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「児童虐待の背景と現状、対策」      ~1人でも多くの子供を救うために私達には何ができるか~

残念な事に全ての親子が強い絆と愛情を持ち、仲良く手を取り合って暮らせている訳ではありません。中には、暴力や暴言、育児放棄などの児童虐待が日常茶飯事に起きている家庭もあります。子供を虐待から守るためには私達一人一人が虐待についての関心や意識を高めると共に、虐待に関する知識を身につける必要があります。今回は、虐待とは何か、虐待に関する法的規制、虐待が引き起こす子供への影響、虐待が起こる背景や現状虐待に気づくヒント、虐待を見つけた時の対処法やNG行為などを皆さんに紹介していきたいと思います。児童虐待について深く知りたい人は写真と文章をセットで、時間がなくてすぐに情報を得たい人は写真のみをご覧下さい。

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児童虐待とその種類

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児童虐待とは、児童の周りにいる大人が18歳未満の子供に対し、身体的外傷または心理的外傷を及ぼす恐れがある行為(繰り返しあるいは習慣的に暴力をふるったり、冷酷・冷淡な接し方をするなど)を行う事を言います。

虐待の種類は大きく分けると「身体的虐待」、「性的虐待」、「ネグレクト」、「心理的虐待」の4つがあります。

身体的虐待は殴る、蹴る、叩く、激しく揺さぶる、故意に火傷を負わせるなどが該当します。性的虐待は「本人の拒否があるにも関わらず、親が子供に性的行為を行う」、「子供に性的行為を行うように強く要求する」、「性的行為を無理矢理見せる」などが該当します。

ネグレクトは「長時間子供を外や家の中に置き去りにする」、「不潔な服を着させる」、「長期間に渡って同じ服を着させる」、「食事を与えない」などが該当します。

心理的虐待は「暴言」、「無視」、「言葉での脅し」、「兄弟間での差別 (例: 兄には食事を与えない。一方で弟には豪華な食べ物を与えるなど)」、「言葉での脅し」、「過干渉 (親の意のままに子供を行動させる事)」などが該当します。他にも、「他の子と比較をして、自分の子供を非難したり批判したりする行為 (例: 「クラスの〇〇くんは成績が良くて羨ましい。それに比べてお前はダメなやつだ!」などという発言をする)」なども該当します。


児童虐待防止法

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現在の日本では、子供の権利や身の安全、健やかな成長、子供の虐待の防止や早期発見、児童の権利などを守る事を目的に、児童虐待に関する法律が制定されています。それが児童虐待防止法です。児童虐待防止に関する法律には、児童虐待は「身体的虐待」、「性的虐待」、「ネグレクト」、「心理的虐待」である事が明記されています。さらに2020年4月に児童虐待防止法が改正され、親のしつけに体罰(叩く、蹴る、殴る)などを用いる事が禁止されました。

↓六法全書の「児童虐待防止に関する法律」の項目を参考に分かりやすくまとめるとこうなります。

※第一条は前置きなので省略します。

第二条 : 児童虐待とは保護者がその監護する子供(18歳に満たないもの)に行う以下の行為である                             1. 外傷が生じるまたはその恐れがある暴行を振るうこと                                           2. わいせつな行為をするまたはさせること                 3. 子供の発達を妨げるような著しい減食、長時間の放置、または別の同居人による1〜4の行為や保護者としての監護を著しく怠ること            4. 児童に対する著しい暴言または著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力やその他児童に対する著しい心理的外傷を与えること

第三条 : 何人も児童に対して虐待をしてはならない

*第四条は国や地方公共団体の事について書かれているので省略

第五条: ①〜③ 児童虐待の早期発見等について                学校、児童施設、その他児童の福祉に関連のある団体の者は児童虐待を発見しやすい立場にある事を自覚し、早期発見に努め、国及び地方公共団体の施策に協力しなければならない。また、上記の施設や団体は児童及び保護者に対して児童虐待のための教育、啓発に努めなければならない。

第六条: 児童虐待の通告
1,児童虐待を発見した者は、速やかに都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
2,前項の規定による通告は児童福祉法第二十五条第一項の規定による通告とみなして、同法の規定を適用する。
3,刑法の秘密漏示罪の規定とその他の守秘義務に関する法律の規定は第一項の規定による通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない

これらの条文から分かる通り、子供は大人からの暴力や過度な干渉を受けずに心身共に健康でいる事を法律によって保証されています。したがって、児童虐待をした大人は犯罪になり、法律によって裁かれる事になります。


