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【#1-3】 タンパク質、プロテイン、酵素、コラーゲンそしてビタミン。

今回のテーマはタンパク質です。タンパク質は身体の中のあらゆる生体反応を司っているので、とても大事なものです。

#1-1で紹介した遺伝子という名の設計図によって、どのようなタンパク質を作るのかが決められます。そして、mRNAからタンパク質が作られる部分も#1-2で概説しました。ここではタンパク質そのものに焦点を当てて、見ていきます。

タイトルにもしているように、一度は聞いたことのあるタンパク質やプロテイン酵素コラーゲンの正体はなんなのでしょうか。またビタミンを取りなさいというけれど、ビタミンって何してるのってお話です。



1.タンパク質/プロテイン

まず最も簡単なものから。タンパク質とプロテインは同じものです。ご存知の方も多いでしょうが、タンパク質を英語で言うとプロテイン(Protein)です。

プロテインといえば、筋トレ後に飲むアレのイメージが強いと思います。飲むプロテインでは動物性プロテインと植物性プロテインがよく知られていますが、前者をWhey(ホエイ)プロテイン、後者は例えば大豆由来だとSoy(ソイ)プロテインとか呼ばれます。ソイプロテインは吸収速度が緩やかなので、寝る前に飲むといいなんて言われます。

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「筋肉」にも色々な種類があるのですが、例えば心臓の筋肉は心筋と呼ばれ、血液を全身に巡らせるためのポンプの役割を果たしています。皆さんは自分の意思で心筋を止めたり動かしたりできるでしょうか?

意思とは無関係に動く筋肉を不随意筋(心筋や胃の筋肉)と言います。一方、いわゆる筋肉と言ってイメージする腕や胸の筋肉のことを骨格筋と言います。これらは自分の意思で動かしたりできるので、随意筋と呼ばれます。

筋肉に関してはまた筋肉を説明する章で詳しく説明しますが、筋肉は主にアクチンミオシンというタンパク質でできています。つまり、トレーニングして筋肉を肥大させる場合、しっかりプロテインを飲んで筋肉の材料を補給することは理にかなったことです。

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タンパク質の正体


ではタンパク質の正体は一体何でしょうか。

結論から言うと、「アミノ酸がたくさん繋がったもの」です。

アミノ酸という言葉は耳にしたことがある方も多いと思いますが、タンパク質を構成するアミノ酸は20種類(その他にもアミノ酸はたくさんあります)あって、一つ一つは分子という形で存在しています。その分子がたくさん繋がったものをタンパク質と呼んでいます。
どのようなアミノ酸がいくつつながっているのかによって、作られるタンパク質は異なります。(#1-2参照

EAAやBCAAについて

20種類のうち体内で作ることができず、食事から取らなければならない9種類のアミノ酸必須アミノ酸残り11種類非必須アミノ酸と呼んでいます。

上記の必須アミノ酸 (Essential Amino Acids)含有物をEAAと言いますが、筋トレ界隈では有名です。他にも筋トレ界隈で有名といえばBCAA (Branch Chain Amino Acid)とかですよね。これらは20種類のアミノ酸のうち筋肉を合成するアミノ酸に多い、分岐鎖(Branch Chain)アミノ酸(Amino Acid)と呼ばれる3種類のアミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)を指しています。分岐鎖とはアミノ酸の分子構造の話です。

*アミノ酸にどんな種類があって何が必須アミノ酸かなどはググればすぐ出るのでここでは省略します。最近ではググれば本当になんでも出でくるので、覚えたい知りたいと思うものは覚えたらいいし、無理して覚える必要はないと考えています。


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ポリペプチド

ちなみに、分子1つのものをモノマー(Monomer)というのですが、単一のものにつくmono-がついています。それとは逆に、モノマーがたくさん繋がったものを、たくさん繋がっていることを示す、poly-をつけてポリマー(Polymer)と言います。

