それだけじゃなくて…いっぱい採れるから安いの!」

あぁ、先生!
夏野菜はまさに今が旬なので安くて大きくて味わい深いからお買い物がまあ楽しい!でっかいナス、でっかいズッキーニ、でっかいパプリカ、こんにちは!!そしてそれらのお野菜に携わるすべての皆様、ありがとう!!
そうしてお迎えした見るからに美味しい夏野菜を、デカめの輪切りにしていく。まだこの時点では食べ切れるか心配になる程量があってウケる。

油は美味しいやつがいい。具体的にはワ!高いかも〜…と一瞬ちょっぴり怯むくらいのオリーブオイルがいい。家計に厳しいのに悔しいけど大好きなので、いっそ惜しみなくそいつを使っていく。トプトプと注いでるときから香り立つ、苦味さえ感じさせるほどのフレッシュなオリーブ…そこに先ほどジャッと千切りにしたニンニクを転ばして、点火。
言い忘れていたがラタトゥイユを煮込む時はなぜかいつもついstaubの鍋を選んでしまう。厚手の鋳物ホーロー鍋でくったりと煮込むのは夢があるからね

オリーブの香りと反比例してニンニクの香りが立ってきたところで、ゴロンゴロンの夏野菜をポンポンと入れていく。ジウ…と音がしてたまらない。木べらでゴロリゴロリと混ぜながら、みるみる鮮やかになっていくズッキーニの緑とみるみる色を失っていく茄子を見つめる。いつだってあまりパプリカは動じない。ずっと綺麗だ。

いい感じにくったりしてきたところで、塩と胡椒とたっぷりのハーブをすべて目分量で入れる。目分量が好きだ。大袈裟だが、ほんとに何も考えずに体を動かしているので自分の身体性、運動性に実直になったような気さえする。だいたいこんなもん、という本能に従うみたいな料理ばかりのわたしだが、なかなかどうしてお味はいつも悪くないのでその楽しさをやめられずにいる。塩はそこそこで良いがハーブはもう、たっぷり以上どっさり未満に入れる。胡椒はいつだってその存在感にさすがね、と思ってしまう。

で、馴染ませたら最後にあらごしトマトピューレを入れて蓋して、終わり!弱火にして、洗い物して、お茶飲んで、まだかなと思いながら蓋を開けるのを我慢して……
そんなことをしている間に夏の風味が凝縮して現れてくるのだ。蓋を開けた時の出来上がりの色と香りは何度見ても大喜びしてしまう。煮込まれて美味しくなった夏のいのちたち。一口食べて、慈しみすら感じるその味。

いつもいつも心の底から感動する。ラタトゥイユってなんでこんなに美味しいんだろう。いろんな作り方があるけど私はお肉などを特に入れずにこうやってワクワクしながら雑に作るラタトゥイユが本当に大好きだ。もっと言うなら、出来立ても美味しいし冷やしても美味しいし、単体でも美味しいし付け合わせでも絶品だ!
この味が大人になってからの私の夏である。

なんて美味しい季節なの、夏!

ラタトゥイユ、大好き。

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