児童虐待をした場合の刑罰

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暴力を振るって児童に外傷が生じた場合は傷害罪(刑法第204条)になり、15年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金又はその両方が課されます。傷害罪は児童の怪我の程度や悪質性によって刑の重さが変わります。一方、暴力を振るって児童に外傷が生じなかった場合は暴行罪(刑法第208条)になります。暴行罪は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、又は拘留もしくは科料です。

暴行、脅迫などによって子供に物事を脅迫したり、実際に行わせたりした場合は強要罪(刑法第233条)になります。また子供を屋外に長時間立たせたり、子供をどこかに置き去りにするなどして折檻した場合も強要罪に該当する事があります。強要罪は3年以下の懲役が課されます。強要罪の特徴は懲役刑のみで罰金刑がないという事です。したがって強要罪の罪で裁かれた場合、懲役刑以外の選択肢はない事から、犯罪の中でも比較的重い罪である事が分かります。

監護者(子どもと生活を共にして身の回りの世話をする者)という立場を悪用して子供にわいせつ行為や性交等行為などをした場合には監護者わいせつ・監護者性交罪(刑法第179条)になります。監護者わいせつ罪の場合は懲役6ヶ月以上10年以下、監護者性交罪の場合は懲役5年以上が課されます。こちらも強要罪同様、懲役刑のみで罰金刑がありません。

子供を長時間車や外に放置しておく、子供にご飯を与えない、亡くなった子供をどこかに遺棄するなどは保護責任者遺棄等罪になります。保護責任者遺棄等罪は3ヶ月以上5年以下の懲役が課されます。こちらも強要罪と監護者わいせつ・監護者性交罪同様、懲役刑のみで罰金刑がありません。 しかし、保護責任者遺棄等罪の場合、子供の心身の状態や怪我の程度、生死の状況によってさらに刑が重くなる可能性があります。


児童虐待の現状

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子供が大人からの暴力や過度な干渉を受けずに心身共に健康でいる事が児童虐待防止法によって保証されているにも関わらず、児童虐待は依然として無くなりません。虐待による死亡件数は減少傾向がありますが、虐待の相談件数は年々増加傾向にあります。つまり、死亡に至るような虐待は減っていても虐待自体は増え続けているという事です。相談件数が増加したのは人々の虐待に関する関心や意識の高まりでもあります。しかし、虐待に苦しむ子供が増加している事に変わりはありません。

世界の先進国では児童虐待撲滅に向けた取り組みが進められており、虐待件数もコロナ前までは減少傾向にありました。ところが、日本では児童虐待の相談件数は年々増加しています。そして虐待による死亡事例は年間50件を超えており、約1週間に1人の子供が虐待により命を落としている事になります。子供を虐待から守るためには虐待の件数自体を減らさなければなりません。したがって私達1人1人の意識や行動、社会全体の目によって児童虐待を未然に防止する必要があるのです。


虐待が起こる背景・要因

何故、虐待は起こるのでしょうか?

私が今まで複数の虐待事件や虐待事例を研究して明らかになった事例を紹介します。裁判や事件の名称は伏せさせて頂きます。

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まず1つ目に、「親自身が子供の頃に虐待を受けたトラウマがある」という事例です。とある虐待事件の公判で被告(虐待をした親)は中高生の頃に野球部に所属しており、部活の顧問の先生から体罰や暴言を受けていた事がマスメディアによって明らかになりました。さらに、別の事件では自分が子供の頃、親にしつけとして体罰や暴言を受けていたり、親の思うままに自分の進路を決められ自由のない生活を強いられる過干渉をされていた事がマスメディアによって明らかになったケースもあります。つまり、虐待を子供の頃に受けていると自分の子供に虐待をしてしまうリスクが高まるのです。

次に、「親の失業や収入減などによる家庭の経済的不安から虐待に発展する」という事例です。とある虐待事件では虐待の当事者家族が非正規雇用の仕事を転々としていて収入が常に不安定だった事や、自分の親からの仕送り援助が親が病気になった事によりストップしてしまい、深刻な経済的不安に陥っていた事がマスメディアによって明らかになったケースがありました。ちなみに、最近、コロナ不況により虐待件数が以前よりも急激に増えているというデータがありますが、ここ最近の虐待の中で1番多い要因は家庭の経済的不安です。