アミノ酸同士が繋がるとき、ペプチド結合という結合で繋がっていくので、アミノ酸がたくさん繋がったもの、つまりタンパク質はポリペプチド(Polypeptide)とも呼ばれることがあります。
*この「ポリ」はもっと身近でも、PETボトルのPET(ポリエチレンテレフタラート)などにもついています。ポリエチレンはエチレンという分子がたくさん繋がったものだよってことを意味しています。

タンパク加水分解物

タンパク加水分解物って食品表示などで見たことありませんか。加水分解は読んで字の如く水を加えて分解する反応です。ペプチド結合で繋がってゆくアミノ酸はアミノ酸同士反応する際に、脱水縮合という、水が抜ける反応を介して結合していきます。

つまり、加水分解はその逆です。従って、タンパク加水分解物とはタンパク質(ポリペプチド)に水を加えて分解し、アミノ酸の状態にバラバラにしたもの。ということになります。アミノ酸がうまみ成分の一種であることをご存知の方も多いのではないでしょうか。

例えば、アミノ酸の一つ、グルタミン酸などはうまみ成分として有名ですよね。昆布に多く含まれるので、昆布はダシに使われています。(本当はなんで昆布使ったら美味いんだろうって疑問から研究が始まってグルタミン酸が発見されています。)昆布は知ってる人も多いですが、グルタミン酸はチーズにも多く含まれています。チーズ好きな人、控えめに言ってチーズ、うますぎですよね。わかりますw

世界共通語:UMAMI

せっかくなのでうまみについて少しだけ。うまみ成分であるグルタミン酸の発見者は実は日本人です。池田菊苗博士が昆布の研究からグルタミン酸の抽出に成功し、うまみの成分を突き止めました。うまみは世界共通語になっています(英語表記もUMAMI)。

そのほかにもアミノ酸ではないですが、鰹節に多く含まれるイノシン酸や、椎茸に多く含まれるグアニル酸などは核酸系の旨み成分として有名です。これらとグルタミン酸を混ぜることで、うまみの相乗効果が得られることも知られています(カツオと昆布の合わせだしとかありますよね。)。

ちなみに、池田菊苗博士はグルタミン酸を主成分としたグルタミン酸ナトリウムの製造方法を開発し特許も取得しており、このグルタミン酸ナトリウムは現在あの調味料「味の素®︎」として広く使われています。

タンパク質の話から、味の素までわかちゃうんですね。

タンパク質の代謝から貧困問題


 焼肉食べすぎて翌日気分悪いーって経験ないでしょうか。食べすぎて脂分が。。。って人もいますが、原因はこの脂分だけじゃないんです!

これを理解するためには、少しタンパク質の構造に触れる必要があります。タンパク質はアミノ酸がたくさん繋がったものであることは上述しましたが、構造式というアミノ酸の構造を表す形式があります。

アミノ酸と呼ばれるものは全て、-NH2という構造(アミノ基と言います)と-COOHという構造(カルボキシル基と言います)を持っています。(画像検索でググってみてください。)
タンパク質は分解される際に脱アミノ反応 (ざっくりゆうとアミノ酸からアミノ基(-NH2)を外す反応)という化学反応によりアンモニア(NH3)にして放出してから分解されます

アンモニアには毒性があり、このアンモニアこそが、不快感の原因となる原因物質なんです。。
つまりお肉(タンパク質の塊)を食べすぎると、アンモニアもたくさん作られるので、気分が悪くなってしまうんですね。

人間の体は、エネルギーとして利用する順番が決まっていて、炭水化物、脂質、タンパク質の順で利用していきます。従って、例えば飢餓状態の人には必ず炭水化物から与える必要があります。良かれと思って高級肉を与えるとエネルギー利用のためにタンパクを積極的に分解するので、かえって気分が悪くなってしまうそうです。

じゃあ、アンモニアはどこ行くのって?別の機会があれば詳しく説明しますが、生成されたアンモニアは肝臓のオルニチン回路と呼ばれる代謝経路で無害な尿素に変換されて、尿中に排出されます。

長くなりますがもう一つ。触れようか迷いましたが、非常に重要な国際的な課題とも関係があるのでお話しします。
皆さんは、貧困地域に住んでいる子どもの写真を見たことがあるでしょうか。痩せ細った身体に対してお腹がぽこっと出た子どもの写真です。
あれは、様々な理由から十分な食事が得られていないことを象徴しています。

