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2022読んだ本・ひとこと感想

小説を読み始めたのは、高校1年生の読書感想文の宿題がきっかけでした。
たまたま本屋で選んだ、デイヴィッド・ベニオフ著『25時』という本に出会い、生まれて初めて感じた衝撃を受け、そこから読書にハマっていきました。高校生の頃は全教科全授業に全くついていけなかったので、授業中はずっと小説を読んでいた気がします。

働き始めてからはほとんど読まなくなって、たまーに面白そうなのを買うくらい。3年に1冊くらいの読書量だったかもしれません。

そんな状況が何年も続いていた中、今年は面白い本に出会うことができ、20冊以上本を読みました。
小説だけでは無いですが、改めて物語の面白さと、自分の知らないことを知るという楽しさを感じることが出来たので軽く紹介します。



『同志少女よ、敵を撃て』著:逢坂冬馬

これは、高校生以来改めて「また本を読もう」と思わされた大傑作です。
きっかけはなんだったか……。メタルギアの小島監督のツイートだったような気がします。表紙からちょっとアニメっぽい印象を受けたことと、これを読んだのは4月でちょうど世界情勢的にも、ロシアとウクライナの問題が大きく取り上げられていましたこともあり購入しました。

ということで、本屋大賞受賞作でもあることから興味本位でこの本を読んでみたら「やっぱり小説って面白いわ…」と驚き、再度自分の中に読書を習慣化させられました。
女性スナイパーという立場、そもそも女性だけの部隊ということから繰り広げられる物語ですが、戦闘の激しさというより、スナイパーということで静かさと冷酷さが氷のように伝わってくる小説であったと同時に、とにかく情景がありありと浮かぶ描写が素晴らしく。Netflixあたりでアニメ化、ドラマ化して欲しいですね。
何より、同志少女よ、敵を撃ての『敵』とは誰であり、何なのか。
この瞬間は雷にうたれたような衝撃でした。
誰が何と言おうとお勧め。最高に面白かったです。



『正欲』著:朝井リョウ

これは本屋大賞繋がりで購入した本。
性欲の対象が、極めてマイノリティなものであったというときの話。
これを読んで思ったのは、最近LGBTQとか色々議論になったり、男らしさや女らしさという考えの前時代感が強くなったり、ジェンダーに対する世間の感覚がアップデートされているのを感じる一方で、それは逆に「正しい欲」というものをカテゴライズしているように思えるということです。
多様性の時代と言うならば、例えば非常識な人・モノ・ことを性欲の対象とした人に対しても、優劣や良い悪いを決めるのがおかしいわけで。そんなことを考えるようになった本でした。
この本を読んで以降、安易に「多様性」「普通」と言葉で発することに大分抵抗を覚えるようになりました。



『赤と青とエスキース』著:青山美智子

一つの絵画をテーマとした、連続する短編小説。恩田陸さんの『ライオンハート』とちょっと似た印象を受けましたね。
絵画に関わる人たちがどのような人で、どのように混じり合い、どんな結果となるのか。特に、3章の『トマトジュースとバタフライピー』が好きでした。何を言ってもネタバレになってしまうのですが、「2度読み必至」のコピーの通りエピローグでめちゃくちゃにやけてしまったうえ、とにかくとても綺麗にまとまった、素敵な小説でした。



『渚のリーチ』著:黒沢咲 

プロ雀士・黒沢咲さんが書かれた小説。
正直、Mリーグという麻雀のリーグがあることは知っていましたが、なぜ盛り上がっているのかはわかりませんでした。しかし、この小説を読むことでその過程や熱さ、思いを体感することができ、特に黒沢さんが結果を出した場面はついネットでそのときの様子を調べてしまうようになりました。読みやすいし、実際にあった試合がもとになったシーンもあるようなので、麻雀好きな方は楽しんで読めると思います。



