ふみなるのnote

キリスト新聞のライター。カルト化したキリスト教会に約20年いました。吃音症がなかなかし…

ふみなるのnote

キリスト新聞のライター。カルト化したキリスト教会に約20年いました。吃音症がなかなかしんどい。映画やドラマやアニメの批評もします。

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  • 賛美を取り返したい

    教会で賛美を歌えなくなってから、また歌えるようになるまで

記事一覧

「牧会が大変で……」と嘆く牧師に耐えられない

 「牧会が大変で……」と嘆く牧師に違和感がある。  いわゆる「扱いづらい信徒」や、「問題ばかり起こす信徒」がいるのは分かる。実際苦労しているのだろう。その感情は…

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『失われた週末』で失われたのは

『ジョン・レノン 失われた週末』を映画美学校で試写した。  ジョン・レノンとオノ・ヨーコが別居していた約18ヶ月間の、「失われた週末」と呼ばれる時期に焦点を当てた…

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『ジョン・ウィック』は4作目で終わっていい

 キアヌ・リーブス主演の大人気シリーズ『ジョン・ウィック』は4作目で終わっていいと思う。ネタバレすると4作目でジョンが亡くなるので、物理的には終わっている。続編…

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ルッキズムの何が問題なのか

 最近よく耳にする「ルッキズム(いわゆる外見至上主義)」は、誤解されたまま使われている傾向があると思う。  この概念の影響で各種ミスコンが廃止になったことから、…

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『オッペンハイマー』映画評

 3月29日(金)公開の『オッペンハイマー』を試写し、キリスト新聞に映画評を寄稿した。下記リンクから全文読めるので紹介したい。  残念ながら本作にも原爆軽視の傾向…

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障害、障がい、障碍……?

障害の社会モデル化  障害を「障害」と書くか「障がい」と書くか「障碍」と書くかについては、様々な意見と立場がある。私個人は「障害」と書くべきだと考えている。なぜ…

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同性愛指向をめぐる「サイドB」への違和感

※書評ではありません。  いのちのことば社から、いわゆる「サイドB」を標榜する書籍『罪洗われ、待ち望む 神に忠実でありたいと願うゲイ・クリスチャン 心の旅』(ウェ…

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人間よりラクに移住できるカモ一家/『FLY!/フライ!』

 東宝東和の試写会で『FLY!/フライ!』を見た。『ミニオンズ』で有名なイルミネーションの完全オリジナルストーリーの新作だ。  “渡り”をしたことがないカモ一家が、…

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「ハイファに戻って」読書会のお知らせ

 「ハイファに戻って」(ガッサーン・カナファーニー 著)の読書会を下記の要領で開きます。参考図書は「ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義」(岡真理 著)。…

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お前にそんな資格はない

恐怖のリハーサル  教会主催のゴスペル・コンサート当日。関係者らはリハーサルに余念がない。会衆席の後方に陣取った牧師が、ワイヤレスマイクを片手に指示を出す。  …

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昔はヤンチャだった牧師

 「昔はヤンチャだったんですよ」牧師は言う。「学校では喧嘩三昧。後輩たちにはタカリ三昧。付き合う女の子は二股三股あたりまえ。校舎の窓は何枚割ったか分かりません。…

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もうひとつの声/『ウーマン・トーキング 私たちの選択』

 『ウーマン・トーキング 私たちの選択』を見た。  キリスト教一派が自給自足で暮らす村で、睡眠薬を飲まされた女たちが夜な夜なレイプされる。被害を訴えても「悪魔の…

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クリスチャンとお焼香

 ミサキが死んだ。  ミサキの家族や友人はあいつが「天国」へ行ったと言う。この世界より良いところへ行ったのだと。だから喜ぶべきだ、と言う人さえいる。しかし私が知…

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ロボットは歌う/『PLUTO』

 『PLUTO』全8話を見た。  1964年の原作(『鉄腕アトム』)を2003年にリメイクしたもののアニメ版だ。今となっては見慣れたプロットが散見される。人間とロボットは見…

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チャーチスクールか、公立学校か

 ブログに以下の質問をいただいた。  小学生になるお子さんを地元の公立学校に入れるか、あるいは遠方のチャーチスクール(教派は聖霊派)に入れるか、迷っていらっしゃ…

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クリスチャンとお金

 教会の解散時、私はまだ30代だった。看護師免許も業務経験もあったので、再就職は難しくなかった。その点は他の成人信徒よりマシだったかもしれない。  しかし当時は貧…

