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認知症について知っていますか?

「年間490万人」

これは、日本を含むアジア地域で新たに認知症と診断される患者の方の数です。
2015年には4,680万人だった認知症患者数も、2030年には7,470万人、2050年には1億3,150万人にも昇ると予想されています。

今日は、先日参加してきた『北区認知症ケア向上他職種協働研修会』の内容をもとに、認知症について書かせていただきます。

【認知症とは】

認知症とは、
・一度正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態
のことを指します。
認知症の症状として、もの忘れや、判断力・理解力・実行力の低下、時間や場所や人が分からなくなる(見当識障害)という症状が出てきます。
2016年には、介護が必要となる原因疾患として認知症が1位になっており、そのパーセンテージは全体の約18%となっています。

ではなぜ、認知症になってしまうのか。
それは、「脳に異常なタンパク質が貯まることが原因」と言われているそうです。
この脳に貯まる異常なタンパク質は、大体50代頃から貯まり始めており、約25年ほどかけて貯まり続けた異常なタンパク質によって認知症は発症するそうです。

【4大認知症】

一言で認知症と言っても様々な種類の認知症があり、その数は混合型も含めると10種類以上あります。
その中でも、代表的なものが、

・アルツハイマー型認知症(50%)
・レビー小体型認知症(15〜20%)
・血管性認知症(10〜15%)
・前頭側頭葉変性症(5%)


の4種類であり、この4つが「4大認知症」と言われています。

【認知症のステージアプローチ】

今回の研修では患者数の最も多い、アルツハイマー型認知症を基本として、研修を進めていったので、ここでもアルツハイマー型認知症を基本に書かせていただきます。

まず、認知症の自然経過の流れについて。
発症から軽度の頃には、近時記憶の低下が見られ、その頃の変化としては

・何度も同じことを聞いたり、言ったりする
・保険証や通帳をなくし、再発行を何度か繰り返す
・火の付けっ放しで、鍋ややかんを焦がすことがある
・自分でもの忘れが増えたということを嘆くようになる
・食事の味が変になった。料理が単純になってきた
・外出や旅行をめんどくさがり、あまり外に出なくなった
・日付や曜日が分からない事が多くなった

など、身近な部分の記憶低下が見られてきます。

次に、中等度の時期に見られる変化ですが、

・ついさっきのことも忘れる。30秒ごとに同じことを言う
・夜にトイレの場所が分からなくなった
・お風呂に入りたがらない。入ってもボーッとしている
・家電製品や電話の使い方が分からない
・遠方に住む息子や嫁が誰か分からなくなってきた
・テレビのあらすじが分からず、見なくなった
・服を選んで、順番に着ることができない
・いつも誰かがそばにいないと生活できなくなった

など、日常生活においての支援、手助けが必要になってくるのがこの時期です。

最後に重度の時期に見られる変化です

・言葉がうまく出てこなくなり、意味のある会話ができない
・食事排泄など、生活のほとんどに介助を要し、常に介護者がそばにいないといけない
・尿失禁、便失禁が見られる
・歩行にも介助が必要となり、目を離すと転ぶようになる
・便秘や尿路感染の合併症をしばしば起こすようになった

など、重度の時期になると、常に誰かの介護が介助が必要で、歩行などの身体機能にも影響が出てきます。

【2種類の記憶】

認知症は、簡単に言うと「記憶力が低下し、出来ないことが多くなっていく病気」ですが、その「記憶」には2つの種類があります。
それは、「陳述記憶」と「非陳述記憶」です。
1つ目の陳述記憶とは、”頭で覚える記憶“の事で、頭で情報を処理したりする時に使う記憶になります。
例えば、「昨日デイサービスに行ってリハビリをした」と言う「エピソード記憶」や、「デイサービスとは、日帰りで通う介護施設で、食事や入浴やレクリエーションやリハビリを受けることができる施設であり、社会的孤立感の解消や心身の機能の維持、ご家族の介護負担軽減を主な目的として…」と言うような「意味記憶」を覚える時に使う部分です

これに対して、非陳述記憶とは、“体で覚える記憶”です。
例えば、20年ぶりに自転車に乗ったけどちゃんと乗ることができた。というような、体が覚えている記憶になります。

記憶としては非陳述記憶の方が長い間記憶することができ、一度覚えた記憶は忘れにくいという性質も持っています。
これは認知症患者の方も同様で、体で覚えている記憶の方が最後まで残りやすいので、歩行機能の低下などは重度になって初めて出てくる事となります。