『六人の嘘つきな大学生』著:浅倉秋成

就活でのデスゲーム…ではないけど、内定のために就活生が騙し合いというか人狼というか、心理戦行うという小説。あまり詳細を書くとネタバレになるので書きませんが、この就活という設定が新鮮でした。単純に命のやり取りではなく内定を争うというのがまた良く、実際、お金をぽんともらうよりも最高の会社から内定をもらう方が魅力的のもわかる気がします。人生において凄く大事だけど、手に入らないからと言って死ぬわけでは無いというバランスも良い塩梅でした。
終盤のちょっと蛇足感というか、都合のいい事実の提示は「ん?」となったりもしましたが、それでも十分傑作と呼べると思います。



『主人公思考』著:坂上陽三

アイマスのプロデューサー、坂上Pこと坂上陽三さんの本。仕事術に関する本ですね。とはいえ、アイドルマスターについてのドキュメンタリー本と言えなくもないんじゃないでしょうか。
この本を読んだのは2022年4月なんですが、8か月経って改めて読み返すと、また新たな印象がありますね。特に第5章『自分事化できる人に育てる』はかなり刺さりますし、今後の後輩育成に役立ちたい言葉。何度も読み返す本になりそうです。



『流浪の月』著:凪良ゆう

第17回本屋大賞受賞作。
これも『正欲』と似た印象です。「小さい女の子しか好きになれない」男性、そして「その男性が救いだった小さい女の子」。男性は誘拐で警察に捕まるんだけど、それから年月が経過し2人が出会い……という話。外から見れば誘拐でも、2人にとってはそこが唯一、安心できる場所だったとしたら……。
どんな事件もカテゴライズするのではなく個別化することが重要で、雑な当てはめ方をするものではないということ、それがやはり、多様性とかそういう言葉を改めて考え直すきっかけになりました。



『承認欲求女子図鑑 ~SNSで出会ったヤバい女子たち~』著:にゃるら

『NEEDY GIRL OVERDOSE』に心を痛めつけられた身として、製作者であるにゃるらさんの著作は読みたいと思ってしまうもの。実際に、にゃるらさんが様々な女の子にインタビューした内容が記載されている本です。
何というか……歌舞伎町やキャバクラやコンカフェなどで働いている女の子について、自分がアイコン的な見方をしていた部分があり、本当に申し訳なく感じました。若くても非常にしっかりと、冷静、ときには冷徹に世間や人生を見ている姿は、まさにゲームの中の「あめちゃん」であり、演じるべきところでは演じる姿は「超てんちゃん」でありました。
非常に勉強になった本でした。



『俺ではない炎上』著:浅倉秋成

こういう、時勢に乗った本はやはり手が伸びてしまいます。
突然、殺人犯としてネット上で炎上してしまった主人公の逃亡劇の話です。
自分に非が無いのに炎上してそれがデジタルタトゥーとなる恐ろしさはやはり、現代の誰もが抱えるリスクだと思います。まだまだ法整備が追いついていないような印象です。
そもそも司法というものがあるので、本来当事者以外が騒ぐことは私刑に当たると思いますし、するべきではないと思うのですが、そうもいかないのが現実。その恐怖を感じました。



『出口汪のマンガでわかる論理的に話す技術 絶対に伝わる話し方のコツ』著:出口汪

かなりわかりやすくコミュニケーション、伝わる喋り方について書かれています。内容としては深い話というよりは、入門編という感じでしょうか。漫画も多く、論理的な内容が頭に入ってきやすいと思います。ただより深く広い、複雑な技術を知りたい人が買うと、「もう知ってるよ……」という基本的な内容であることも確か。
基礎の基礎という感じで、ときどき読み返したくなる本でした。



『匿名』著:柿原朋哉

人気Youtuber『ぶんけい』さんの著書。
そもそもぶんけいさんを存じ上げないままジャケ買いしたのですが、凛としている内容が非常に好み。顔出しをしていないアーティストとそのアーティストに救われた女の子、2人それぞれのとある物語、そして2人がとんでもない交差をする物語。さらにはその後の話も描かれています。派手さは無いですが、温度感が一定であり、しかし心にしっかりと残る小説でした。別noteで詳しく感想書きました。



『#真相をお話しします』著:結城真一郎

ハッシュタグ的なタイトルのつけ方が上手く、つい気になってしまった小説。どんでん返しのある物語の短編集ということで、普段本を読まない人にも読みやすい本であったと思います。
5つの物語のうち、正直オチが読めるものもありました。ただ、「おお……」と唸る内容があったのも確か。やや強引な感じもありますが、カジュアルに楽しめました。



