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Album Review published on KKV

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KiliKiliVillaのnoteにて掲載を頂いている私が執筆したアルバムレビューをまとめています。
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記事一覧

Porridge Radio『Waterslide, Diving Board, Ladder To The Sky』飛び込み台でつかまえて

KKV Neighborhood #137 Disc Review - 2022.06.20 Porridge Radio『Waterslide, Diving Board, Ladder To The Sky』 review by 村田タケル 孤独。悲嘆。自己否定への衝動。アルコールでは溶かされないどん詰まりで救いようのない負の感情に陥っている時に、寄り添い、共に苦しみ、泣き叫ぶ。傷を舐め合う訳ではなく、剥き出しの生傷のままの姿で抱き締めてくれる音楽がある。精神的シェルタ

Yard Act『The Overload』眼光、鋭くなって。UKリーズのニューカマーは高級化した野蛮な現代に観察と風刺を繰り返す

KKV Neighborhood #128 Disc Review - 2022.04.26 Yard Act『The Overload』 Review by 村田タケル ツイート主のSports TeamのAlex Riceはこう賛辞を述べた。一般的な知名度の比較では無謀な挑戦であったものの、2020年6月にLady Gagaとの激しいチャートバトルを演じたSports Teamを思い出させるように、1月21日にデビューアルバム『The Overload』をリリースしたY

Geese『Projector』ニューヨークの地下室で沸き起こるヤングパワー

KKV Neighborhood #119 Disc Review - 2022.2.15 Geese『Projector』(Partisan) review by 村田タケル 笑った。ああ、この感触は覚えがあるな…と。高校を卒業したばかりの5人組が2021年10月29日(フォジカルリリースは12月3日)にリリースしたデビューアルバム『Projector』にはParquet Courtsの活動の約10年間のエッセンスの殆どが詰まっているんじゃ無いかとさえ感じたし、ヴォーカル

Snail Mail『Valentine』失われた愛。とても奇妙なもの

KKV Neighborhood #109 Disc Review - 2021.12.02 Snail Mail『Valentine』(Matador) review by 村田タケル So why'd you wanna erase me, darling valentine? You'll always know where to find me when you change your mind どうして私を記憶から消そうとするの、ダーリン・バレンタイン? もし気

Taraka『Welcome To Paradise Lost』ようこそ、失楽園に!

KKV Neighborhood #105 Disc Review - 2021.10.26 Taraka『Welcome To Paradise Lost』(Rage Peace) review by 村田タケル まるでフランソワーズ・サガンの名作『Bonjour Tristesse (邦題:悲しみよこんにちは)』を彷彿とさせるタイトル。Tarakaのソロ・デビューアルバム『Welcome To Paradise Lost』が 10月8日にリリースされた。 Taraka

The Goon Sax『Mirror II』鏡が映し出しているものは何か

KKV Neighborhood #97 Disc Review - 2021.8.19 The Goon Sax『Mirror II』(Matador) review by 村田タケル ロックバンドの醍醐味の一つとして彼らが表現を拡張し、まるで別の何者かになったかのように新しい表現を獲得することがある。「あの時が良かった」というリスナーのエゴはあるかもしれないが、アーティストは成長し反省し探求し新たな作品を生む。 オーストラリアはブリスベン(シドニーから北に約900km

Squid『Bright Green Field』Warp契約のロックバンド、方程式を解くようにリスナーをカタルシスに導く

KKV Neighborhood #90 Disc Review - 2021.5.21 Squid『Bright Green Field』(Warp) review by 村田タケル 『Bright Green Field』と名付けられたSquidのデビューアルバムが5月7日にWarp Recordsからリリースされた。本作はディストピアをテーマとしたらしいが、アルバムジャケットには雲一つ無い青空と緑、そして横たわる人影。その人影の中をよく見ると、資本主義の象徴とも言える

Dry Cleaning 『New Long Leg』ロンドンの傍観者であり表現者が打つ、不機嫌でミニマルなビート

KKV Neighborhood #85 Disc Review - 2021.4.22 Dry Cleaning 『New Long Leg』(4AD) review by 村田タケル 真っ白なスケッチブックに落書きを描き倒すように、瞬きをする間も惜しいほどのニヒルな音と散文詩が雨あられとリスナーに降り注ぐ。 あらゆる音を鳴らすアーティストが再び集結し出したロンドンで唯一無二の不機嫌でミニマルなビートをかき鳴らす。今回紹介するDry Cleaning についてこんな印象を

Kiwi Jr.『Cooler Returns』ポジティブと現実の交錯の中で。それでもここはユートピア

KKV Neighborhood #80 Disc Review - 2021.4.1 Kiwi Jr.『Cooler Returns』(Sub Pop) review by 村田タケル カナダ・トロントを拠点とするKiwi Jr.の新作『Cooler Returns』は前作の勢いを更に加速させ、バンドを本物と確信とさせる作品となっている。全パワーポップ・ファン必聴作品として、今後も含めて注目して欲しい。 Kiwi Jr.は友人関係だったJeremy Gaudet (vo

Shame『Drunk Tank Pink』内省的探求と音楽的好奇心。サウスロンドンの若きリーダーの勇気ある成長

KKV Neighborhood #68 Disc Review - 2021.02.19 Shame『Drunk Tank Pink』(Dead Oceans、DOC204CD) review by 村田タケル サウスロンドンの若きリーダーshameは2018年以来となる2枚目のフルアルバム『Drunk Tank Pink』を2021年1月15日にリリースした。 Fontaines D.C.が2ndアルバム『Hero’s Death』の表題曲でバンドのブレイクにより宿命