えいみ

日本語と英語育ちの本読み。映画と海外ドラマ好き。フェミニスト。

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最近の記事

軽んじられた子どもの苦悩「わたしに無害なひと」

以前この記事で取り上げた「わたしに無害なひと」 を読み終わった。 はじめ、タイトルに自分の心を見透かされたような気がしてひやりとした。他人を「無害なひと」と言い切れることに相手を見くびっている印象を受けつつも、それは私にもある感情だとわかっていたからだろう。 文中で「無害なひと」と出てくる作品「告白」の文脈ではたしかに、相手を自分と同じだけ、あるいはそれ以上の痛みを抱える人間として扱っていなかったことの表れとしてこの言葉は使われている。 一冊読み終わっ

    • Spotifyで何聴いてる?英語編

      私は1日1回はSpotifyを使っているので、他の人がどういう聴き方をしてるのかも気になる。他人に質問する時はまず自己開示から、ということで私の最近の聴き方をまとめてみました。 ニュース番組:普段出会わないもの、読まないものAl Jazeera(アルジャジーラ)のThe Take カタールを拠点にする放送局アルジャジーラの英語ニュースポッドキャスト。去年、欧米発のニュースがほぼ「ブレクジット、米大統領選挙、コロナ大流行」の話題しかしていなかった時期に聴き始めた。もちろんそれ

      • 「菜食主義者」(ハン・ガン著)を読んだ。長い詩を読んでいるような感覚。本を閉じた後も余韻がなかなか抜けなかった。共感することだけが読書の楽しみではないんだと改めて思った。自分の知覚と想像力の先を見せてもらった一冊。 「いつか私たちが目を覚ましたら」という言葉が印象に残った。

        • 中国が愛を知ったころ

          張愛玲(Eileen Chang)という作家を知ったのは、アジアのフェミニズム文学について調べていた時だった。 中華圏ではとても人気のある作家で「張迷(張狂い)」という言葉が使われるほどらしい。本人が英語でも執筆したため、翻訳されたものと合わせて英語で読める作品が多数あり英語圏での知名度も高い。その人気から何作も映像化されていて、その一つが映画「ラスト、コーション」だ。 1920年に上海で生まれた彼女が作家として活躍したのは日本占領下の上海、中華人民共和国の成立後の香港、そ

        軽んじられた子どもの苦悩「わたしに無害なひと」

        • Spotifyで何聴いてる?英語編

        • 「菜食主義者」(ハン・ガン著)を読んだ。長い詩を読んでいるような感覚。本を閉じた後も余韻がなかなか抜けなかった。共感することだけが読書の楽しみではないんだと改めて思った。自分の知覚と想像力の先を見せてもらった一冊。 「いつか私たちが目を覚ましたら」という言葉が印象に残った。

        • 中国が愛を知ったころ

          12月に観た映画「燃ゆる女の肖像」「君の心に刻んだ名前」

          12月は引きこもって過ごした年末年始もあって充実した映画ライフが送れた。また観たいなと思う2作品の感想を記録しておく。 ※前知識なしで観たい方は読まない方がいいと思います。 「燃ゆる女の肖像」 クィア映画は児玉美月さんのTwitterを参考に選んでいる。以前感想を書いた「ユニへ/윤희에게」も児玉さんのツイートで知った。その時「燃ゆる女の肖像」も合わせて紹介されていたので、日本での封切りを待っていた。 舞台はフランスの孤島。貴族の家に生まれ望まぬ結婚を控えるエロイーズと、

          12月に観た映画「燃ゆる女の肖像」「君の心に刻んだ名前」

          子どもの頃の不思議な記憶「歩道橋の魔術師」

          ネットサーフィンしていたら「TAIWAN BOOKS 台湾好書」という日本語で読める台湾の本を紹介する小冊子を見つけた。(以下リンクからpdfファイルが無料でダウンロードできます。) その中で惹かれた一冊が呉明益さんの「自転車泥棒」だった。けれど「初めて読む作家さんだし、いきなり長編小説は手をつけづらいな」と思って、合わせて紹介されていた短編集「歩道橋の魔術師」を読むことにした。これがすごく好みの作風と文体だった。 「歩道橋の魔術師」の舞台は、かつて台北にあった商店街と集

          子どもの頃の不思議な記憶「歩道橋の魔術師」

          BLとの距離

          ずっとBLに苦手意識があった人生で初めてそういう種類のエンタメがあると知ったのは中学生の時、同級生が「うちら腐女子だから~~~」と自虐的に言っていたことがきっかけだった。聞きなれないフジョシという単語の意味がわからなかったし、なんで若干卑下した感じだったんだろうと(母校では他のあらゆるオタクが伸び伸びしていてたので余計に)気になってネットで検索した。 そしてそれが男性同士の恋愛もののジャンルであること、それを愛好する人たちが「腐女子」を自称していること、あとは「ホモォ、、、

          BLとの距離

          性差(ジェンダー)の日本史(熱い感想文)

          もう終わってしまった企画ですが、行ってきたので感想を記録。 企画は二つの展示室に分かれていて、展示室Aでは古代から近代までの日本のジェンダーの成り立ちと変化を、展示室Bでは性の売買の日本史と展示室Aの続きを現代まで扱っていた。それぞれの展示室を見て、直後の感情高ぶった感想と、少し時間をおいて落ち着いて図録を読みながら考えたことをまとめた。 時の流れに浮かんでは消える無数の事実を指す「歴」と、それを文字で記した「史」。日本列島社会の長い歴史のなかで、「歴」として存在しながら