『元彼の遺言状』著:新川帆立

第19回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
新川先生は有隣堂のYoutubeチャンネルに出られていたので興味がわきました。
御曹司の元彼が「自分の財産は自分を殺した犯人に譲る」という言葉を残し殺される序盤の引きの上手さもあるものの、何よりバリバリ仕事をして金が欲しいという主人公:剣持麗子のキャラが良いですね。私にプロポーズするなら内臓でも売ってもっといい指輪買ってこいというあたり最高。
最初から最後まで、このミス受賞はさすがの内容でした。



『世界は救えないけど豚の角煮は作れる』著:にゃんたこ

これはYoutuberでゲーム配信者のにゃんたこさんのエッセイ。Kindleセールか何かで買った気がします。
エッセイ、本当に偏見なんですが、雲が流れたとか石が落ちてたとかそういう文章が、いい感じの雰囲気と余白たっぷりの体裁で書かれている物だと思っていました。実際に読んでみると、そんなことは全然なかった、というか日常でふわっと考えていることを具体化して、しかも目を背けていた角度でぶつけてくるのがとても新鮮で面白かったです。エッセイに対する偏見が無くなりました。



『ニュートン式 超図解 最強に面白い! ! 哲学』著:伊勢田 哲治

哲学って興味あるな~と思って買った本です。
シンプルに哲学者の考えが載ってあって、読みやすかったです。
一方で哲学者の数が多く、掘り下げがあまりないのでやや一問一答的になっているところもあり、各哲学者同士の関係、繋がりを理解するにはちょっと難しいかなと思いました。
ただ、知らないジャンルを知ることが出来たし、図解があり入門に最適であるとは思います。



『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』著:近藤康太郎

これは本当に文章を書く上で、というよりも人とコミュニケーションを取る上で非常に役立つ本でした。とにかくわかりやすく、実体験に基づいた文章の書き方が説明されています。なんとなく自分が曖昧に誤魔化していた書き方をナイフで突き刺すように指摘されていて、納得感抜群。社会人マストバイだと思いますし、会社の後輩に読ませたい本です。



『特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来』著:南原詠

2022年第20回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
Vtuberに対して、撮影技術が特許侵害だから活動停止しろ……という警告が来たという序盤からの駆け引きに交渉、次にどう転ぶかわからない展開に引き込まれました。争いが長引いてきて、それに対し焦っていることを「活動休止期間が長引いたら忘れられる」って表現してたのがまさにVtuberを表現していて面白かったです。
私自身の仕事上でも特許についての知識が少し必要になり、そのあたりの知識が多少あったためなおさら楽しく読めたかもしれません。Vtuberをテーマにした小説が今後も出てくるでしょうし、そういう現代を反映した小説、読めるのが楽しみです。



『此の世の果ての殺人』著:荒木あかね

第68回江戸川乱歩賞受賞作。
隕石が落ちてきて人類が滅亡する、というのが決まっている、そんな世界での殺人事件の話。メタルギアの小島監督が勧めていて面白そうだなあと思ったので購入しました。
監督の言う通り、ミステリとしては普通かと思います。しかし、もはや人類滅亡が確定した世界での殺人というのがとても面白かったです。
「もうすぐみんな死ぬのに、なぜ殺すのか?」という問いは、この小説でしか発生しえないものであるな……と思いましたし、よくあるパニック映画のような世界ではなく、そういう混乱が落ち着いて、ただどうにもならない世界で、死ぬと確定した瞬間まで生きていくという設定が素晴らしかったです。



『ざっくりわかる 8コマ哲学』著:小川仁志

『ニュートン式 超図解 最強に面白い! ! 哲学』同様、ちょこちょこ哲学入門書のようなものは読んでいたのですが、この本が一番わかりやすかったです。
8コマ漫画が面白く、初版が7月30日だけあって現代感あふれるネタと哲学を合わせた内容なのが非常に読みやすく笑えました。
哲学は面白いんですが、一方で人や考えが無数に出てくるため、一度読んですぐ覚えられるものではありません。この本のように、面白く、端的で、読み返したくなる本は助かりますね。



