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〈22世紀紀行〉世界は反転する

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22世紀がはじまったことに、あなたはお気付きだろうか。 22世紀とは、2101年以降のことではない。これから確実に来る、「今とは違う価値観の世界」のことだ。 22世紀型ライフスタ… もっと読む
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世界はルールを変えた

世界はルールを変えた

先ほど世界は、ルールを変えた。

今朝のことだ。
なくなったんだよ、カード類が一式ごっそり全部。
まあ失せものには慣れっこだ。昨晩、カード類一式をテーブルの上に出して見ていたのは憶えているが、そこから何処に仕舞ったのか分からない。
そのへんにあるだろう、と探しはじめたが見つからない。財布の中身もカバンの中身をすべて出した。
上着のポケットを探っていて「おっと、昨日着ていた服はこいつじゃない」と気づ

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新刊「世界は反転する」リリース!

新刊「世界は反転する」リリース!

インディーズ出版の22世紀堂より、新刊(4冊目)が出ます!
世界と未来に関する考察の断片集。

noteにて有料公開していた記事を大幅加筆し、さらに書き下ろしも加え、とどめに要所要所で押韻してます!
個別で有料記事を買うよりも、写真も情報も多くて濃くてお得です✨

「世界は反転する 22世紀紀行」  山泊リョウ

装丁は携行性が高くタフなペーパーバック(洋書仕様)を採用!
フルカラー、写真多数!

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〈著者紹介〉22世紀、ジャスビガン。        山泊リョウ

〈著者紹介〉22世紀、ジャスビガン。        山泊リョウ

 皆さんは、ご存じだろうか。21世紀が終わったことを。
 21世紀を終わらせたのは、山泊リョウ。22世紀をはじめた男だ。
「新しい世紀は、時の到来と共に訪れるのではなく、自覚した瞬間にはじまる」
 彼が新世紀の到来を高らかに宣言した時、本気で取り合う人は一人もいなかった。

 世界は、らせん状に進歩する。22世紀は、世界が裏返って上るタイミングだ。
 多様性が叫ばれた世界は、一様性を求めるように

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〈岡山県紀行〉ライオンは死んだのか

〈岡山県紀行〉ライオンは死んだのか

 年老いたライオンがいる。
 目が合うと、檻の中で気怠そうに身を起こし、私の方へとゆっくりと近づいてきた。

 それがなんの動物なのかはじめは分からなかった。彼はみすぼらしく、やつれている。数分前に見たハイエナの方が、よほど精気に満ちていた。王の威厳は、失せきっている。

 檻の前に写真があった。写っているのは荒野を前に堂々と胸をそびやかせるライオン。
 彼の若い頃の姿だ。
 風になびく黄金のたて

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〈マレーシア紀行4〉賭博暁暗録クアラルンプール

〈マレーシア紀行4〉賭博暁暗録クアラルンプール

〈CHAPTER4〉 遠望の丘 ――5月21日 現地時間で午後5時30分
 クアラルンプール郊外の家。必要以上にクーラーのきいた殺風景な部屋。
 滝のような汗が、シャツの背中をべっとりと貼りつかせている。
 無理もない。
 日本円にして600万円もの金を賭けて、ブラック・ジャックをしているのだ。

 勝負も大詰め。目の前のカードをめくれば勝ちが確定するのに、マリックに手を握られたまま、私は硬直して

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〈マレーシア紀行3〉賭博堕天録クアラルンプール

〈マレーシア紀行3〉賭博堕天録クアラルンプール

〈CHAPTER3〉 欲望の沼 「私たちが組めば絶対に勝てるんだから、いいだろう?勝った分の3割を君にあげるよ」
 老人の屈託の無い笑顔。こんな老人から金を巻き上げる吝嗇の金満ブルネイ人、許せない。
 若かった。私は何の疑問も持たず、首を縦に振る。

 老獪・・・・・・!
 無防備を衝かれ、承諾っ!
 異国の名も知らぬ街で、初対面の老人と組んでのイカサマ賭博。
 油断! 致命的油断っ!
 豊かな国

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〈マレーシア紀行2〉賭博破戒録クアラルンプール

〈マレーシア紀行2〉賭博破戒録クアラルンプール

〈CHAPTER2〉 絶望の城 窓の外を流れる異国の街並み。
 タクシーの中で、二人との会話は弾んだ。「ニホン人はいい人が多いから好きだ」と言う。
 やはり旅は良い。こういう出会いがある。
 ひょんなきっかけから思いがけない方向に転がるのが、人生の醍醐味だ。