3つ目は核家族化や片親です。とある虐待事例では、当事者の家族構成が被告人と子供だけの片親家庭で仕事と子育てを両立しなければならず、その大きい負担のストレスから虐待に至ってしまった事がマスメディアによって明らかになったケースがありました。それだけでなく、核家族化により祖父母が子育てのサポートができない事から、育児ストレスで虐待に至ってしまった例もあります。

4つ目は「地域や社会との繋がりが持てずに孤立していた」というケースです。とある虐待事件では、地域や社会、保護者同士の社会的繋がりが無く、家庭や子育ての不安を誰かに相談できずに抱え込んでしまっていた事がマスメディアによって明らかになったケースがありました。人は自分の力だけで生きていくのは大変です。時には誰かと楽しいお話をして心身をリフレッシュしたり、自分の悩みを一人で抱え込まずに誰かに相談したり、公助・協助でお互いに支え合ったりする事が大切であるという事が虐待事件を通じて明らかになっています。

5つ目は「夫婦不仲やDVのストレスが子供の虐待へと繋がる」ケースです。とある虐待事件では、夫婦不仲や夫婦喧嘩、夫からのDVに苦しんでいた妻(母親)が、そのストレスが原因で感情をコントロールする事が困難になり、子供のちょっとした気に食わない言動から暴力を振るうようになり、子供の虐待死へと繋がってしまった事がマスメディアによって明らかになったケースがありました。

6つ目は「育てにくい子供への育児不安から虐待に至ってしまった」というケースです。とある虐待事例では、子供の知的発達事情による育児不安や子供に対する将来への不安などからプレッシャーを感じ、子供の知的マイノリティーをなんとか解決しようと体罰によるしつけを行ってしまった事がメディアによって明らかになったケースがありました。

このように虐待には心理、経済、社会の3つが密接に関わっているのです。

そして、もう一つ忘れてはならない課題が、しつけと体罰の問題です。

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現在では、2020年4月に児童虐待防止法が改正された事により親がしつけとして子供に体罰を加える事は禁止されています。ところが、児童虐待防止法改正後に実施した調査では、しつけとして子供に体罰を加える事を容認する人が全体の約6割近くに上るという衝撃的なデータが出ています。つまり、約6割は法律を違反することを容認しているという事です。

このようなデータからも分かる通り、児童虐待を減らすためには私達一人一人が虐待に関する関心や意識を高め、社会全体の目によって虐待を防止する事が求められているのです。


虐待が引き起こす子供への影響

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虐待を受けた子供は心身、対人関係、社会生活、学習の4つの面において大きな影響を及ぼします。

虐待を受けた子供の脳は虐待のストレスから逃れようと脳の形が変形します。

体罰や暴力を受けた場合、脳の前部分にある前頭葉の中にある前頭前野という器官 (考える、行動や感情をコントロールする、記憶する、集中する、応用する、コミュニケーションを取る、やる気を出すなどの働きを担う部分)がダメージを受けます。

また、暴言や心理的虐待を受けた場合、脳の下の部分にある側頭葉という器官 (言語理解、記憶、聴覚などの働きを担う部分)がダメージを受けます。

そして性的虐待を受けた場合、脳の後ろにある後頭葉という器官(視覚や色彩認識などの働きを担う部分)がダメージを受けます。この器官は11歳までの間に大きく発達するので、幼少期の性的虐待を受けた場合、視覚や色彩認識に大きく影響します。

これらのダメージを受けた脳は2度と復活する事はありません。したがって、生涯に渡ってコミュニケーション力や協調性、感受性、主体性、意欲、学習能力などに大きな影響を及ぼす事になります。そうなると乱暴行為や多動、徘徊、自殺企図、自傷行為が目立つようになり最悪の場合、非行や少年犯罪に繋がってしまうリスクが高まります。さらに、虐待をしている親と同一化する (虐待をされている子供が将来、大人になって子供ができた際に、その子供に虐待をしてししまう) 可能性や人とのトラブルの際の解決手段として暴力や暴言をしてしまう可能性が高いというデータも出ています。

子供は親や祖父母、学校の先生など多くの大人達に囲まれて育ちます。そのため、大人達の言動や行動などが子供の発達や成長に大きな影響を与えます。もしも周りの大人達が日常的に暴言を吐いていたり、暴力を振るっているとしたらその子供は人に暴言を吐いたり、暴力を振るっても良いと思い込んでしまい、学校で友達に暴言を吐いたり、暴力を振るってしまう可能性が高くなるのです。時に虐待は、された子供だけに留まらずこの子を取り巻く周りの人達にも影響してくるのです。