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「牧会が大変で……」と嘆く牧師に耐えられない

「牧会が大変で……」と嘆く牧師に耐えられない

 「牧会が大変で……」と嘆く牧師に違和感がある。

 いわゆる「扱いづらい信徒」や、「問題ばかり起こす信徒」がいるのは分かる。実際苦労しているのだろう。その感情は否定しない。

 けれどその「大変で、」の中身は、例えば「婚前交渉しても良いと考える若者を説得するのが大変で、」とか、「疑問や批判ばかり訴えてくる信徒に答えるのに苦労してて、」とかだったりする。どこが大変なのですか? と正直思う。他人の考

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『失われた週末』で失われたのは

『失われた週末』で失われたのは

『ジョン・レノン 失われた週末』を映画美学校で試写した。

 ジョン・レノンとオノ・ヨーコが別居していた約18ヶ月間の、「失われた週末」と呼ばれる時期に焦点を当てたドキュメンタリー。ジョンの個人秘書兼ヨーコ公認の恋人だったメイ・パンが、「私の物語」として語る。

 本作はポール・マッカートニーとの再会や息子ジュリアンとの再会、ソロ活動の様子など、この時期のジョンを知る上で貴重なエピソードが溢れてい

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『ジョン・ウィック』は4作目で終わっていい

『ジョン・ウィック』は4作目で終わっていい

 キアヌ・リーブス主演の大人気シリーズ『ジョン・ウィック』は4作目で終わっていいと思う。ネタバレすると4作目でジョンが亡くなるので、物理的には終わっている。続編は作れない。けれど制作側がその気になれば「実は生きていた」ことにできるし、5作目が公開されれば既成事実になる。そうなれば誰も文句は言えない(もっともファンの多くは続編を歓迎すると思うけれど)。実際、続編の企画が始動していると聞く。

 私は

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ルッキズムの何が問題なのか

ルッキズムの何が問題なのか

 最近よく耳にする「ルッキズム(いわゆる外見至上主義)」は、誤解されたまま使われている傾向があると思う。

 この概念の影響で各種ミスコンが廃止になったことから、「美醜を競うのはNG=美しさにこだわってはいけない」と取る人が少なくない。それは部分的に正しい。けれど個々人が「綺麗でいたい(綺麗の基準は様々)」と願って実行するのを止めるものではない。

 ルッキズムが問題になるのは、例えば採用面接で明

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『オッペンハイマー』映画評

『オッペンハイマー』映画評

 3月29日(金)公開の『オッペンハイマー』を試写し、キリスト新聞に映画評を寄稿した。下記リンクから全文読めるので紹介したい。

 残念ながら本作にも原爆軽視の傾向がある。広島と長崎の被害を描写しなかったのもそれだ(詳しくは記事を読んでいただきたい)。PRの段階で、同時期に公開された『バービー』とのコラボ(「バーベンハイマー」)がミーム化したのも恐るべき事態だった。欧米の人々に少なからず原爆軽視の

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障害、障がい、障碍……?

障害、障がい、障碍……?

障害の社会モデル化

 障害を「障害」と書くか「障がい」と書くか「障碍」と書くかについては、様々な意見と立場がある。私個人は「障害」と書くべきだと考えている。なぜなら障害は「社会モデル」で考えるべきで、かつ現にこの社会に様々な「障害」が発生しているからだ。「害」の字を使わないと、その深刻さやダメージがうまく伝わらなくなってしまう。

 社会モデルにおいて、障害とそれにまつわる困り事は、障害者本人の

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同性愛指向をめぐる「サイドB」への違和感

同性愛指向をめぐる「サイドB」への違和感

※書評ではありません。

 いのちのことば社から、いわゆる「サイドB」を標榜する書籍『罪洗われ、待ち望む 神に忠実でありたいと願うゲイ・クリスチャン 心の旅』(ウェスレー・ヒル 著)が刊行された。原著は十数年前に刊行されている。なぜ今翻訳されたのだろうか。日本におけるNBUSの動きや、それに対する反発、そして「第三極」として現れた「ドリームパーティ」との絡みを考えてしまう。

 「サイドB」は同性

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人間よりラクに移住できるカモ一家/『FLY!/フライ!』

人間よりラクに移住できるカモ一家/『FLY!/フライ!』

 東宝東和の試写会で『FLY!/フライ!』を見た。『ミニオンズ』で有名なイルミネーションの完全オリジナルストーリーの新作だ。

 “渡り”をしたことがないカモ一家が、カリブ海のジャマイカ目指して約3000kmの旅に出る。カモが勇気と冒険心を持って“渡る”姿を強調して『FLY!/フライ!』という邦題にしたのだと思う。しかし原題は『MIGRATION(移住)』。世界中で起きている移民排斥問題を想起させ

