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話題作『バービー』グレタ・ガーウィグ~理想化された女性像の虚実~
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グレタ・ガーウィグ監督は、『ストリート・オブ・マイライフ わたしの若草物語』が面白かったので、期待して見た話題作だが、それほどでもなかった。脚本にガーウィグの夫であるノア・バームバック(『フランシス・ハ』、『マーゴット・ウェディング』など)が入っている。
いちばん驚いたのが、ライアン・ゴズリングが
二大俳優が対峙する犯罪映画『ヒート』マイケル・マン監督の名作
アル・パチーノがロサンゼルス市警の刑事、ロバート・デ・ニーロが犯罪集団のボス、「コインの裏表」のように二人の役者が対峙する。どっちが刑事でどっちが犯罪者か分からないほど、二人はよく似ている。刑事のアル・パチーノは家庭を顧みず、昼も夜も犯罪者を追いかけているため、結婚にも失敗し、二度目の家庭もうまくいっていない。ロバート・デ・ニーロはこれまで孤独を貫いてきたが、犯罪集団の仲間たちはそれぞれパートナー
もっとみる映画『ミューズは溺れない』淺雄望~多様な生を模索する美術部の青春~
画像(C)カブフィルム
万田邦敏監督や大九明子監督のもとで助監督など映画制作を学んだ期待の新鋭、淺雄望監督の初の長編作品。高校の美術部に所属する3人の女子高生を中心に多様な生き方を模索し、葛藤する瑞々しい青春映画。
出演している女の子たちがとにかくいい。人を好きになったことがない朔子(上原実矩)は、親友の栄美(森田想)に彼女が思いを寄せる野球部の男の子が朔子のことを好きなようだと告げられても、
クリント・イーストウッド監督デビュー作『恐怖のメロディ』~名曲とともに「声」と「視線」が迫る恐怖~
クリント・イーストウッドのデビュー作のミステリー。女たらしのイケメンのラジオDJが、一夜限りと割り切ってベッドを共にした女性からストーカー的につきまとわれ、恐怖のうちに追い込まれていく心理サスペンス。
カリフォルニアにある海辺の田舎町。空撮で海辺の田舎町が映し出され、断崖に建つ一軒の家の前で崖を見下ろす一人の男が立っている。クリント・イーストウッド演じるデイブは、深夜ラジオの人気DJだ。荒波と崖
『エル・ドラド』ハワード・ホークス×ジョン・ウェインの傑作西部劇
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ハワード・ホークスの『リオ・ブラボー』とも似ている西部劇。ジョン・ウェイン主演の西部劇で、『リオ・ロボ』と合わせてホークス西部劇三部作と言われているらしい。『リオ・ブラボー』と似ているというのは、登場人物の役回りが似ているのだ。
ジョン・ウェインの相棒役として、『リオ
『スペースカウボーイ』クリント・イーストウッド~おじいちゃんたちが宇宙へ
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三宅唱監督の『夜明けのすべて』で上白石萌音によって「おじいちゃんたちが宇宙に行く映画」と語られていたクリント・イーストウッドの『スペースカウボーイ』。山添(松村北斗) のように見ていなかったので見てみた。
確かに、おじいちゃんたち4人組が宇宙へ行く話だった。1958年、アメリカ空軍の「チーム・ダイダロス」は初
映画『クリスティーン』B級ホラーの巨匠・ジョン・カーペンター監督~擬人化した車の狂気~
車を擬人化した映画はこれまでにもいろいろある。擬人化まではいかなくても、車は数々の映画の舞台装置であり、運動であり、アクションであり、デート場所であり、相棒のような存在でもあり、映画には欠かせないものであった。最近でも車とセックスする珍妙な映画『TITANE チタン』があったし、自動車の事故とセックスを絡めたデヴィット・クローネンバーグの『クラッシュ』のような変態的な映画もあった。レオス・カラック
もっとみる『アリゾナ・ドリーム』エミール・クストリッツァ~若きジョニーデップが初々しい…飛ぶ夢と飛べない現実~
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ヴィム・ヴェンダースの『パリ・テキサス』、ビクトル・エリセの『エル・スール』と並んで私の大好きな映画『アンダーグラウンド』(1995年)を撮ったエミール・クストリッツァ監督の1992年の作品。旧ユーゴスラビアのサラエボ出身のエミール・クストリッツァがアメリカのア
ドラマ「ユーミンストーリーズ」第3週『春よ、来い』(NHK)が素晴らしいクオリティだった
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うまく言葉にできないようなドラマや映画が好きだ。うまく物語を語れないもの、言葉にできないもの、そういうドラマや映画の方が表現が豊かだということだ。単純な言葉で要約できるようなものは、その程度のものだ。いくら言葉を尽くしても、その映像の魅力は伝えきれないようなものこそ魅力的なドラマであり、映画である。それでもその良さをなんとか言葉で伝えようとしたくなる。そういう魅力あるドラマに出会っ
西部劇『限りなき追跡』ラオール・ウォルシュ~女性に翻弄される男たち
D.W・グリフィスのもとで映画を学んだのがラオール・ウォルシュ。西部劇から犯罪映画、恋愛映画やコメディまで様々なジャンルの映画を撮った職人監督である。
BS-NHKで放送されたこの作品は、1953年の西部劇。婚約者のドナ・リードを強盗一味に連れ去られたロック・ハドソン。駅馬車を襲われ、銃で撃たれて死んだと思われたが一命をとりとめ、フィル・ケイリーらの強盗団一味の後を追いかける追跡劇。南北戦争後の
映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』金子由里奈~「やさしさ」の呪縛と対話
画像(C)映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」
『町田くんの世界』(19/石井裕也)に出ていた 細田佳央太が主演。駒井連は『いとみち』(21/横浜聡子)に出演していた女の子。もう一人、『麻希のいる世界』(22/塩田明彦)の新谷ゆづみの3人を中心に描かれる。
ぬいぐるみと話をすることで、他者と関わらず、他者を傷つけず、傷つけられないように、自分の気持ちをぬいぐるみだけにぶつけて心の安定を保っ