ヒデヨシ

札幌で暮らすオヤジです。テレビの仕事をしています。世界を彷徨うような映画や小説が好きで…

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札幌で暮らすオヤジです。テレビの仕事をしています。世界を彷徨うような映画や小説が好きです。映画レビューhttps://hideyosi719.blog.fc2.com/

最近の記事

『落下の解剖学』ジュスティーヌ・トリエ~真実は藪の中 音と犬に導かれて

画像(C)LESFILMSPELLEAS_LESFILMSDEPIERRE 犬に始まり犬に終わる。ボールが階段を落ちてくる音とともに犬が階段を下りてきて、ボールを咥えて階段をまた上がっていく。息子は犬をシャンプーし、犬と散歩に出て行く。息子のダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)は目が不自由なようだ。犬が道を先導する。そして、ラストシーンは、犬が寝床にジャンプし、小説家のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)の横に添い寝するシーンで終わる。なんだろう?このラストの犬の動きは・・・と

    • クリント・イーストウッド監督デビュー作『恐怖のメロディ』~名曲とともに「声」と「視線」が迫る恐怖~

      クリント・イーストウッドのデビュー作のミステリー。女たらしのイケメンのラジオDJが、一夜限りと割り切ってベッドを共にした女性からストーカー的につきまとわれ、恐怖のうちに追い込まれていく心理サスペンス。 カリフォルニアにある海辺の田舎町。空撮で海辺の田舎町が映し出され、断崖に建つ一軒の家の前で崖を見下ろす一人の男が立っている。クリント・イーストウッド演じるデイブは、深夜ラジオの人気DJだ。荒波と崖下の岩場を見下ろすサスペンス的な映像が挿入され、この場所が結局ラストでも使われる

      • 『エル・ドラド』ハワード・ホークス×ジョン・ウェインの傑作西部劇

        TM,® &Copyright ©2003 By Paramount Pictures All Rights Reserved ハワード・ホークスの『リオ・ブラボー』とも似ている西部劇。ジョン・ウェイン主演の西部劇で、『リオ・ロボ』と合わせてホークス西部劇三部作と言われているらしい。『リオ・ブラボー』と似ているというのは、登場人物の役回りが似ているのだ。 ジョン・ウェインの相棒役として、『リオ・ブラボー』のディーン・マーチンをロバート・ミッチャムが演じており、どちらもアル

        • 『スペースカウボーイ』クリント・イーストウッド~おじいちゃんたちが宇宙へ

          (C) 2000 Warner Bros. All rights reserved. 三宅唱監督の『夜明けのすべて』で上白石萌音によって「おじいちゃんたちが宇宙に行く映画」と語られていたクリント・イーストウッドの『スペースカウボーイ』。山添(松村北斗) のように見ていなかったので見てみた。 確かに、おじいちゃんたち4人組が宇宙へ行く話だった。1958年、アメリカ空軍の「チーム・ダイダロス」は初の有人宇宙飛行のために厳しい訓練を受けていた。それにもかかわらず、NASAは初め

        『落下の解剖学』ジュスティーヌ・トリエ~真実は藪の中 音と犬に導かれて

        • クリント・イーストウッド監督デビュー作『恐怖のメロディ』~名曲とともに「声」と「視線」が迫る恐怖~

        • 『エル・ドラド』ハワード・ホークス×ジョン・ウェインの傑作西部劇

        • 『スペースカウボーイ』クリント・イーストウッド~おじいちゃんたちが宇宙へ

          映画『渇水』高橋正弥~水(潤い)を必要とする関係~

          『渇水』©2022「渇水」製作委員会 2023年公開の映画でわりと評判が良かった日本映画。監督の高橋正弥は、市川準、相米慎二、根岸吉太郎、宮藤官九郎などの作品で助監督を務めてきたベテラン映画人。白石和彌監督が初プロデュースとなった本作は、業界内で「凄い脚本があるらしい」と話題になっていたが、 10年近く映画化されなかった脚本らしい。原作は河林満の「渇水」。 雨がなかなか降らず、水不足になった夏の前橋市の水道局の職員の話。水のない渇きが、生活の潤いを失くし、人生の渇きと結