【診断のDisclosure】

診断のDisclosure(情報公開)の有効性について、現在日本では、認知症や、認知症の疑いがある軽度認知障害の方も含めた数は約900万人となっているのですが、認知症と診断を受けた方の数は、全体の50%以下となっており、症状は出ていても診断は受けていないという方が半分以上いると言われています。
そこで今、進められているのが認知症診断のDisclosureの有効性についてです。
初期の段階で診断結果を伝えることにより、様々なメリットがあると考えられています。

1.患者と家族にとってのメリット
・認知症の理解が深まり、様々な問題への対応力が向上
・患者の自立性の向上と介護負担の減少
・予測した対応が、危機を回避しやすくなり、不確実性が減少
・ケアサービスと医療に対するアドヒアランス向上
2.医療にとって
・アドヒアランスが改善、診療の質が向上
・合併症とBPSDの予防、病状の安定化
・早期介入(リハビリ等)の効果が期待できる
3.社会にとって
・救急受診や入院入所のリスクを下げる⇨社会的コストの削減
・社会に必要な資源が明らかになり、政策提言に活かせる

(※アドヒアランス:患者が治療方針に納得し、積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)

認知症においての予防の定義とは、「ならないではなく、少しでも遅らせる」という認識のため、早期からの医学的管理とリハビリの介入が必要になってきます。
特に認知症の方のリハビリにおいては有酸素運動の有効性が証明されている(脳由来神経栄養因子が活性化し、海馬量が増える)ため、早期段階からの有酸素運動はとても重要になってきます。
また、糖尿病による、認知症への影響も大きく、血糖値のアップダウンにより認知症の進行を進めてしまうことになるそうです。その為、医療的管理による血糖値のコントロールも予防のためには必須となってきます。

【認知症における活動と生活機能】

認知症の症状が出ると、まず最初に調理の能力が失われます。
これは調理という行為は、とても複雑な脳の働きを要するからだそうです。
例えば、「豆腐とわかめの味噌汁」を作ろうと思った場合、調理の手順として、

お湯を沸かす→出汁を入れる→味噌を入れる→豆腐を切って入れる

という風にゴールから逆算した手順のイメージと行動が必要となります。
また、その際に「冷蔵庫を開けたら豆腐の賞味期限が切れていた」というイレギュラーが発生した場合、その場ですぐにゴールを修正して次のゴールを設定しなければいけません。
万が一、豆腐とわかめの味噌汁を作ろうとした時に豆腐の賞味期限が切れていた場合、途中で今日のメニューを豚汁に変更する。というような感じです。
これは、普段から料理を作っている主婦の方などは、当たり前のように行っていることかもしれませんが、ここにはとても複雑な脳の働きがある為、認知症により、脳の実行機能が低下するとこういった対応が困難になります。

【独居の限界点】

生活機能には、それぞれ段階があります。
認知症の場合、生きるうえで自分に必要な機能が最後まで残り、自分が生きるために必要な能力とと離れた部分からその能力が失われていく事となります。
その生活機能を段階別に記すと、

「仕事・社会活動」
「家事」
「手段的ADL」
「ADL(日常生活動作)」
「生命に関わること」

という段階になってきます。
先程もお伝えしましたが、認知症の症状が現れると真っ先に調理が困難になります。
ただし、これはまだ仕事や社会活動の一部であり、ここの能力が失われたからといってすぐに生活が困難になるというものではありません。
そこから徐々に掃除や洗濯、買い物、片付けなどの家事や手段的ADLが失われていきます。
この辺りになると認知症の進行も進み、軽度から中等度の段階に入ってきます。
そこからさらに進行すると、入浴や着替え、食事(自分で用意して食べる)、トイレに行くというADL(日常生活動作)機能が徐々に失われてきます。
この手段的ADLとADL(日常生活動作)の間にあるのが、「独居の限界点」です。

つまり、入浴、着替え、食事、排泄等の機能が失われてくると、常に誰かしらの介助が必要な状態となるため、独居での生活は困難になる場合が多くなってきます。

ちなみに、単身の高齢者が日本で最も多いのが東京都で、その中でも最も多い市区町村が北区だそうです。

【認知症ケアクラッシュ】

先程の独居の限界点について、生活機能では、手段的ADLが全て損なわれたら、1人暮らしは困難と考えるとなっています。
この段階になると、認知症の診断テストとして最も活用されている長谷川式認知症スケール(HDS–R)では15点を下回るようになってくるそうです。
(30点満点中20点を下回ると認知症の疑いが高いと診断される)

