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抱きしめて

きみは私が触れた途端ポロポロと崩れてしまいそうなくらいに、そうきっと、脆いんじゃないかな。

ぎゅっと抱きしめてみたいけれど、きみはきっと私の体温で、火傷しちゃいそうじゃない?

きみのもつ脆さ。それはきっと、この世界で生きて、死んでいくことへの怖さ。

きみのもつ灰褐色の目は、この世界の理を見通して、霞みがかっているように見える。

ほら、その証拠にわたしを抱きしめるきみの身体は、こんなにも震えているじゃない。

こわい。こわい。
近づきたいのに、離れたい。

なんで。なんで。
なにがそんなに怖いっていうの。

わかんない。わかんない。
きみといるとき、思考は珈琲のフィルターみたいに、わたしの感情を堰き止めてしまう。

そして残るのは、
ほんのり温かくて甘酸っぱくて、苦い後悔だけ。

きみの温もりをこんなにも近くに感じているのに、

わたしはもう、きみと離れることを考えている。

そんな罪深いわたしを、どうか赦して。
あなたの幼気なその手で、わたしを殺して。

あなたのいない世界を歩くと、
そのたびに、私の輪郭は消えていくみたい。

私には、"なにか"大事な部分が抜け落ちていて、
街でたくさんの人とすれ違っても、
ほんとうのわたしには、誰も気づかない。

周りから聞こえてくる、嘲笑や罵声、ため息。
そのすべては、わたしに向けられているみたい。

わたしって、透明だったっけな。

ねえ。わたしって、まるで白雪姫みたいだ。
誰かに与えられた毒を拒むこともできず、自分の望まない未来までも丸呑みで、ただ受け容れるしかないなんて。

みんな冷徹な視線をわたしに向けて、知らないところにひとりで、駆けていくんだ。

わたしの不安定でぽっかり空いた心の穴を埋め合わせようなんて、誰も思ったりしない。

きみのいない世界は退屈なんだ
いつも何かが足りなくて
いつも何かを探している

せかいにドーナツみたいな
おおきなあながあいたみたい

まっくらやみももうなれた
わたしはいつもひとりぼっち

ねえ おねがい
はやくわたしをみつけて
きみのこえがききたいの

わたしのこころをあなたでみたして
せかいのあなをふさいでほしいの




あやのさんに朗読して頂きました。

susukiさんに朗読して頂きました。

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