          映画『渇水』高橋正弥~水(潤い)を必要とする関係~

          映画『クリスティーン』B級ホラーの巨匠・ジョン・カーペンター監督~擬人化した車の狂気~

          車を擬人化した映画はこれまでにもいろいろある。擬人化まではいかなくても、車は数々の映画の舞台装置であり、運動であり、アクションであり、デート場所であり、相棒のような存在でもあり、映画には欠かせないものであった。最近でも車とセックスする珍妙な映画『TITANE チタン』があったし、自動車の事故とセックスを絡めたデヴィット・クローネンバーグの『クラッシュ』のような変態的な映画もあった。レオス・カラックスの『ホーリー・モーターズ』の大きなリムジンもまた映画に欠かせない舞台装置になっ

          映画『クリスティーン』B級ホラーの巨匠・ジョン・カーペンター監督~擬人化した車の狂気~

          『アリゾナ・ドリーム』エミール・クストリッツァ~若きジョニーデップが初々しい…飛ぶ夢と飛べない現実~

          (c)1993 STUDIOCANAL – Hachette Première & Cie. All Rights Reserved. ヴィム・ヴェンダースの『パリ・テキサス』、ビクトル・エリセの『エル・スール』と並んで私の大好きな映画『アンダーグラウンド』(1995年)を撮ったエミール・クストリッツァ監督の1992年の作品。旧ユーゴスラビアのサラエボ出身のエミール・クストリッツァがアメリカのアリゾナを舞台に英語で作っており、何もない不毛な大地と滑稽な人間たちのドタバタ劇が

          『アリゾナ・ドリーム』エミール・クストリッツァ~若きジョニーデップが初々しい…飛ぶ夢と飛べない現実~

          映画『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』~寓話的な詩的な映像~

          (C)DFFB, Sakdoc Film, New Matter Films, rbb, Alexandre Koberidze ジョージア(旧グルジア)で製作された寓話のような美しく不思議な映画だ。 光と影、昼と夜の街、カフェや公園や川や緑の街並み、そして広場でサッカーで遊ぶ子供たちやW杯サッカー観戦で盛り上がる大人たち、犬たち。それぞれが思い思いに人生を楽しんでいる姿が美しい映像とともに映し出される。 ジョージアの古都クタイシ 。男と女が学校の校門前ですれ違ったとき

          映画『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』~寓話的な詩的な映像~

          ドラマ「ユーミンストーリーズ」第3週『春よ、来い』(NHK)が素晴らしいクオリティだった

          画像©NHK うまく言葉にできないようなドラマや映画が好きだ。うまく物語を語れないもの、言葉にできないもの、そういうドラマや映画の方が表現が豊かだということだ。単純な言葉で要約できるようなものは、その程度のものだ。いくら言葉を尽くしても、その映像の魅力は伝えきれないようなものこそ魅力的なドラマであり、映画である。それでもその良さをなんとか言葉で伝えようとしたくなる。そういう魅力あるドラマに出会った。ユーミンストーリーズ、第3週『春よ、来い』だ。とにかくキャスティングが素晴ら

          ドラマ「ユーミンストーリーズ」第3週『春よ、来い』(NHK)が素晴らしいクオリティだった

          『抜き射ち二挺拳銃』ドン・シーゲルの西部劇~悪女にコロッと騙される保安官

          ドン・シーゲル監督は、ラオール・ウォルシュやハワード・ホークスなどの下で助監督を務め、ドン・シーゲルの弟子と言えば、クリント・イーストウッドやサム・ペキンパー―がいる。B級低予算映画の早撮り職人監督として、数多くの作品を手がけた。 ゴールドラッシュに沸くカルフォルニアで、金の採掘現場を荒らすギャング団一味に父親を殺された青年ルーク(オーディ・マーフィ)は仇を討つべく町にやってきた。保安官のタイロンス(ティーブン・マクナリー)はかつて稲妻と呼ばれた早撃ちだったが、強盗団に撃た

          『抜き射ち二挺拳銃』ドン・シーゲルの西部劇~悪女にコロッと騙される保安官

          西部劇『限りなき追跡』ラオール・ウォルシュ~女性に翻弄される男たち

          D.W・グリフィスのもとで映画を学んだのがラオール・ウォルシュ。西部劇から犯罪映画、恋愛映画やコメディまで様々なジャンルの映画を撮った職人監督である。 BS-NHKで放送されたこの作品は、1953年の西部劇。婚約者のドナ・リードを強盗一味に連れ去られたロック・ハドソン。駅馬車を襲われ、銃で撃たれて死んだと思われたが一命をとりとめ、フィル・ケイリーらの強盗団一味の後を追いかける追跡劇。南北戦争後の荒んだ南部。強盗団のフィル・ケイリーは、南部ではあまり見かけない美しき白人女性ド