ちなみに、この点数は平均して年に2〜3点低下すると言われており、施設に入所されている方の平均点は12点だそうです。
以上のことから、手段的ADLが失われると1人暮らしは困難となるのですが、適正なサービスの利用や、薬剤等による進行の抑制、家族の手厚い支援等によって、“独居の限界点”を伸ばすことは出来ます。
実際に今もサービスを利用したり、服薬管理や家族の支援を受けながら自宅での1人暮らしを継続されている方も多くいます。

では、こういったサービスや支援を受ける事で、1年後も在宅生活を継続することができる可能性はどれくらいでしょうか。


少し考えてみてください。


では、答えです。
実際に、1年後にも在宅生活を継続することができるのは約3人に1人しかいない。
この数字を多いと見るか、少ないと見るかは個人の感覚によって違うと思いますが、これが答えです。

※認知症者の生活支援実態調査と支援方策の開発に関する臨床研究報告〜平成24年度厚生労働省老人保健健康増進等事業〜
http://www.hew.coop/wp-content/uploads/2016/12/01_h25tyousa.pdf


こういった現状には様々な要因がありますが、その要因のひとつとして介護者の負担というものが大きくあります。
認知症の方のBPSD(行動・心理症状)により介護者の負担が大きくなり、介護者の方が限界を迎えてしまう。(ケアクラッシュ)
だからこそ、認知症患者の本人だけでなく、介護者に向けたレスパイトケア(負担軽減)や環境整備が必要となってきます。

【認知症が死因になる】

最後に、今回の研修で僕が1番印象に残った事があります。
それは、「認知症が死因になる」という事です。

今までのイメージで、認知症は直接的な”死“とはあまり繋がっていないと思っていました。しかし、認知症も死に直結する疾患だということを学びました。

認知症のステージアプローチの部分でも写真を添付しましたが、認知機能が低下すると、徐々に身体機能の低下に繋がり、最終的には嚥下障害による肺炎の繰り返しや、食事の摂取が困難になる事で死に至るそうです。
それ以外にも、高齢者に多い救急疾患として肺炎、脳卒中、大腿骨頸部骨折、心筋梗塞などの心不全があるのですが、そういった理由で救急受診される方の15.4%が認知症患者で、そのうちの54.9%がそのまま入院になるというデータもあります。

また、実際の認知症の死亡率についてのデータでは、アルツハイマー型認知症と診断された場合、予後は診断後数年となります。
これは診断を受ける頃には症状がだいぶ進行しているからというのもあるそうですが、他の4大認知症はアルツハイマー型認知症よりも短くなります。
認知症診断後の5年以内の死亡率としては、男性が65.4%女性が58.5%となっており、どちらも50%を大きく上回る数字となっています。
他にも、認知症の入院患者の1年以内の死亡リスクは通院患者の3.29倍となっており、認知症の通院患者の1年以内死亡リスクは、一般集団の3.94倍となっています。

具体的な認知症の死亡原因として、71%は肺炎などを含む感染症となっていますが、認知症の自然経過による死亡も原因としてあがっています。
先日、日本の死因で第3位になった老衰も症状のない肺炎とも言われており、認知症との関連もあるんじゃないかと言われているそうです。

【おわりに】

今回の研修では、約4時間認知症について学び、理解を深めることが少しは出来たかなとは思うのですが、まだまだ知らない部分や分からない部分が多くあります。

これから、日本は更に少子高齢化が進み、その流れは2040年ごろまで続くと言われていますし、2025年には認知症患者が約700万人に昇り、日本の人口の約8人に1人が認知症という時代があと5年で到来します。
その時に介護従事者として適切なアプローチや支援の方法を提示する事ができるようにもっと認知症やその周りのことに対する知識を深めなければいけないなと感じました。
また、認知症がただのもの忘れや記憶力の低下ではなく、死因にもなりうるリスクあるものだということをしっかりと理解して今後のサービスに活かしていきたいと思います。
今回はとても長くなってしまいましたが、ちょっとでも僕が参加した研修の内容を共有して、少しでも多くの方にとって、認知症に対する理解を深めるきっかけになればいいなと思い、投稿させていただきました。

この投稿が少しでも皆さんの役に立ち、認知症に対する理解が広がるきっかけになれば幸いです。その為にも、少しでも多くの方に見ていただきたいと思っているので、もしよかったらこちらの投稿のシェアもお願い致します。


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