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僕が10年コーチをしたアメフトチームから考える”組織のカルチャー”

目次:
1) はじめに
2) 僕がチーム作りで大切にしていること
3) チームのカルチャーとは
4) チームのカルチャー作りに大切なこと
5) さいごに

1) はじめに

僕は大学1年生の途中から最近まで、約10年間、母校のアメリカンフットボール部のコーチをしていました。

コーチと言っても、公立高校のいちOBとしてやっているだけで、雇われているわけでもなく、顧問の先生のような責任が伴う役職だったわけではありません。
言ってしまえば本来は高校の部活動にはいないのが普通ですが、自分の中で使命感を持って本気取り組んできました。

最近では企業の人事として、”個と組織の関係性”を考える機会が多いですが、
今でも自分の思考の中で原型になっているのは、部活動で経験したものが主たるものになっています。

僕がコーチをしていた部活は神奈川の公立高校で、
部員が潤沢にいるわけでもなく、設備も整っているわけでもないですが、最近では継続的に強豪高とも互角に戦えるようなチームになってきました。

当然ながら、いきなりそのようなチームに変わったわけではなく、
毎年メンバーが代わる部活動の中で、何世代もかけて継承、蓄積、醸成された”チームのカルチャー”がチームの強さであり、すべてにおいての原点になってると思っています。

なので、今回は僕が考える「チームのカルチャー ~個と組織の関係性~」について書こうと思います。
最初にお伝えしておくと、チームのカルチャーはそのチームによって間違いなく異なるものなので、そのまま他のチームに当て込んでも機能するものでありません。
そういう意味では、カルチャーというものは、決して模倣は出来ない唯一無二の強さでもあると思っています。

2) 僕がチーム作りで大切にしていること

カルチャーのことを書く前に、簡単に僕がコーチをする上で大切にしていることを書きます。

その理由は、
僕の中でカルチャーはチームの中にいる人の言葉や態度、姿勢から成されるものだと思っていて、コーチをする上で「学生にどうなってほしいか」という部分を最初に書いて、僕の言葉や視点の大前提を知って頂いてからの方がより分かりやすいと思ったからです。

僕が部活動を通じて実現したいこと

❶没頭:自分の意志を持って、本気でそれに取り組む楽しさを知る
❷自考動:自分で考えて、行動できる人になる
❸自責:全ては自分次第、自分の選択という思考を持つ
❹仲間:同じ志を持つ仲間と出会う

以上の4つが、僕がコーチとして大切にしているもので、
選手やマネージャーらと言葉を交わす際や、練習の中で意識しながら接しています。

この4つのさらにベースには、こんな想いがあります。

・本気で取り組むことの楽しさを知ることで、社会に出てからも志を持ち、イキイキとしたカッコいい人になってほしい
・何事も自分の選択次第!自分次第で何者にでもなれる!という前向きな思考を持った人になってほしい

本noteの主旨ではないですが、以下に記載していることも、このような考えがベースにあることを知った上で読んでいただければと思います。

3) チームのカルチャーとは

冒頭で、「カルチャーというものは、決して模倣は出来ない唯一無二の強さ」と書きました。

その強さというのは、”勝負の強さ”に関係していると思いますが、
僕の中ではそれよりも、学生たちが「いかに主体性を持って取り組めるか」という部分に大きな影響力があると思っていて、
その影響力があるが故に、勝負の部分にも良い影響がある、という順番なのかなと考えています。

そもそも組織のカルチャーとはどういったものなのか。
僕のなかではこのように定義しています。

カルチャーは、
「問い続けること」で形成され、自分たちの存在意義を明確にするもの

これは僕自身のコーチとしての始まり方が大きかったと思いますが、
冒頭でもお伝えしたとおり、僕自身が大学でアメフトをしたわけではないので、知識がないながらも「後輩のために出来ることをしたい」という気持ちが先走り”コーチ”を始めました。
なので、行きたい場所はあるけれど行き方が分からないような状況でした。

ただそんな中でも、
「俺らはどこに行きたいのか」「なんで行きたいのか」「じゃあどうすればいいのか」といった”問い”を、選手やマネージャーに投げかけ一緒になって最適解を見つけようとし続けていました。

そういう意味では、その”問い”に対する自分たちの中での”答え”が、
常に行動としてあらわれて、”問い”により、組織がどこを目指したいのかを”目には見えない形で”表していた
んだと思います。
その行動によって、組織にとって「何が良いことで、正しいのか」という価値観が洗練されていったと実感してきました。

4) チームのカルチャー作りに大切なこと

ここまで長くなりましたが、
チームのカルチャーが形成されていく上で、僕自身が大切だと思う要素を書きます。

❶自分たちの存在意義を明確にする
これはよくあることかもしれませんが、やはり「なぜ自分たちは存在しているのか」という目的を明確にすることは、組織が成長していく上では必要不可欠だと思います。

高校の部活だとしても、真夏の灼熱の中で、真冬の極寒の中で、まだ暗い早朝の中で、なぜかき氷を食わず、こたつやベッドの中にいないで、自分たちはグランドに立って厳しい練習をするのかを選手たちに問い続けていました。

その問いに対して、みんなの考えをぶつけ合い、チームとして納得できる形に落とし込めれば、目指すべき場所が明確になり、必死に辿り着こうとするはずです。
あとは、定期的に”チームが目指す所と自分との繋がり”を考える機会を提供することで、目的意識の伴う行動が組織の中でとられていきます。

