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140字小説3編「魔法の粉・餃子・カツ丼」

魔法の粉

ラーメン店の各テーブルにある調味料。食する前にこれをひとふりするとあら不思議、場末の店と思えぬ奥深い味になるのである。原料は店主以外誰も知らず魔法の粉と呼ばれている。ある男が店主の留守中に厨房に忍び入り、魔法の粉調合中と思しきタッパを開けた。そのまま店を出て二度と来店しなかった。

餃子

今日の調理実習は餃子。皮担当の斎藤さんが強力粉の袋を開けた。こねこね、ぺたぺた。分度器で羽根の陰影を成形し額から汗を溢れさせ目を血走らせながら、実習が終わっても粉と格闘していた。誰も斎藤さんを止められない。そうして餃子の像ができあがった。それは今も母校の調理実習室に飾られている。

カツ丼

W県警にて。供述調書作成システムの担当として刑事達に入力法を指導している。ヤクザ顔負けの強面の面々に囲まれて正直怖い。「早よう吐いて楽になれや。そしたら出前とったるわ。カツ丼でええか?」パシパシ…完全に遊んでいらっしゃるが無事に終わった。その後もちろん彼らと一緒にカツ丼を食べた。


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