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医療的ケア児の子ども達を学校に通学させるために、分かって来た国や自治体がすべき対応とは?

こんにちは、翼祈(たすき)です。

今人工呼吸器などを日常的に使用する医療的ケア児の子ども達が、学校に通学することが近年増えて来ました。

医療的ケア児の通学サポートに励む自治体も、少しずつ増加傾向です。

国や自治体が医療的ケア児やその家族をサポートする責務を明記した支援法が2021年に施行されて、2年余りが経ちました。サポートして欲しいと望む声は多くありますが、看護師を確保しにくい状況が続くなど難題も山積で、自治体からは国からの人材育成や財政支援が必要との声が上がっています。

医療的ケア児の子ども達も学校に通学するために、すべき対応とは?今回は医療的ケア児の子ども達を巡る、学校に通学するための課題を考えていきたいと思います。

医療的ケア児の通学の様子。課題は?


「おかえりなさい。今日学校はどうだった?」。2022年10月中旬、神奈川県横浜市にある自宅前で、ストレッチャーに乗ってワゴン車から降りる男の子を、お母さんがおかえりと言いました。男の子は胃ろうや人工呼吸器を装着した医療的ケア児で、特別支援学校に通学する高校1年生です。現在は登校と下校で週2日ずつトータル4回、横浜市のモデル事業の一環で、通学サポートを受けています。

横浜市内にある福祉事業所のワゴン車に看護師が同乗し、片道およそ15分の男の子の登下校を見守ります。サポートがない時はお母さんが車で学校に送り迎えしていますが、通学サポートを受ける日は空き時間ができるといいます。

男の子の通学の実施をするまでに入念な準備を積み重ねてきました。福祉事務所のワゴン車に同乗する看護師と学校、親御さんの間で体調管理などの引き継ぎを毎回実施し、連絡を密に取り合いました。事故や体調急変など不測の事態に備えながら、男の子だけのマニュアルも作成しました。サポートに携わった障害児の在宅支援をする東京都にある認定NPO法人「フローレンス」の担当者は「医療的ケア児1人に4人の看護師が交代で付き添います。親御さんや学校との情報共有にも力を注ぎました」と説明します。

男の子に付き添う看護師の1人の女性Aさんは2021年9月から、男の子の自宅を訪問し、ケアと発達サポートを担ってきました。ワゴン車に乗車する時は呼吸器の状態や、身体に酸素が行き渡っているかを測定するモニターを常時確認をします。「学校に通学することが彼の成長に繋がります」とやり甲斐を語りました。

横浜市は「ご両親からの需要が高い」と2019年からモデル事業をスタートし、毎年通学サポートの車を増やしてきました。2022年度は20台分、およそ1億3000万円の予算を計上しました。それでも、個別のケアが必要となるスクールバスに乗れない小学生から高校生の医療的ケア児54人の中で、およそ7割に該当する39人はご両親の自家用車で登下校をしています。

参考:「重い障害があっても学校に通う権利を」医療的ケア児の通学支援はまだまだ困難 自治体は国に財政支援を要望 東京すくすく(2022年)

医療的ケア児支援に自治体の責務を課した法律が2021年9月に施行されたことも、自治体の背中を押しました。

愛知県名古屋市は2022年4月から、市立学校の医療的ケア児を対象に、登下校時に看護師が同乗した介護タクシーを出す通学サポート事業をスタートました。年間で24日の利用ができますが、使えるのはご両親の体調不良などの緊急時に限定されます。

法施行前から励む自治体では、滋賀県が2020年度から通学サポートをスタートしました。毎日送迎するご両親の負担軽減が目的で、片道1回とカウントして利用は年間10回までとなります。

2018年に制度をスタートした東京都は、2021年3月時点で72台、およそ130人の医療的ケア児の登下校をサポートします。東京都の非常勤看護師が事業者の車に乗る形が多くを占め、予算額は他を凌ぐおよそ13億5000万円に上りますが、それでも20人を超す医療的ケア児の待機者がいます。

看護師を派遣する事業者からは「通学サポートだけで事業が成り立つ報酬の設定が必要だ」との声が上がります。

横浜市の担当課長の女性Bさんは「通学のサポートを求める医療的ケア児は日本各地にいます。財政支援や人材育成も含め、国が持続可能な医療的ケア児への制度設計をする必要があります」と述べました。

なかなか難しいと思う。

医療的ケア児の子ども達だって学校に行きたいと思いますし、良い取り組みだと思います。

ですが、お住いの地域の自治体の財政状況や、たんの吸引や人工呼吸器など学校に通学するためには、看護師も場合によっては常駐しなくてはならず、また通学する学校の設備の対応などもありますし、全ての課題をクリアするまでには幾つも多くの山を乗り越えなくてはなりません。

もちろん医療的ケア児の子ども達にだって学校に行く権利、学ぶ権利はあります。なかなか実現できる自治体はまだ少ないかもしれませんが、少しずつ前例を作っていき、みんながこの課題に取り残されず、平等でなくてはと、考えさせられた話でした。


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