その状態になれば、
個々が成長すること=チームの成長に貢献出来ていると思えることが、「個と組織の健全で強固な関係性」を築いていけるのだと思っています。

貢献感と健全な危機感
2つ目は”貢献感”と”健全な危機感”を並列してあげています。

まずは”貢献感”
これは自分が取り組んでいることがチームの強化に繋がっていると思えていることです。簡単に言えば自分がそのチームを作っていると思えていること。
当然ですが、「これをやれ」と言われたことが、結局試合でも活かされなければ、そこに頑張る意味は見出せません。
本人が取り組んだことがしっかり成果に繋がるような機会を意図的に用意することが、本人にとっての成長実感に繋がると思っています。

リクルート創業者である江副社長の言葉でもありますが、「自ら機会を創り出し、自らを変えよ」という言葉は、まさにその通りだと思っていて、
コーチとしては、機会を与えるに値する姿勢の選手には、積極的にそのような機会を創ろうと意識しています。

それと並列でおいた”健全な危機感”
これはとある会社の人事の方とお話をさせて頂いた際に、ものすごく納得をしたので言葉をそのままお借りしました。
貢献感と表裏一体の要素だと思っていて、「自分がやらないと負ける」「これが出来ないとまずい」という感情を、健全なかたちで感じれる緊張感も組織にとっては非常に大事だと思います。
良い意味で刺激的で、組織という複数人で構成される団体の規律を正す、重要な要素の一つです。

なので、
「自分が貢献できている」「自分がやらないとまずい」という両面を兼ね備えることが、本人の中での”使命感” に変わり、能動的な人の創出に繋がるのだと思います。

❸適合感
これはいわゆる心理的安全性とも言われ、「自分らしくいられる」状態のことで、そうなれて初めて、本人の本来の才能や個性は発揮されるものです。

その状態を組織の中に作ることは非常に重要で、大事なことは「全員違う」ということをまずは理解することだと思います。
アメフトの場合は、ポジションが違えば役割も体系も全然違いますから、オールマイティを求められる野球などと比べると醸成が簡単だったのかもしれません。

ただ、「全員違う」という事を認識すればいいのではなく、”目指すべき場所は同じ”という大前提があります。
そのうえで「互いの違いを尊重し、補い合う姿勢」があれば、個々を尊重し合える雰囲気がチームの中に作られていくのではないでしょうか。
僕個人のやり方としては、”個々の良いところを見つけては褒める”スタイルが自分にあっているので、そのような会話から本人が適合感を持ってもらえるよう心がけています。

また、弱い部分を見せ合う時間を設定したりすると、一気に自分らしさを出せたりするので、意図的にそういう時間を設けたりもしてます。
その際は率先して自分の恥ずかしい話とかを話したりもします照

挑戦とフィードバック
人は、良くなろうとしている過程にいる状態だと自発的なアクションをとることが多いと思います。
その”良くなろうとしている過程”では、自分で考えて行動してみるという事をしており、そこには必ず「現状からの変化」、いわゆる”挑戦”が存在します。
“挑戦”をしている過程で制限や縛りがあると、成長意欲や行動範囲を委縮してしまうものだと思っています。

なので、僕は挑戦していることに関しては結果がどうであれ、姿勢については全て肯定をしていて、改善を試みる姿勢をもって、練習などでミスをした場合には「ナイストライ!」という言葉をよく使います。
逆に、挑戦もせずに現状から変わろうともしていない「変化なき者」に対しては、ひたすら問いかけ続けることで、健全な危機感を覚えさせたりしています。
そういう意味では、挑戦に対して、良い意味での”いい加減な雰囲気作り”はコーチとして大切にしているところです。

そして挑戦への姿勢は肯定しつつも、
実際の成長に繋げるためには、改善に向けたフィードバックが非常に大事になってきます。
人は経験から学ぶことが成長要因の割合の中でも多くを占めているので、その成長を加速するためにも、本人とは向き合って、頻繁に1on1などをするようにしています。

❺教え合う文化
個人目線で言うと、人は教える時に自分の理解も深まり、教わっている人よりも実は教えている人の方が成長しているものです。

なので、僕は新入生の指導の際に、上級生に「◯◯について説明してあげてみて」とものすごくラフな感じで言ってます。
そこで曖昧な理解だと分かれば、また一緒に考えてみる。出来たらまた教える機会を作る。
もし十分な説明が出来ていたら、新入生に「他に◯◯で分からなければこいつに聞けば分かるから」と伝える。
そうすれば部員間で聞く&教える文化が出来てきます。
もちろん聞かれた側は、また自分の中にしかなかった抽象的なものを、言語化して分かるように伝えなくてはいけませんから、理解を深めないといけません。

ここで大事なのはデキる人にはそこまで言わないこと。できる人が教えるのではなく、教えるからできるようになる。そこがポイントだと思ってます。

5) さいごに

以上が僕が考えるカルチャーを創っていくうえで大切な要素なのかなと考えていることです。

うちのチームの選手やマネージャーは、自分たちのチームが大好きな人が多いです。

きっとそれは、うえに書いたカルチャーがあったからこそで、
自分がこのチームの一員で、その一員であることを心から誇りを持っている学生も多いのではないかなと思っています。

カルチャーはそのチーム特有の価値観であり、
試合前の選手らの顔を見ると、「このチームで勝つんだ」「このチームだから勝てる」と思っている選手が多いなと感じます。
だからこそ、僕の中で使命感が出てきたり、気付けば10年もやっちゃうくらい夢中になっているんだと思います笑

僕自身は意図的にやってきたわけではなく、振り返った時に初めて大事な要素に気付けました。

チームのカルチャーは誰か一人が頑張ってできるものではなく、時間も要するものですが、間違いなく、誰かの一歩から始めるもので、それがないと絶対に形成されません。
「本気でこんなチーム作りたい!こんなチームでプレーがしたい!」と思っている人が、本気でチームに向き合い、行動すればと出来るものだと思っています。

たかが部活動だけど、されど部活動
スポーツを通じた人材育成でイキイキとした人を増やせればいいなと思っています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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