          西部劇『限りなき追跡』ラオール・ウォルシュ~女性に翻弄される男たち

          映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』金子由里奈~「やさしさ」の呪縛と対話

          画像(C)映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」 『町田くんの世界』(19/石井裕也)に出ていた 細田佳央太が主演。駒井連は『いとみち』(21/横浜聡子)に出演していた女の子。もう一人、『麻希のいる世界』(22/塩田明彦)の新谷ゆづみの3人を中心に描かれる。 ぬいぐるみと話をすることで、他者と関わらず、他者を傷つけず、傷つけられないように、自分の気持ちをぬいぐるみだけにぶつけて心の安定を保っている若者たちがいる。現代はこんなにも脆く弱く繊細で、他者との関係を築くことに難

          映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』金子由里奈~「やさしさ」の呪縛と対話

          『ちひろさん』今泉力哉~海との境界を歩く生と死を繋ぐ不思議な女性~

          (C)2023 Asmik Ace, Inc. (C)安田弘之(秋田書店)2014 有村架純の魅力があふれた映画だ。ちひろという女性はつかみどころがない。元風俗嬢でお弁当屋さん。誰とも分け隔てなく優しいし、手を差し伸べ、声をかける。特にこの世の中で生きづらさを抱えている人たちに寄り添う。ホームレスの鈴木慶一、家族との時間が息苦しい女子高生のオカジ(豊嶋花)、シングルマザーに育てられている口の悪い小学生マコト(嶋田鉄太)、不登校のマンガ好きの無口な女子高生(長澤樹)、トランス

          『ちひろさん』今泉力哉~海との境界を歩く生と死を繋ぐ不思議な女性~

          『遺灰は語る』パオロ・タヴィアーニ~イタリア戦後史と遺灰の旅

          画像(C)Umberto Montiroli タヴィアーニ兄弟は、『父/パードレ・パドローネ』(77)、 『サン★ロレンツォの夜』(82)、『笑う男』(98)など何作かは観ている。特に『サン★ロレンツォの夜』は美しい映像詩のようで印象に残っている。イタリアの厳しい自然や農村地帯に生きる素朴な人々を土着的に、時には演劇的、寓話的に描いている。本作は、91歳の弟のパオロ・タヴィアーニが兄の ヴィットリオの死後、初めて単独で監督した作品。「兄ヴィットリオ・タヴィアーニに捧ぐ」とい

          『遺灰は語る』パオロ・タヴィアーニ~イタリア戦後史と遺灰の旅

          『ブラッド・シンプル/ザ・スリラー』ジョエル・コーエン〜コーエン兄弟の緻密なサスペンスホラーのデビュー作

          コーエン兄弟、ジョエル・コーエン監督の1984年のデビュー作を自ら再編集してブラッシュアップ。CS放送「ザ・シネマ」で放送されたもの。闇と光、暗がりの中で疑心暗鬼になった人物たちの姿を映像でつづっていくサスペンス・スリラー。余計な台詞がなく、人物関係もいたってシンプルで登場人物も少ない。だが騙し合いやフェイク写真も使いながら、死んだと思っていた男が動き出したり、私立探偵などのキャラクターも不気味で際立っている。ライターや拳銃など小道具も効果的。コーエン兄弟らしい、緻密に演出さ

          『ブラッド・シンプル/ザ・スリラー』ジョエル・コーエン〜コーエン兄弟の緻密なサスペンスホラーのデビュー作

          映画『或る夜の出来事』フランク・キャプラ~ロマンチック・コメディの古典的名作~

          こういう懐かしのハリウッドの名作は安心して楽しめる。そして多くの映画の原点がここにはある。ロマンチック・コメディの傑作たる所以である。 まず気づくのは、『ローマの休日』(1953年)がこの映画をアレンジして作ったということがよくわかる。これは大富豪の令嬢が身分を隠して新聞記者と旅をする物語。『ローマの休日』は、大富豪の令嬢が王女に変わっただけだ。新聞記者はスクープ目当てに令嬢と極秘裏に旅をしつつ、恋心が芽生えてしまうというストーリーはほとんど同じである。また『卒業』(196

          映画『或る夜の出来事』フランク・キャプラ~ロマンチック・コメディの古典的名作~