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【2023年10月〜12月】読んだ本

1-3月
4-6月
7-9月

この3ヶ月では9冊!思ったより読めなかったなあ、もうちょっといけたはず。
いくつか読んでる途中の本もあるので、それは来月以降に読了できると思う。
ちょっと通勤時間に本を読むルーティンが崩れてきているのが痛い。また復活させたい。



『ケーキの切れない非行少年たち』著:宮口幸治

有名な本だってことは知っていたけど、読むきっかけも無く。先日たまたま入った小さな本屋で見つけたのでなんとなく購入。
非行少年は認知機能が低く、そもそも読めない・聞けない(視力聴力ではなく認識として)という問題があり、だからこそどれだけ指導をしても、そもそも理解すらできていないのではないかという本。
非行少年がケーキを三等分出来ないこと、そして図形の模写が出来ないことは驚きだったし、個人的には知的障害の定義が時代によって変わり、以前はIQ84までが知的障害と認定されていたのに、今の基準では認定されない、グレーゾーンとなっているということに驚き…。

もちろん非行少年については多角的に対応・支援する必要があると思うけど、そもそも認知機能が低くて、非行せざるを得ないような環境にいる少年、そして支援があれば非行の道に進まなかった少年がいると思うとやりきれない気持ちになった。



『歌われなかった海賊へ』著:逢坂冬馬

名作『同志少女よ、敵を撃て』でデビューされた逢坂冬馬さんの新作。同志少女がきっかけで、十数年ぶりに読書にハマった身としては本当に楽しみにしていた作品。
舞台は第二次世界大戦中のドイツ。そこで反ナチとして活動する「エーデルヴァイス海賊団」と名乗る少年少女たち。エーデルヴァイス海賊団は一つの組織というよりは、反ナチで活動する様々なグループがそう名乗っていた、共通概念のようなもの。そして、とあるエーデルヴァイス海賊団で反ナチ活動を行う若者が、ある日、隣の町に「強制収容所」があること、そしてそこで行われていることを知って……という話。
逢坂冬馬さんの文章は本当に、情景がありありと目に浮かぶ描写のうまさ。文章を読んでいるはずなのに映像を見ているような立体感と緊張感が伝わってくる。
そしてそんな描写が生み出す、少年少女たちの、体制では抑えられない自立心と自尊心。見て見ぬふりをする大人との対比、他人をカテゴライズして理解したつもりになること、自己保身で主義主張を変える浅ましさ…。そういったものが、今の自分に跳ね返ってくるようで、生き方としての価値観を変えられるような強さがある小説だった。
同志少女と同じく、信念の強さと美しさを感じた作品だった。歌われなかったとはどういう意味なのか、是非読んで感じてほしい名作。



『夏物語』著:川上未映子

TIME誌にも選ばれた作品、という宣伝が気になり購入。

主人公の夏子が、パートナーがいない状態で、精子提供を受け子供を産み育てるかどうかというのがメインのテーマ。前半は過去の話で、どちらかというと家族周りの物語。ここもここで、夏子の姉の子供が全く喋らない、といったトラブルに対する物語で面白い。そしてその話から、家族関係や性に対する疑問といった下敷きが生まれ、後半の物語がより濃くなっていく。
物語はなんらかの大事件が起きたり叙述トリックがあって…というタイプの本では無く、どこか淡々と話が進み、その中で子供を持つことに対する心情の深掘りや変化が起きていくというもので、グイグイ引き込まれるという感じでは無かったから読むのにかなり時間がかかってしまったけど、一方で飽きるポイントは全くなく、本当に読みやすくそれでいて丁寧。
特に作者の池上さんの、物の例えが秀逸で。読んだことのない、聞いたことのない例えが散見されたけど、それがまた非常に的確。日本語の面白さを再確認したように感じた。

自分自身は結婚願望も特になく子供が欲しいとも思っていないので、そういうタイプの意見が言語化されて書かれていたところに強く共感を覚えた。一方で、子供が欲しいという抽象的な気持ちもまた、主人公の夏子の揺れ動く気持ちで言語化されているところが凄い。こういう、人によってどうとでも考えられる、答えの無い問いと、生命・出産という尊くもあり危険でもあるテーマでありながら、納得できる内容が一貫している、名著だったなと思った。



『君のクイズ』著:小川哲

クイズプレイヤーの主人公・三島は、生中継のクイズ番組に出演。その決勝で、対戦相手の本庄と対峙。お互い譲らず、どちらかがあと1問正解すると優勝が決まる、そして優勝賞金1,000万円の行方が決まる最終問題。問題が読み上げられる、その直前…対戦相手の本庄が早押しボタンを押し、回答。つまり、一文字も問題が読み上げられていないのに、回答し、そしてその答えが正解だった…という話。
一体本庄は、なぜ一文字も読まれていないクイズを正解できたのか。それとも、そこにはヤラセがあったのか。何もわからない三島が、情報を集め、番組を見返し、真相を追い求める物語。
結構短めの小説で1日で読めたし、真相もそこまで難しい話ではないので読みやすい小説。おそらく読める人がオチを読めると思うけど、そこというよりはそこに至るまでの文章が面白い。『Undertale』や『響け! ユーフォニアム』といった固有名詞が出てくるのも、スッと理解しやすい。そしてクイズおよびクイズの回答におけるロジックがわかりやすく説明されているので、その点も面白かった。読みやすいエンタメ小説としてお勧めできる小説。