そして、虐待による影響は心や体の不調を引き起こします。

虐待を受けた子供は自己不全感を抱くようになり、うつ病を引き起こすリスクが高まるほか、過去に虐待を受けた恐怖がある時突然蘇ってくるPTSD、発達障害の自閉症スペクトラムやADHD、学習障害などを引き起こすリスクも高まります。そして、虐待をされている子供の多くは家庭での態度・様子と親が目の前にいない時の態度・様子が異なるケースが多い傾向にあります。そのようなケースの場合、将来的に解離性同一性症候群・多重人格障害などを引き起こす可能性もあります。

つまり、虐待をされた子供は人身の健やかな成長を妨げられ、うつ病をはじめとした心や体のあらゆる部分の不調を起こしやすくなるリスクが高くなるのです。

心の不調を引き起こした場合、自己の確率が困難になったり、劣等感や脱力感を感じやすくなります。そうなった場合、仕事が続かなくなり、それが収入の不安定さに繋がり貧困になるリスクが高まります。残念な事に、虐待から貧困へと繋がってしまうケースは多くあるのが現状です。興味がある方は↓の記事も読んでみて下さい。

また対人コミュニケーションに恐れを抱き、人との対話のみならず、交際や結婚を拒んだりする可能性も高まります。実際にそのようなケースもあります。興味がある方は↓の記事も読んでみて下さい。

このように、虐待をされた子供は心や体の状態が不安定になり、それが対人関係や学習面での影響に繋がり、将来の学校生活や社会生活などにおいて大きな影響を及ぼします。もしかすると「児童虐待」の問題を解決する事によって「貧困」、「離職率の増加」、「いじめ」、「学級崩壊」、「生涯未婚者の増加」、「少子化」などの社会問題も改善する事が出来るかもしれません。


児童虐待問題の解決策

では、どうすれば児童虐待を解決できるのでしょうか?

↓の写真では、行政機関や福祉機関で行うべき施策や政策を黒色で、私達を含めた民間人にできる事を赤色で書いています。

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行政機関や福祉機関に出来る事は5つあります。

1つ目は児童相談所や児童養護施設の拡充と機能の強化です。児童虐待を防止するためには、福祉司等の専門職の配置の充実や資質の向上を図り、児童相談所の専門性を強化する事や里親や養子縁組に関する支援、児童相談所の機能強化を図る事が必要になります。また、それと同時に児童養護施設で発生している職員による虐待を取り締まり、児童養護施設で安心して暮らせるような環境作りに努める事や児童相談所や児童養護施設の職員の待遇改善も欠かせません。

児童養護施設で発生している職員による虐待問題や児童養護施設で子供を薬漬けにする実態について詳しく知りたい方は↓のサイトをご覧下さい。

2つ目は親権の制限を容易にする事です。親の過干渉などによって生じる虐待は親権や監護権などの制度と関連している場合があります。したがって、過干渉などによる心理的虐待を防ぐためには、親権や監護権の制限を容易にし、虐待件数の増減に応じて行政機関が臨機応変に対応できる体制を作る事が必要になります。そして、親権を制限した場合にはマスメディアや市報、保健所、児童相談所、教育機関などを通じて世間にお知らせをし、周知徹底させる事が必要になります。

3つ目は児童相談所、児童養護施設と警察の連携強化です。児童虐待事件が起こった場合、虐待の当事者への事情聴取や事件後の親子同士の関わり方の決定など様々な事を行わなければなりません。そのため児童相談所、児童養護施設と警察との連携によって児童虐待事件の適切な対処やその後の選択を行う事が大切です。また、それに関連して4つ目の親子双方の心のケアをする事も必要です。虐待事件が起きた後は子供と親の両方から事情を聞き、アフターケアをする事が再発防止のために必要になります。そのため、警察が事情聴取を行うのと同時に、児童相談所がアフターケア事業を紹介したり、場合によっては子供を児童養護施設で保護するなどして親子双方のアフターケアを行う事が大切です。したがって、児童虐待の適切な対処や再発防止を図るためには警察と児童養護施設、児童相談所の連携を強化する事が求められてくるのです。

5つ目は子ども食堂、児童館、学童など子供の放課後の居場所となる場所や施設を拡充する事です。児童虐待が起こってしまう背景の一つとして、子育ての負担によるストレスがある事を紹介しました。子供の放課後の居場所を作る事で、子育ての負担を軽減すると同時に働きながら子育てができる環境を作る事にも繋がります。

