ムツコ

ムツコ=動物が好きで、そのウンチクを傾けるため、女版ムツゴロウとしてつけられたあだ名。…

ムツコ

ムツコ=動物が好きで、そのウンチクを傾けるため、女版ムツゴロウとしてつけられたあだ名。現在、要介護5 認知症の義母と夫とオカメインコと暮らす。

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以心伝心

身の回りの介助を要する義母は認知症で、一日のうちでも気分が上がったり下がったりする。 ご機嫌がよろしくない時は「イヤッ」「キライッ」とこちらの介助を拒否。 心の中…

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春になり、散歩に出た。 認知症の義母が乗る車椅子を押しながら、琵琶湖畔の遊歩道をゆっくり歩く。 心地よい風を浴びて、義母は静かに犬のぬいぐるみを撫でている。 「日…

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認知症の義母は、状況が理解できないときや、混乱したとき、「アホ」と言う。 今朝も、‘朝だから着替える’ という行為にピンとこず、軽く混乱していた。 「あんたはア…

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認知症の義母は上手く力めず、排便に時間がかかる。「もう、早く出てって言うて。」と言うので、「早く出てきてくださーい。お願いしまーす。」と義母のお尻に向かって叫ぶ。
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このところ、暑かったり涼しかったりで、認知症の義母に着せる、衣服の調整が難しい。 「暑い」や「寒い」は自分で言えるものの、すっかり汗だくになってからだったり、手…

ムツコ
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以心伝心

以心伝心

身の回りの介助を要する義母は認知症で、一日のうちでも気分が上がったり下がったりする。
ご機嫌がよろしくない時は「イヤッ」「キライッ」とこちらの介助を拒否。
心の中で(ハイハイ、お嬢様~)と言いながら執事になりきる私。

ある日、「銀行に行ってからスーパーで買い物しようね」と車椅子を押して玄関まで出たところで、義母が、

「馬車は来ないの?」心の声を漏らしたつもりはないのに、お嬢様になりきる義母。

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全部見てたよ

全部見てたよ

 近頃、認知症の義母はよく眠る。
 あまり言葉も発せず、話しかけても返事がない。
 デイサービスのない日の午後、このまま家の中でウトウトしてるのも良くないな、と思い、マンションのロビーに出た。
 大きなガラス越しに、外の景色を眺めながらジュースを飲んだ。
 けれど、数口飲むと、義母は再び眠ってしまった。
 家にいても外に出ても同じやったなーと、ちょっとガッカリしながら、でも、義母の主治医は、「身体

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真心を伝える

真心を伝える

 認知症の義母と行ったカフェで、年配の女性から話しかけられた。

 「うわぁー、ずいぶん久しぶりですねぇ。お元気そうで良かったー。私はSです。覚えてらっしゃらないかしら?ここでよくお話してたのよ。入院されたことは聞いていたけれど、それ以降お会いしてなかったから、どうされているか案じていたの。あー、会えて嬉しいわぁ。」

 義母がまだ認知症症状が軽く、歩行器を利用して自分で動けていた頃の知り合いらし

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存在意義

存在意義

 認知症の義母がデイサービスから帰ってきた。
 同じマンションに住む方も、施設で生活されているお母様に会いに行かれていて、ちょうど帰って来られた。
 「もう、私のことなんかわからないのよ。」と少しくたびれたご様子だった。
 私は義母の傍にいる経験上、「そんなことないですよ、わかっていても、こちらにわかるような反応ができないだけですよ。」と言った。
 「そうかなあ?まあ、いいや、生きていてさえくれた

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特別な言葉

特別な言葉

 認知症の義母がデイサービスから帰ってきた。
 でも私は、マンションのお友達とまだお話がしたかったので、ロビーで義母を交えながらお友達と続きの話をした。
 お友達は介護経験者で、義母にも優しく話しかけてくれている。
 義母もニコニコしている。
 けれども、話を終えて自宅へ戻ると、義母の表情は曇っていて、私に「アホ」と言った。
 やっばりデイサービス帰りだから疲れていたのだ。
ただ、マンションのお友

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この人は…

この人は…

 誰にでも、スイッチの入らない日はある。
 認知症の義母はなおさら、反応が薄い日が多い。
 最近は、なかなか言葉が出てこなくて、上手く会話が噛み合わないことがほとんどである。
 今朝の義母も、話しかけても上の空。
エレベーターに乗り合わせた、とんがり帽子を被った5歳くらいの可愛いらしい男の子に対しても無反応。
以前の義母なら、絶対に話しかけていただろうに。
まるで義母の精神だけ、異次元空間にあるよ