あのお腹は腹水と言って、血液中のタンパク質が足りず、血液がサラサラになりすぎて水分が染み出し、お腹に溜まったものなのです。タンパク質源の不足が招く現象ですが、同時に世界の貧困地域の健康状態にも一瞬でも思いを馳せてみてください。

2.コラーゲン

コラーゲンもタンパク質の一種です。お肌のプルプルを保つのに必要なタンパク質ではありますが(構造タンパク質と言います)、コラーゲンもアミノ酸が組み立てられてできていることを考えれば、コラーゲンたっぷりを謳う食べ物を食べたところで、一度体内で分解されるので、直接お肌に使われるわけではありません。
でも、コラーゲンの成分を効率よくとって体の中からキレイを目指す。素敵な考え方ですし、それが実行できる人ってかっこいいですよね。憧れます。。

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3.酵素

では「酵素」とは一体何でしょうか。

結論から言うと、酵素(Enzyme)もタンパク質です。つまり同じくアミノ酸が複数繋がったもの。になります。しかし、あえて区別するなら、体の中の反応を進める役割を持つタンパク質のことを指します。*専門用語では生体触媒と言います。

体の中では様々な化学反応が起こっています。例えば、食べたものをエネルギーに変えるまでの反応、運動して脂肪を燃焼する反応など様々です。それら一つ一つの反応に、酵素と呼ばれるタンパク質が必要になってきます。

このように体の中の反応に必要であることを考えれば、非常にたくさんの種類のタンパク質が存在することがお分かりになるかと思います。実際、生物学では、どういったタンパク質同士が反応しているのかを解析して論文にすることがかなり多いです。

最後にビタミンのお話です。

4.ビタミン

今ではビタミンは、様々なものが発見されていますが、もともとアミンと呼ばれる物質として発見されました。そして、生命(vital)の維持に必要不可欠であることから、バイタル+アミン(Vital+Amine)合わせて、ビタミン(Vitamin)と呼ばれるようになりました。*諸説あるようです。                      

ではビタミンの役割ですが、まず、ビタミンは補酵素と呼ばれています。その名の通り、酵素の反応を補助する役割を持っているのがビタミンです。生体内のあらゆる反応に関わる酵素を手助けするので、ビタミンも非常に重要な栄養素であることは直感的にお分かりになるかと思います。

また、補酵素は英語で、コエンザイム(Coenzyme)と言われるように、酵素とともに働くのが特徴です。コエンザイムQ10なんかは耳にしたことがある方もいるかと思いますが、あれもビタミン様物質の一つです。

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5.補足

正直1つの記事では語りきれないくらいタンパク質は奥深く面白いです。
ざっとした説明ですが、タンパク質はとてつもなく身体にとって重要です。筋肉を例に挙げましたが、他にも、酸素を運ぶことで有名な赤血球に含まれるヘモグロビンもタンパク質ですし、成長ホルモンやインスリンなどホルモンもタンパク質です。ホルモンに関してはのちの章で詳しく記載します。光を目で受け取って、脳がそれを認識するまでの一連の反応にも多くのタンパク質が関わっています。もっと言えば、体内で新しいタンパク質を作っているのはタンパク質です笑

ちなみに、酵素の活性が最も高くなる(最も良く働いてくれる)温度は37℃前後と言われています。
なぜ人間の体温が36〜37℃程度なのか、お分かりですよね?そのくらいタンパク質は重要ってことです。よくあるイメージでは、腕の筋肉などのみがタンパク質だと思われがちですが、生体内のほぼ全ての反応にタンパク質が関わっています。

(2022/6/8 補足)
2022/6/6にJAXAのはやぶさ2が持ち帰ったサンプルから、20種類以上のアミノ酸が見つかったことが大きく報道されました。ここまで読んでくださった人は、いかに生命の存在への期待が高いかがわかるかと思います。

次回は炭水化物って何、糖質って何、食物繊維って何ーー!ってお話です。

おわり。



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