一方、虐待に苦しんでいる子供の多くは放課後の居場所がないというケースも多いのが現状です。居場所や心の拠り所がないと、虐待をされている子供は心身をリフレッシュする事ができないだけでなく、虐待について誰かに相談する事もできません。したがって、子供の居場所づくりは虐待の早期発見のために非常に重要なのです。そのため、子供の居場所作りを拡充する事は、親の子育ての負担や虐待の早期発見、子供の心のケアの3つの面において大切になるのです。

ここまでは行政機関や福祉機関に出来ることについて紹介しました。ここからは私達に出来る事を紹介します。

私達に出来る事は4つあります。

1つ目は児童福祉に関わるボランティアに積極的に参加する事です。児童福祉のボランティアに関わると虐待をされている子供達と直接触れ合う事が多々あります。そうすると虐待の現状について自分自身が肌で感じる事ができるので、虐待に関する関心や問題意識をさらに高める事ができます。また、児童福祉のボランティアの活動をする事で児童虐待防止に貢献できるという効果も孕んでいます。私達一人一人が持っているボランタリズムを生かし、児童虐待防止のために行動する事によって、児童虐待問題を解決する事が出来るかもしれません。

2つ目は虐待をされている子供に気付き、助ける事です。虐待をされている子供の多くは、誰かに助けを求める事なく一人で抱え込んでしまっています。したがって、私達が虐待をされている子供に気付き、助けてあげる事でその子の命を救ってあげられるのです。虐待は子供の命に関わります。ですから、私達が勇気を持って虐待をされている子に歩み寄り、手を差し伸べてあげる事が必要です。虐待をされている子供に気づく方法やノウハウ、虐待を見つけた場合の対処方法などは次項で説明します。

3つ目は悩みを抱えている親に気づいて相談に乗ってあげる事です。虐待をしている多くの親は辛い思いや深刻な悩みを抱えています。特に、しつけとして子供に虐待をしている親は子供の成長や将来に関して強い危機感や心配事を抱いているケースが多々あります。そのため、辛い思いや悩みを抱えている親の心に寄り添い、相談に乗ってあげる事は児童虐待を未然に防ぐために、大切になってくる事です。可能であれば解決してあげると良いと思います。

4つ目は児童虐待についての知識を高め、それをSNSで発信する事です。児童虐待を未然に防ぐためには社会全体の目が必要である事を説明しました。社会全体の目で虐待を未然に防ぐためには、児童虐待に関する人々の興味・関心を引き出す事が必要です。したがって、SNSやインターネット、メディアなどを通じて虐待についての情報を発信し、一人でも多くの人に虐待の現状を知ってもらう事が大切です。


虐待を見抜く方法・ヒント

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ここからは虐待を見抜くヒントやノウハウについて紹介します。

1つ目は、背中や手に不自然な傷や焼け跡がある事です。子供は親から暴力を振るわれると、自己防衛のために手や腕で頭を覆う傾向があります。(実際に小学校の防災訓練の時に先生に頭を守るように教えられた経験がある方は読者の中にもいるかと思われます。) そのため、手や腕、背中などは守る事ができないため親からの攻撃を受けやすくなるのです。したがって怪我によってできたとは思えないような不自然な傷や火傷跡が手や腕、背中などにある場合は注意して下さい。暴力などの身体的虐待を受けている可能性があります。

2つ目は体が過度に痩せ細っている事です。安定歩行がままならない状態であったり、骨がくっきりと見えるほど痩せ細っている場合は要注意です。これは、1回や2回どころではなく長期間又は継続的に食事を与えていない証拠です。したがって、体が過度に痩せ細っている場合はネグレクトの疑いがあります。

3つ目は人の顔色を過度に伺っている事です。気遣いとして適度に人の顔色を伺いながら対話したり、来客をもてなしたりする事は社会生活を生きる上で必要です。しかし、それ以上に人の顔色を伺って人に気を配りすぎたり、過度に遠慮したり、人の顔色を伺うばかりで自分の事を一切話さないといったケースの場合は過干渉や抑圧を受けている疑いがあります。

4つ目は子供の鳴き声や親の怒鳴り声が長時間に渡って続いている事です。このような事は多くの場合、「家の中で起こっていて、それを近所の人が気づく」というケースが多い傾向にあります。このような場合、すぐに虐待と判断するのではなく、数日間に渡って様子を伺ってから判断するようにして下さい。数日間に渡って続いているようであれば、ネグレクト以外のどれかの虐待が起こっている可能性があります。