『ニュートン式図解 最強に面白い睡眠』著:柳沢正史

睡眠、ずっと興味がある……というか、効率が良くて起きたときにスッキリする睡眠を探しているので、購入。割と豆知識的な話が多かったものの、睡眠に関する知識の導入には良いと思います。次はもうちょっと専門的な本を読んでみたいですね。



『22世紀の民主主義』著:成田悠輔

ネット界隈を忌憚なき意見で切り開いている成田悠輔氏の本。
民主主義における選挙というシステムの時代遅れ感と今後についての話。
確かに選挙というものはかなり大雑把なシステムであり、特に性的マイノリティの方などの意見は、大多数のマイノリティではない人の意見で決まってしまうというのが気付きでした。
あらゆる日常会話から何からを収集し、その結果を政策に反映させるというのは、実現方法は別としても個人的には賛成。個人情報はもうデジタルに全預けしてもいいと思ってるタイプなので、変にそこに拘って非効率なことをするよりとにかく効率的な社会を目指してほしいですね。



『変な絵』著:雨穴

不気味な『絵』をもとにした短編集+それらの話の繋がりが面白い小説。
実在の絵ではなくて、あくまで架空の絵があって、それにまつわるミステリーのような感じ。
かなりくだけた文体だなあと思ったので人を選ぶかもしれません。読みやすいは読みやすいので、Twitterとかの文体に慣れていると抵抗なく入れると思います。
トリックはさすがに強引では!? と思うところもありましたが、全体的にしっかりまとまったので良かった作品だったなという感想です。



『傲慢と善良』著:辻村深月

婚活、結婚をテーマにした恋愛小説。婚約者が突如姿を消し、彼女を探し続ける小説……なんですが、前半後半で物語がガラッと変わり、真実が明らかになるという構成です。
何が凄いって後半のキャラクターの気持ちが凄いわかるところ。これ、地方出身者ほどグッとくる話なんじゃないかと思います。もし実家から出なくてDJもしてなくて、なんとなくやりたいことも無くて地元の企業に就職して趣味も特になくて……みたいな生活をしているときにこれを読んだら、苦しくて倒れていたかもしれない。そんな印象の小説でした。



『嫌いなら呼ぶなよ』著:綿矢りさ

タイトルが素晴らしく、購入。綿矢りさ氏の本は、『蹴りたい背中』で初めて読み、『インストール』を読みましたが、それ以来の作品でした。
まあとにかく面白い。本を読んでこんなに笑ったのは初めてだったかもしれません。とにかく自己愛の強い主人公が登場する4つの短編集。
『眼帯のミニーマウス』で一気に引き込まれ、『老が害でも若も輩』のあの感じ! 仕事に関わる年上の女性にチクチク言われる感じ! 嫌な記憶が蘇ってニヤニヤが止まりませんでした。綿矢りさ氏、こんなに面白い本を書くんだと驚きました。



『勝手にふるえてろ』著:綿矢りさ

先ほどの『嫌いなら呼ぶなよ』に続いて、綿矢りさ氏の本。
こちらは映画化もされた恋愛小説ですが、綿矢氏の相変わらずの文体が素晴らしかったです。特に、自分にアプローチをかけてくる「ニ」の行動に対しての冷めたスタンスや、産休届にまつわるあたりの話が痛快。『勝手にふるえてろ』の意味も納得でした。翌日に映画版を見たくらい気に入った小説でした。



終わりに

2022年はこのくらい。ゲーム同様、積んでいる本は山ほどありますが、個人的には買った本は必ず最後まで読まないといけないとは限らないと思っています。
半分しか読めなくても、10ページしか読めなくても、少しでも何か糧になるものが自分に残ればそれが最高で。三日坊主もどんどんやるべきだと思ってるんですよね。とはいえ、小説なんかは最後まで読まないと得られない体験もありますが。
2023年も、興味があるジャンルの本にも興味がないジャンルの本にもどんどん手を出して、1ページでも、1行でも、何か心に残ればいいな~と思い、読んでいこうと思います。


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