2-4 レイモンド・チャンドラー『さらば愛しき女よ』
レイモンド・チャンドラー『さらば愛しき女よ』 Farewell, My Lovely 1940
レイモンド・チャンドラー Raymond Chandler (1888-1959)
幻の女が群集のヴェールをとおして現われて消えるという物語は、チャンドラーのケースでは、もう少し通俗的なドラマを借りて展開される。男は八年の刑務所暮らしを終えてもどってくる。女は消えている。場末の歌手という過去の女の痕跡はどこにもない。大鹿マロイとヴェルマの物語は、男の側からみれば一つの純愛ドラマだ