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感情移入

感情移入

認知症の義母を乗せた車椅子を押して、スーパーへ行った。
 会計を済ませた商品の袋詰めをしていると、生後半年くらいの赤ちゃんが、同じく袋詰めをしているママの隣に置かれたベビーカーの中で泣いている。小さな手をギュッと握って、力一杯泣いている様子は、可愛いらしくて目尻が下がる。
 義母は、以前20年ほど産婦人科医院で働いていたこともあるし、赤ちゃんが大好きだ。久しぶりに可愛い赤ちゃんを見たら元気が出るだ

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後悔

後悔

春になり、散歩に出た。
認知症の義母が乗る車椅子を押しながら、琵琶湖畔の遊歩道をゆっくり歩く。
心地よい風を浴びて、義母は静かに犬のぬいぐるみを撫でている。
「日向ぼっこですか?」不意に、紳士から声がかかった。
「私の母親は1月に逝ってしまいましてね。施設に入っていたから、コロナのせいでなかなか会えませんでした。私も母を連れ出して、こんな所を散歩させてやりたかったな、と見てて思いました。」とその紳

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忘れへん

忘れへん

 認知症の症状が進んでしまった人のことを、「家族や知り合いのこともわからない状態」という言い方をしてきた。
 けれど、それは間違っている。
 家族や知り合いのことがわからないのかどうかは、本人にしかわからない。
わかっていも、他者から見て、わかっているような反応ができないだけなのかもしれない。
「家族や知り合いに会っても、それらしき反応ができなくなった状態」と表現するのが、きっと正しい。

 認知

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一生分

一生分

同居している認知症の義母が誕生日を迎え、義母のお友達が、お祝いのメールを送ってくださった。 
義母は、なかなか言葉が出てこなかったり、言いたいことと違う言葉が出たりするけれど、電話しても構わないか、と尋ねた。

すると、義母よりも若いそのお友達は、「私も言いたい言葉が出てこなくて焦るばかり。おかあさんも私も、弾丸トークするタイプなので、もう一生分を喋り終えたのかもしれないね。」と返答された。

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スイカと決意

スイカと決意

同居する認知症の義母の好物はスイカだ。
私はそれを知っている。

義母はもう、自分で食べることができないため、介助して、スイカを一切れずつ食べさせるよりは、ミキサーでガーッと潰して、コップで飲ませるほうが、たくさん早く摂れる。
なにより、スイカは水分補給にも最強だ。

今日の夕食後のデザートもスイカジュースにした。
ちょっと口をつけて、「美味しい」と義母は言い、半分までゴクゴク飲んだ。
「美味しい

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言い負かす

言い負かす

認知症の義母は、状況が理解できないときや、混乱したとき、「アホ」と言う。

今朝も、‘朝だから着替える’ という行為にピンとこず、軽く混乱していた。
「あんたはアホや。何にもわかってないやないの!」と繰り返し、「仏さんがあんたのことを笑てはるわ!」と言った。

「えっ~!? 仏さん笑かしたん?私、アホでよかったわぁー。」と私はアホの舞を舞ってみた。

私が喜ぶので不安になった義母が、
「ほんなら私

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問題点のずれ

問題点のずれ

気が付けば、認知症の義母につけたマスクがずれている。
マスクの形を変えたらずれにくくなるのじゃないかな?

デイサービスのお迎えに来てくださった介護士さんに、
「いつもマスクがずれて、鼻が見えてるでしょう?この立体型マスクにしたほうが良いと思うんですよぉ。」とドヤ顔で言った。

すると、「鼻が見えるとかの問題ちゃいますよ。いつもねぇ、指に引っ掛けてうまーく外してクルクル回してはるんですよぉ。」と、

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同世代の人

同世代の人

認知症の義母との会話が成り立たない。
義母「ここをこうして、折ってええか?」
私「うん、えーっと、何を折るの?」
義母「それは…、言われへん。」
私「そうか、ええんとちゃうか? 知らけんど。」
という具合だ。

それが先日、居住しているマンションのロビーで出会った、義母の同世代の女性に
「私な、美容室行ってきてん。」と話しかけられると、
「ええやん。似合ってるやん。」と答えている。
更に、
「お宅

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認知症の義母は上手く力めず、排便に時間がかかる。「もう、早く出てって言うて。」と言うので、「早く出てきてくださーい。お願いしまーす。」と義母のお尻に向かって叫ぶ。
マンガみたいな朝。

遠慮

遠慮

このところ、暑かったり涼しかったりで、認知症の義母に着せる、衣服の調整が難しい。
「暑い」や「寒い」は自分で言えるものの、すっかり汗だくになってからだったり、手足が冷えきってしまってから言うので、慌てることがある。

昨晩も、掛け布団をしっかり被ったままで、暑かったのだろう。うっすら汗をかいていた。
それで、寝起きが悪かったのだ。

「起こし方が悪い!」と怒っていた。
「ここで働いている人は何歳く

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