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「ハイファに戻って」読書会のお知らせ

「ハイファに戻って」読書会のお知らせ

 「ハイファに戻って」(ガッサーン・カナファーニー 著)の読書会を下記の要領で開きます。参考図書は「ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義」(岡真理 著)。参加無料です。ふるってご参加ください。

◾️ダンとふみなるの読書会
日 時:2024年2月27日(火)20:00-22:00(Zoom開催)
参加費:無料
課題本:「ハイファに戻って」(ガッサーン・カナファーニー 著)
参考書:「ガザと

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お前にそんな資格はない

お前にそんな資格はない

恐怖のリハーサル

 教会主催のゴスペル・コンサート当日。関係者らはリハーサルに余念がない。会衆席の後方に陣取った牧師が、ワイヤレスマイクを片手に指示を出す。

 「ギターちょっと上げて」
 「コーラスちょっと下げて」
 「バスドラムのマイク、少し離してみて」

 牧師の音響チェックはいつも入念だ。いわく「最高の神様は最高の音響で讃えられなければならない」。けれど私は正直、牧師が調整する前と後の違

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昔はヤンチャだった牧師

昔はヤンチャだった牧師

 「昔はヤンチャだったんですよ」牧師は言う。「学校では喧嘩三昧。後輩たちにはタカリ三昧。付き合う女の子は二股三股あたりまえ。校舎の窓は何枚割ったか分かりません。そんなオレが、今じゃ教会の牧師ですからね。人生、何が起こるか分かりません」
 会衆から拍手が起こる。司会の牧師はウンウン頷く。私はボールペンを走らせる。
 「では、権藤先生が神様に出会って牧師になった経緯を、お聞かせいただきましょうか」司会

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もうひとつの声/『ウーマン・トーキング 私たちの選択』

もうひとつの声/『ウーマン・トーキング 私たちの選択』

 『ウーマン・トーキング 私たちの選択』を見た。

 キリスト教一派が自給自足で暮らす村で、睡眠薬を飲まされた女たちが夜な夜なレイプされる。被害を訴えても「悪魔の仕業」「作り話」などと男たちから言われ、ずっとうやむやにされてきた。しかしある晩、現行犯を見つけたことで、村ぐるみの犯罪だったと判明する。男たちが不在の2日間、女たちは許すか、戦うか、去るかを決めるため話し合う。

 投票の結果、戦うか去

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クリスチャンとお焼香

クリスチャンとお焼香

 ミサキが死んだ。

 ミサキの家族や友人はあいつが「天国」へ行ったと言う。この世界より良いところへ行ったのだと。だから喜ぶべきだ、と言う人さえいる。しかし私が知っているキリスト教の教えに従えば、ミサキは地獄へ行ったはずだ。そこで永遠の責苦にあうはずだ。

 ミサキの葬儀は日曜の午前10時からだと聞いた。教会の礼拝と重なる。休むしかないと思って牧師に連絡した。答えはこうだった。
 「死人を葬ること

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ロボットは歌う/『PLUTO』

ロボットは歌う/『PLUTO』

 『PLUTO』全8話を見た。

 1964年の原作(『鉄腕アトム』)を2003年にリメイクしたもののアニメ版だ。今となっては見慣れたプロットが散見される。人間とロボットは見分けが付かなくなり、記憶は他者によって操作され、中東の怪しげな国が黒幕で、憎悪からは何も生まれず、悪者は最後に改心して自ら犠牲となって世界を救う。

 ゲジヒトを主役にした前半はミステリー仕立て。「完全なA.I.は(人間と同じ

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チャーチスクールか、公立学校か

チャーチスクールか、公立学校か

 ブログに以下の質問をいただいた。

 小学生になるお子さんを地元の公立学校に入れるか、あるいは遠方のチャーチスクール(教派は聖霊派)に入れるか、迷っていらっしゃるとのこと。メリットとデメリットを天秤に掛けるも計りかねているご様子。私は某チャーチスクール(同じく聖霊派)で10年ほど働いたので、その経験をもとに、できるだけ公平にこの問題を考えてみたいと思う。

前提条件

 ただその前に書いておきた

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クリスチャンとお金

クリスチャンとお金

 教会の解散時、私はまだ30代だった。看護師免許も業務経験もあったので、再就職は難しくなかった。その点は他の成人信徒よりマシだったかもしれない。

 しかし当時は貧困を極めていて、銀行預金は数ヶ月間、プラスとマイナスの間を行ったり来たりしていた。教会が早々に解散してくれなかったら破綻していたと思う。最悪な状況とギリギリセーフな状況が混在する、変な期間だったと振り返って思う。いや、それ自体が生存バイ

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