          性差(ジェンダー)の日本史(熱い感想文)

          旅に出られないときの一人遊び

          私は知らない土地を一人でふらふらするのが好きだ。基本的には家でひきこもっているのが好きなのに、時々の一人旅ができないと息が詰まってしまう。 コロナウイルスの影響で旅に出られなくなって、最初のうちは「留学から帰ってきたばかりだし精神的に余裕ないしまぁいいか」という感じだったけれど、最近はどこかに行きたくてたまらない。 (こういう風に何かしたいと思えるようになったのは精神状態が良くなっている証拠なので嬉しくもある。) とはいえ海外への渡航は当分難しいだろうし、国内でも長距離

          旅に出られないときの一人遊び

          Inside/Out ー映像文化とLGBTQ+

          以前行った展示会を思い出しつつ記録。 本展では、戦後から2020年初めまでの映画とテレビドラマを主な対象に多様なLGBTQ+表象に着目し、製作ノート、パンフレット、スチル写真、台本、映像などの多彩な資料とともに歴史を振り返ります。(サイトより引用) 早稲田大学の本キャンパス内にある演劇博物館で2021年1月15日まで開催中。入場無料。 展示構成は以下の通り。 展示構成 ・戦後日本映画を読み直す ・日活ロマンポルノと薔薇族映画にみる性のカタチ ・1980~1990年代 

          Inside/Out ー映像文化とLGBTQ+

          Coursera受講記録 : 心理的応急処置(Psychological First Aid)

          Coursera(コーセラ)で受講が完了したので共有します。 CourseraとはCoursera(コーセラ)はオンライン教育プラットフォーム(MOOCs)の一つでスタンフォード大学により設立され、現在では世界中の名門大学の授業が受けられる。MOOCs には他にハーバード大学などが始めたedXなど。 講座はプログラミングからマインドフルネスまで幅広く、修了までの時間も1講座完結の数時間のものから学位取得を目指すものまで多様。 ほとんどの講座で受講(オンライン講義を聞くこ

          Coursera受講記録 : 心理的応急処置(Psychological First Aid)

          映画 윤희에게 (ユニへ)

          韓国文化院の主催する「コリアンシネマウィーク2020」でオンライン上映された映画 윤희에게 (ユニヘ)の感想文。 ※ストーリーの詳細にも言及しています。 冬の小樽が似合う二人 送るつもりのなかった手紙をきっかけに、かつて恋人同士だった二人の女性の縁が再び冬の小樽で繋がる。 日韓に離れて暮らし、お互いに相手を捨ててしまったと感じていた二人が、自分達ではどうすることもできなかった事情を見つめて「私たちは何も悪くなかった」と思えるようになるまでの話。 長年会えなくても、送

          映画 윤희에게 (ユニへ)

          映画「ジェニーの記憶」を観た。性的同意可能な年齢、未成年と大人の恋愛などに関心がある人は必見。大人びていても13歳に必要なのは保護者からの愛情であって他人からの欲情ではない。記憶の中の自分より当時の自分はずっと幼く弱い立場にあったと大人になって気づく主人公に胸が痛かった。

          映画「ジェニーの記憶」を観た。性的同意可能な年齢、未成年と大人の恋愛などに関心がある人は必見。大人びていても13歳に必要なのは保護者からの愛情であって他人からの欲情ではない。記憶の中の自分より当時の自分はずっと幼く弱い立場にあったと大人になって気づく主人公に胸が痛かった。

          留学の思わぬ効果

          旅の途中の意外な出会いがその後の旅路を決めてしまうように、留学も目的とは違ったことが転機になってしまったりする。 私の留学もその例にもれず、思いもよらないところで変化があった。 留学開始ほどなくして、私には散歩友達ができた。彼のお陰で近所の小道を歩きまわり草木に目を向けるようになったのだから正確には散歩の先輩だろうか。 その友達は自然豊かで夏がとても短い土地の育ちで、日のよく出る日は寒くても散歩を趣味にしていた。彼によれば、何もない緑の中を歩くのは故郷ではよくある趣味の

          留学の思わぬ効果

          一人で踏ん張る時に。 Roots Before Branches

          どうしても自分だけで道を拓かなきゃいけない時に聴く曲の中にRoom For TwoのRoots Before Branchesがある。 ドラマGleeのファンの方にはレイチェルがニューヨークに旅立つ時に歌っていた曲という印象が強いのかな。 劇中でレイチェルはブロードウェイで歌うという長年の夢がありながら、NYの音大への進学を延期しようとする。一緒に行くはずだった仲間の中で合格したのは彼女だけだったから。 一人でNYへ行くべきか悩むレイチェルは結局、みんなに背中をおされて

          一人で踏ん張る時に。 Roots Before Branches

          (クィアなフェミニストが選んだ)寝る前におすすめの5冊

          寝る前に読む本を選ぶのは難しい。ぐんぐん物語が進んで、一気読みしたくなる本に寝る前に出会ってしまうと、次の日睡眠不足でぼんやりした頭で過ごすことになる。だから推理小説は不向き。 戦闘や演奏の描写が充実してると、夢の中でも音がうるさい。だから戦争物や音楽関係のもパス。 残酷だったりホラーだったりは興奮して寝つきが悪くなる。あと夢見も悪そう。だからクライムサスペンスや怪談もなし。 ノンフィクションも内容が濃いほど脳みそへの負荷も大きい。一度起動した脳をシャットダウンするには

          (クィアなフェミニストが選んだ)寝る前におすすめの5冊