 タクシーが停まったのは、おばちゃんたちの家。
 「お邪魔しまーす」
 私の声を聞きつけて、中から子供たちが走ってくる。奥では、お姉さんや

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〈マレーシア紀行1〉賭博黙示録クアラルンプール

〈マレーシア紀行1〉賭博黙示録クアラルンプール

 これは2007年、マレーシアの首都クアラルンプールで、筆者が実際に体験した話である。

〈CHAPTER1〉 希望の船 ――5月21日 現地時間で午後5時30分。
 クアラルンプール郊外。マレーシア人の家の2階で、私はトランプを睨んでいた。
 アジア圏にありがちな、必要以上にクーラーのきいた部屋。
 であるにも関わらず、滝のような汗が噴き出し、シャツの背中をべっとりと貼りつかせていた。
 無理も

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〈山梨県紀行〉いま、山が私を流れている。

〈山梨県紀行〉いま、山が私を流れている。

 
 息苦しい。蒸し暑さで目が覚めた。
 防犯のため窓を閉め切って寝たから自分の吐いた二酸化炭素で車内が温暖化している。

 大切な用事で山梨県甲府市にきた。
 感染症拡大の影響を鑑みて、車での遠征。
 長雨のため、各地で洪水が起こっている。今回は「絶対に外せない用件」なので、大事をとって前々日の夜に大阪を出発し、前日の夕方には到着した。

 男一匹、車中泊。 飲料無人自動販売設備と喫茶スペース(

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〈キューバ紀行13〉他人の不倫ではしゃぐ日本、亡命のために婚活するキューバ。

〈キューバ紀行13〉他人の不倫ではしゃぐ日本、亡命のために婚活するキューバ。

 不倫って、なんだろう。

 22世紀には不倫など無いが、2020年の日本では、まだ月替わりで有名人の不倫が報道されている。
 ユーチューブに視聴者を奪われたテレビが必死に視聴者をつなぎとめ、CMの合間を埋めるためだ。
 テレビを主たる情報源にしている人たちは、不倫と政権批判を不満のはけ口にし、リズムネタとモノマネがユーモアだと信じ、ドラマとお笑いで気持ちを慰める。
 芸能人は、次のCMまで視聴者

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〈キューバ紀行12〉「戦争をする人は賢いか、賢くないか」の話

〈キューバ紀行12〉「戦争をする人は賢いか、賢くないか」の話

 賢いって、なんだろう。

「戦争をする人は賢いか、賢くないか」
 小学生の時分、担任にホームルームで問いかけられた。
「賢くないと思います」
 誰かが答え、みんなが、なんとなく賛同する。
「じゃあ戦争を起こすのは、どんな人?」
 また誰かが、答えた。
「総理大臣とか、偉い人だと思います」
「じゃあ偉い人は、どうして偉くなったんだろう?」
「頭がよかったからだと思います」
「そうか。じゃあ戦争をす

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〈キューバ紀行11〉思い出を、家電に換えて生きていく。

〈キューバ紀行11〉思い出を、家電に換えて生きていく。

 思い出って、なんだろう。

 2017年3月。帰国したばかりの日本は、ワールドベースボールクラッシック第4回大会に沸いていた。
 キューバ代表も参加していて、2次ラウンドまで勝ち進んだが、敗退。
 話は、キューバ敗退の前日に遡る。

  仕事の打ち合わせのため、私は紀尾井町のホテルニューオータニでクライアントを待っていた。
 ニューオータニは政治外交で要人を接待する際に多用される。そのせいか、い

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〈キューバ紀行10.5〉我々は、自分を捧げたがっている。

〈キューバ紀行10.5〉我々は、自分を捧げたがっている。

 自分って、なんだろう。
 YO SOY FIDEL.
「私(たち全員)が、フィデル(・カストロ)だ」
 フィデル・カストロの死を悼み、キューバの街中に貼られたポスターの文言である。

 フィデル・カストロの死から、最初に立ち上がったのは学生だった。「(これからは)私がフィデルだ!」と声を上げながら行進し、落胆する民衆を鼓舞した。彼らの姿はキューバ国民の心象に、深く刻まれることになる。
 ついで革

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〈キューバ紀行10〉周回おくれの、トップランナー。

〈キューバ紀行10〉周回おくれの、トップランナー。

 美しいって、なんだろう。

ハバナは美しい。スペイン占領時代からのコロニアルな建物は、ピンク、水色、ライムグリーンと色鮮やかに目を楽しませてくれる。道ゆく人々は陽気で闊達だ。なのに街は、どこか静けさを感じさせる。
 その理由が、ハバナで撮影した写真を見返して分かった。広告だ。広告がない。街のどこにも宣伝が見当たらない。

 日本はどこへ行っても、宣伝だらけだ。「お得」だの「便利」だの「今だけ」だ

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