『海賊と呼ばれた男』上下巻

出光興産創設者の出光佐三氏がモデルの小説。主人公の国岡鐡造の、石油にかけた一生を描いた小説なんだけど、正直読み進める手が止まらないくらい本当に面白かった。戦争や政治、GHQ、様々な困難にぶち当たりつつも、泥臭く、そして一時の儲けより日本という国の利益を追い求める熱い気持ちがあまりにもかっこよく、その人柄に惚れてしまった作品。
とにかく多くの困難と、その解決の道がドラマチックで、こんな人生を歩みたいと強く思えた。後半のスケールは非常に大きく、まさに世界を敵にしてでも己を貫く美しさと、経営者としての覚悟や不安。何度も涙した名作。
あまりに感動しすぎて、読み終わった翌日には出光美術館へと足を運んでしまったくらい。仙厓展か何かがあったらまた行きたい。
仕事のモチベーションを上げるのにも最適な作品。本当に素晴らしかった。



『世界でいちばん透きとおった物語』

びっくりした!「電子書籍化絶対不可能」「紙の本でしか体験できない感動がある」と帯に書いてあったから本屋で購入。内容は、小説家である父親(ただし会ったことはない)の遺作を、浮気相手の子である主人公が探す、という話。
まあ内容的には割と山も無ければ谷も無く淡々と進む感じで、どういう結末になるんだろうなあと思ったけど、この小説の最大の謎であり仕掛けに気づいた瞬間の鳥肌は、まさに目が覚めるような、脳が一気に活性化するようなもの。先が気になるにも関わらず思わず前のページをめくってしまう。
そして最後。凄すぎて思わず笑いが漏れてしまうような結末。
これは凄いです。体験出来て良かった。



『フリースタイル言語学』著:川原繁人

昔から言語学に興味があったよな…と気づいたのがここ数年。特に日本語への趣味関心が強く、日本語ラップにハマり、逆にあまり洋楽のラップへと興味が向かなかったのはそういうところがあるのかもしれないと地味に考えていた。
言語学の本は高校~大学くらいで1冊買い、面白かったものの読破できなかった記憶があり。なんとなく言語学という学問への興味が頭の隅にあったまま年齢を重ねていた。
そんなときにふとYoutubeのおすすめに上がってきたのが下の動画。

これで川原先生を知り、本を購入。
もちろん言葉を発するときの身体的な仕組みや用語は少し難しいところがあるものの、メイド喫茶のメイドの名前、プリキュアの名前、ポケモンの名前などとっつきやすいところから解説されているので非常にわかりやすい。無意識に使っている日本語でも、特定のルールがあることを知り驚いた。これは外国語として勉強しようとしたら相当だるそう。
当然ながら日本語ラップにについての話も出てくるし、言語学入門としてとても良い本だと思う。アトロクにも出演されていたので、こちらも聞いた。いやあ、面白かった。



『言語学的ラップの世界』著:川原繁人

先ほどの川原先生が、「Mummy-D・晋平太・TKda黒ぶち・しあ」との共著?featuring?で書かれた本。
前半部分はかなり真面目な日本語ラップにおける韻の要素の解説というか、統計解析も含めた内容なので、本当にじっくり読まないと完全に理解は出来ないかも。特に文系で数学も統計もちょっとしか知らない自分としてはややハードルが高かったものの、大体そういうのが分からない人向けのコメントもあるので、ある程度は理解できたと思う。もちろん飛ばしちゃったところも多いけど。
中盤から後半はヒップホップ、日本語ラップの歴史やラッパーへのインタビューなど。特にMummy-Dさんへのインタビューは垂涎もの。日本語ラップ黎明期からの歴史を、当事者の立場から説明されるのはかなり熱い。個人的にはキングギドラの「公開処刑」について語られていて、それがその後の日本語ラップという音楽史にどういう影響を与えたのかが言語化されているのが、当時から感じていたモヤモヤに光が差したような感覚だった。

言語学と韻、日本語ラップへの確固とした愛を感じられる本。
さらには楽曲も作られ(しかもビートはMitsu the Beats!)、これがまたかっこいい。

これからも川原先生の本は追いかけていきたい。そう思える、日本語ラップ好きにお勧めできる良本。



終わり

先月、映画公開された「正欲」があまりにも良すぎたので朝井リョウ先生作品を読んだり、最近アガサクリスティートートバックを買ったので「そして誰もいなくなった」を読んだり、Rhymesterの宇多丸さんのお父様が書かれた「開かれている病棟」を読んだりしている最近。積ん読も増えてきているので、残りの年始休暇や1月の連休でバチバチ倒していきたい。ゲームは合わなかったら先に進めるのが苦痛だけど、本はそこまで辛くないのが良い。というか大体面白い。でも、継続して読み進めないと話の熱量が落ちてしまうので、そこだけ気を付けたい。

今年読んだ本は36冊かな?
あとはなんかビジネス書とかもちょいちょい読んだり、全く興味が無い(無かった)本とかも買ったりしているので、積まないようにして来年は過ごしていきたい。
目標は高く、年50冊読破を目指す!

ちなみにベスト3くらい決めるとしたら、
1位「成瀬は天下を取りにいく」
2位「海賊とよばれた男」
3位「風が強く吹いている」
ですかね。
成瀬は来年の新作も楽しみ。「海賊とよばれた男」「風が強く吹いている」はいわゆる過去の名著を履修したらやっぱり素晴らしかったという感想。ここ数年本を読んでいなかった分、まだまだこういう名作を読めると思うと嬉しい。

来年もきっと面白い本に沢山出会えることを楽しみにしています。
作者の皆様、出版社の皆様、ありがとうございました!

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