5つ目は年齢や場所に不釣合いな言動や態度が目立つ場合です。これは、3つ目と関連します。例えば、人に対して過度に礼儀正しい子供。これは一見すると誠実で良いように思います。しかし、中には親から「人に悪い所を一切見せるな!」などと脅されていたり、大人でも驚くようなハイレベルの礼儀作法や言葉遣いを無理矢理叩き込まれている子供もいるのが現状です。このような子供の事を別名「アダルトチルドレン」と言ったりもします。したがって、このようなケースの場合は過度なしつけや抑圧、過干渉を受けていないか注意深く見る必要があります。

抑圧や過干渉などは6つ目の家族の話を拒むといったケースにも該当します。家族の話を拒むのは大きく分けて2つの理由があります。1つは、親から「家族の話は人にするな!!」と脅されている場合。もう1つは家族が嫌いである場合です。いずれにしても、家庭環境や家族関係が良くない可能性が高いです。これだけでは、虐待かどうか見抜く事は困難なので他に虐待を疑わせるようなものはないか注意しながら見るようにして下さい。

7つ目は家に帰りたがらない場合です。「家に帰りたがらない=家が好きではない」という可能性もあります。したがって、虐待を受けていて家に帰るのを避けている可能性も否定できません。仮に、虐待を受けていない場合でも家庭環境や家族関係が良くなかったりするケースは往々にしてあります。そのような場合、家に帰りたがらない理由を優しく尋ね、可能であれば相談に乗ってあげましょう。状況に応じて児童相談所などに連絡するなど臨機応変に対応し、助けてあげられるものは可能な限り助けてあげて下さい。

8つ目は長期間に渡って同じ服又は不潔な服を着ている事です。このようなケースのほとんどはネグレクトです。しかし、家が貧しく服を買ったり、洗濯をする事が困難であったりするなど、虐待ではない場合もあります。ですが、いずれにしても児童相談所に相談する案件である事に変わりはありません。したがって、このような場合は児童相談所に連絡&相談しましょう。


虐待を見つけたら

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虐待を見つけたら児童福祉に関係する専門機関や警視庁の相談センターに連絡して下さい。虐待がその時、起こっていて、子供の安全や命の危機が迫ってきている状況であれば110番して下さい。110番と9110番は間違えないようにして下さい。緊急性がある場合は110番、緊急性がない相談などの場合は9110番です。


虐待を見つけた時のNG行為

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虐待を見つけた際にしてはいけない事が3つあります。

1つ目は親もしくは子供を否定する発言です。虐待の裏側には親と子供の両方のストレスや辛さ、苦悩があります。したがって、親もくしはは子供を否定する発言をすると親又は子供をさらに追い込む事になってしまったり、虐待をかえって悪化させる原因にもなります。

2つ目は当事者家族に虐待についてストレートに尋ねる事です。虐待についてストレートに尋ねてしまうと、虐待をされている子供を傷つけるだけでなく親を追い込んでしまう事にも繋がります。さらに、自分と当事者家族で予期せぬトラブルに発展してしまうリスクが高まります。したがって、虐待についてストレートに尋ねるのではなく、最初は雑談から始めながら悩みや辛い事などを聞いて相談に乗ってあげると良いでしょう。

3つ目は噂話として他人に広める事です。多くの人間は、自分に対する周りからの噂話が表に出てくるとストレスを感じ、精神的に追い込まれる傾向があります。そうなると精神的苦痛によるストレスの矛先が子供に向き、かえって虐待をエスカレートさせるリスクが高まります。したがって虐待を見つけたら必ず他人には内緒にし、専門機関などに相談するようにして下さい。


最後に

【閲覧注意!】虐待を体感できるVR動画の紹介

この動画は、虐待の怖さを子供の視点から間近に感じとってもらい、児童虐待に対する世間の注意力と意識を高め、虐待の早期発見につなげることを目的に作成された動画です。

注意事項:

1.衝撃的な内容が含まれています。気分が悪くなったりした場合はすぐに視聴を止めてください。体調がすぐれない方はご視聴はおやめください。
2.この動画の視聴は自己責任でお願いします。


【法務局: 児童虐待防止の啓発動画】の紹介

子どもに対する虐待をテーマとしたドラマです。虐待を他人事ではなく,身近な問題として捉え,虐待の防止・解決について考えてもらうことを目的として作成されています。


皆さんの勇気ある行動が子供の命を救います。児童虐待防止に向けた皆様のご協力をよろしくお願いします。最後まで御一読いただきありがとうございました。