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童話のようなもの

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童話や児童文学みたいなものが書きたかったのです。
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記事一覧

ショートショート:オバケレインコート

黒猫のつぶちゃんは、工藤さんちの車庫で雨宿りをしていました。 工藤さんの家には、ケンスケ…

矢口 慧
4週間前
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ショートショート:ぐっじょぶ!粉砂糖ちゃん!

 粉砂糖ちゃんって知ってる?  その名のとおり、粉砂糖の妖精…、みたいなもの。粉砂糖を必…

矢口 慧
3か月前
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ショートショート:一輪挿しのある部屋

 みもりさんが小さな眩しい液晶から顔をあげると、もうすっかり暗くなっていた。時計を見てた…

矢口 慧
3か月前
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ショートショート:夜光おみくじ

ぼくは家を飛び出した。 ママの花瓶を割っちゃった。ばれたらどうしよう。 もう暗かったけど…

矢口 慧
4か月前
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超短編小説:TATSU

 遠い遠い雲の上、分厚い書物を挟んで、一羽のうさぎと一頭の龍が座っていた。 「…引き継ぎ…

矢口 慧
4か月前
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超短編小説:ツキヒコ

 今宵は満月、明るい月があたりを照らしている。キジトラ猫のツキヒコは、夜空を観察すること…

矢口 慧
4か月前
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超短編小説:夜空、売ります

 そのままびんに閉じこめて、ベッドのうえに飾っておきたいくらいの、みごとな夜の色でした。  しかし、そんな夜空のしたを歩く青年の心は晴れません。どんなに今日の夜空が綺麗でも、明日の朝の空が、素敵だとはかぎらないからです。  こんなにみごとな夜ならば、自分ごと、この夜空をどこかに仕舞っておけたら良いのに、と思いました。 「おにいさん、そこの、おにいさん」  声がして、青年は足を止めました。きょろきょろとあたりをみると、すぐそばの地面におばあさんがひとり、座っていました。

ショートショート:秋の空時計

 大きなヤマボウシの木がありました。黒猫のつぶちゃんは、いちばん低いところにある葉と仲良…

矢口 慧
7か月前
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短編小説:笛の音色に包まれて

 少年は、いつも森のなかで笛を吹いていました。家で吹けば父ちゃんから「そんなことよりも勉…

矢口 慧
8か月前
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ショートショート:夏休みは、終わらない!

 よし…。これで全員集まったな。  みんなに来てもらったわけだが、おれたちがどういう仲間…

矢口 慧
8か月前
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ショートショート:みみちゃんとコハルさん

 誰にでも、どう考えてもあり得ないことなのに、なぜかはっきりと記憶に残っている、そんな出…

矢口 慧
8か月前
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超短編小説:夏のただいま

 朝から蝉がやかましく鳴いている。網戸から風は入ってくるけれど、生ぬるい。夏の朝だ。 「…

矢口 慧
9か月前
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超短編小説:梅雨明けの森

「ああ、それは恋ですね」  なかなか梅雨の明けない七月、外ではざあざあと大雨が降っていま…

矢口 慧
10か月前
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ショートショート:ある事故の話

 とある晩のことです。  どーん、という大きな音で、少年は目を覚ましました。何か大きなものがぶつかったような音です。少年はベッドから飛び出して、窓から外を見てみましたが、何もわかりません。  お父さん、お母さん、兄さんも音に驚いて起きてきましたが、やっぱり何があったのかはわかりませんでした。  次の日、学校に行くと、みんなが昨晩の大きな音について話していました。いちばん遠くに住んでいる女の子もその音を聞いたそうです。  そしてようやく、昨晩の音の正体がわかりました。  ど