池本幸生

東京大学名誉教授

池本幸生

東京大学名誉教授

最近の記事

朝日に映える岡山城

    • 30年間1%成長の衝撃

       日本は1991年から2021年の30年間にわたり実質GDP成長率が年平均0.7%という信じられない数字を記録した。かつてなら「信じられない記録」と言えば「驚異的な素晴らしい記録」を指したが今はそうではない。この期間に実質GDPは1.2倍に増えただけである。  ちなみに、高度成長期は年率9%の成長率を達成し、18年間で4.8倍に増加した。オイルショックからバブルまでの時期でも年率4%で成長し16年間で2倍に増加した。それと比べれば、この30年間はやはり「失われた30年」と言う

      • 日本人の熱意・士気の低さ

        日本の従業員の熱意・士気は最低水準萩原ゆき「『人への投資』有価証券報告書で開示義務付けへ-投資家の判断材料に」(Bloomberg 2022年11月18日 12:29 JST)によると、「仕事や会社に対する従業員の熱意や士気を示す日本の「エンゲージメント指数」は、国際的に最低水準にある」そうだ。 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-11-18/RLF8DLT0AFB401?fbclid=IwAR1zpxqmsSLryR

        • Greed is Dead:Stephen Hawking

          Stephen Hawking: Greed And Stupidity Are What Will End The Human Race APR 1, 2019 The Intellectualist https://mavenroundtable.io/theintellectualist/science/stephen-hawking-greed-and-stupidity-are-what-will-end-the-human-race 2019年4月に書かれたステ

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          集団思考の失敗

          集団思考(英語では groupthinkという)は、ある集団がなぜ間違った判断を下すのかを説明するものである。日本の組織(政府から民間の小さな組織に至るまで)にそんな兆候が見られる。以下は集団思考の解説であるが、日本の集団に当てはめて考えると、思い浮かぶ事例が多いはずである。 「集団思考」という言葉を最初に政治分析に使ったのはアメリカの心理学者アーヴィング・ジャニスである。大失敗に終わったCIAのキューバ侵攻作戦をなぜケネディは承認したのか、などの事例を分析し、間違った決定

          集団思考の失敗

          人はなぜ対立するのか=分割統治

          少数民族はなぜ少数なのだろうか?当たり前の問いのようだが、問いたいのは、なぜ少数民族にはさらに少数に細分化する力が働き、多数民族には多数派に加わろうとする力が働くのだろうか、ということである。 これは政治の世界を見ても明らかである。自民党には様々な人たちが入ろうとする。かつて野党で活躍していた人も今では与党にいたりする。一方、野党は分裂を続ける。一旦まとまったと思った野党は、すぐに分裂していく。ここには上に述べた力が働いている。 植民地時代には分割統治が行なわれていた。か

          人はなぜ対立するのか=分割統治

          他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはならない

          「他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはならない」という言葉はときどき聞かれます。そして、その言葉の主がロシアの文豪トルストイだとされるのですが、本当なのか調べてみてもよく分かりません。 確かなのは、この言葉がイングリッド・バーグマン主演の1939年の映画『Intermezzo(別離)』に出てくるということです。 "Wonder if anyone has ever built happiness on the unhappiness of others." 訳すと「他人の不

          他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはならない

          栄光の30年(Trente Glorieuses)

          Les Trente Glorieuses(フランス語。英語で 'The Glorious Thirty'のこと)は、フランスで第二次世界大戦の30年間(1945年~1975年)を指すために、人口統計学者ジャン・フラスティエが1979年の著書『栄光の30年:1946年~1975年の見えない革命』で作り出したものである。フラスティエはの出版によりこの用語を作り出しました。 (参考)https://en.wikipedia.org/wiki/Trente_Glorieuses  

          栄光の30年(Trente Glorieuses)

          関東大震災

          意外に知らない関東大震災について調べてみました。 発生時刻:1923年(大正12)9月1日11時58分 本震:11時58分32秒 M7.9    12時01分   M7.2    12時03分   M7.3    巨大な揺れが三度発生したということで「三つ子地震」とされる。 震源地:相模湾北部を震源とする海溝型の巨大地震 津波:静岡県熱海市 12m    千葉県相浜  9.3m       洲崎  8m    神奈川県三浦 6m 鎌倉市由比ケ浜では別荘や海水浴客に津波が押し

