- 運営しているクリエイター
記事一覧
『モモ』ミヒャエル・エンデ (読書感想文)
めちゃくちゃ良かった。
現代を痛烈に風刺するこの物語が、懐古主義の随筆でも、説明口調の論文でも、嫌みたらしいエッセイでもなく、柔らかい雰囲気のファンタジーであるところが、何よりも好きだと思った。
だからこの本を読んで感じたことを、効率的良く論理的に説明しようとするのは、何となく無粋な感じがする。
遥か昔から、人々は物語が好きだった。演劇の世界に没入し、もう一つの人生を体験することを愛していた。
『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎 (読書感想文)
2005年『このミステリーがすごい!』大賞2位の、鮮やかで切れ味鋭いミステリー作品。
練られたストーリーと伏線回収は、本当に見事。
伊坂幸太郎の、愉快なリズムを持つような、小気味よい文章が好きだなと思う。
決して楽しい話ではないのに、読後感はどことなく爽快で清々しい。
書き出しの1文はこうだ。
「腹を空かせて果物屋を襲う芸術家なら、まだ格好がつくだろうが、僕はモデル
『あしたはうんと、遠くへいこう』角田光代 (読書感想文)
一風変わった恋愛小説。
ある一人の女の子の15年間の恋愛遍歴を追った作品。
解説で穂村さんも書いているけど、人生の全てをかけて振り回されるその恋の模様は、さながら激しい戦争のようで、しかも見事に全戦全敗。
恋心にぶら下がるようにして生きて、やれドラッグだ浮気だストーカーだと、どうしようもない失敗ばかり。
恋が終わるたびに今度こそと誓うのに、何度でも同じことを繰
『四月になれば彼女は』川村元気 (読書感想文)
情景描写は丁寧で鮮やかなのに、不思議と鈍くて薄いパステルカラーの雰囲気が、この本の全体を支配している。
他人に対して冷めた風である精神科医が、失ってしまった恋愛を探す物語。
恋愛小説って食わず嫌いだったけど、この本は本当に面白かった。
好きなものや嫌いなものを共有すること。
同じ景色を見ること。
相手の全てを知りたいと思い、欲しいと思うこと。
どんな言葉を並べ立てても説明出来ない恋という感情