          関東大震災

          日本人の我慢に飽き飽き

          「被災地に通い続けた英国人記者、「日本人の我慢に飽き飽き」 本当に伝えたいこと」渡辺志帆(朝日新聞GLOBE編集部員)Asahi Shinbun Globe+(2021年1月20日) 英国人記者リチャード・ロイド・パリーさん(51)はその著書『津波の霊たち』の中で「私としては、日本人の受容の精神にはもううんざりだった。過剰なまでの我慢にも飽き飽きしていた」書いた。この点を質問されて、パリ―氏は次のように述べた。 ――日本人は政府に多くを期待していないとも言えますね。災害以

          日本人の我慢に飽き飽き

          イギリス自動車産業の崩壊

          イギリス自動車産業にはロールスロイスを始めとして有名なブランドがあり、ブランドだけは残っているものもあるが、もはやイギリスのものではない。「英国病」と呼ばれた時代に自動車産業はどのようにして崩壊していったのかを簡単にまとめてみた。 1966年:BMC+ジャガー⇒ブリティッシュ・モーター・ホールディングス(BMH) 1967年:レイランド+ローバー⇒ローバー・レイランド 1968年:BMH+ローバー・レイランド⇒ブリティッシュ・レイランド・モーター・コーポレーション(BLMC

          イギリス自動車産業の崩壊

          撞着語法(oxymoronic)

          「撞着」とは「矛盾すること」の意味である。同着語法とは「矛盾しているが、何か意味がありそうなこと」を指す。工夫してみると、面白い表現ができそうだ。「安物買いの銭失い」もそれに当たるか? ちなみに、ウィキペディアで「一目瞭然の撞着語法」の例には次のようなものが挙げられていた。 急がば回れ ゆっくり急げ 負けるが勝ち 良い悪人 小さな巨人 サウンド・オブ・サイレンス 無知の知 白いカラス 生ける屍 公然の秘密

          撞着語法(oxymoronic)

          イギリスの政府平等省(Government Equalities Office、GEO)

          イギリスに平等省というものがあるので調べてみました。 国立国会図書館のリサーチ・ナビによると「平等省」となっています。 https://rnavi.ndl.go.jp/politics/entry/post-22.php ウィキペディアによると「内務省内の独立した機関である政府平等局」となっています。https://ja.wikipedia.org/wiki/女性・平等担当大臣  平成23年度内閣府委託報告書『障害者差別禁止制度に関する国際調査』の第4章「2010年平等法

          イギリスの政府平等省(Government Equalities Office、GEO)

          安物買いの銭失い(安いコーヒーの話)

          値段が安いものは品質が悪いので、買い得と思っても結局は修理や買い替えで高くつくということ。 安いものは品質が落ちるので、買ったときは得をしたように感じるが、すぐに壊れて使い物にならなくなるから、結局は高い買い物をすることになるということ。『江戸いろはかるた』の一つ。 Cheapest is dearest.(一番安いのが一番高い) さて、安いコーヒーばかり飲んでいるとどうなるか? 1.安くて品質の良くないコーヒーも「美味しい」と感じるようになる。 2.売る方は、品質を落

          安物買いの銭失い(安いコーヒーの話)

          言葉のお勉強

          言葉の意味や語源など、面白い話を記録していきます。 【収監】ではなく「収容」 今では「刑務所に収監する」と言わずに、「刑務所に収容する」という言葉が使われるようになったらしい。監獄法の改廃によって「監獄」という呼称が用いられなくなり、代わりに「刑事施設」と呼ぶようになったため。 しゅう‐かん〔シウ‐〕【収監】(デジタル大辞泉より) [名](スル) 1 監獄に収容すること。 2 刑事事件の被疑者・被告人や刑が確定した人を、拘置所や刑務所などの刑事施設に収容すること。監獄法の改

          言葉のお勉強

          日本は「裸の王様」がいっぱい!

          「東芝や関西電力のみならず、今回取り上げる日産自動車や三菱電機のトップが、裸の王様に陥らずに済んだかもしれない。」 (出典)吉野 次郎「独裁制敷いた日産ゴーン氏に教えたい海自・特殊部隊の対話術ー奥ゆかしい日本の悲劇(下)」日経ビジネス 2021.10.20 企業のことに詳しくないが、「裸の王様」はあちこちにいた(そして、今もいる)らしい。上記の記事には次のような言葉も出てくる。 「社内で神格化が進んでいた」「反論できなかった」「『できない』と言えなかった」……。 ゴーン

          日本は「裸の王様」がいっぱい!