飛球 「明日は君が四番を打つといいよ」 と酒屋さんのおじさんは言いました。 うちの四番が 明日から旅行に行くのです。 とは言っても、 神社の近くの 公園でや…
夜露 夜露に濡れた月を、佇んで眺めている。 小枝を拾い、 砂にその月の輪郭を絵描いて、 小枝を濡らして、 その輪郭をもう一度なぞる。 陰影をつけていると、そ…
地図 言葉は僕と、 桜の木の下で 待ち合わせをしていたらしく、 豪華なお菓子の詰め合わせのような 物語を聞いた後、 僕は彼女に、 「途中まで、一緒に行っても…
夜空 「今日の空のような青かい」 「いいえ。もっと紺です」 「それでは この衣装はこの色に染めますね」 「お願いします。 あの役に合う色だと思います」 「あ…
畑 お昼休憩のために、一旦作業を止めて、 畑から上がって来て、 僕は着替えるために上着を脱いだ。 筋肉だと思った。 短期間の畑仕事を頂いて、 まだ二週間ぐら…
つくし 時計が鳴る前に止めて、 僕は起きてすぐにごはんを食べ 学校に着いて、 放送委員の同級生に会うと、 「何かあなたに賞を上げたいんだ」 と言いました。 …
かるた取り 扇風機を消して窓を開けた四畳半、 西日を浴びて本を読む。 天井からの電球は、 風が吹く度 うなづくように動きました。 じいちゃんのあぐら、あいう…
快く あー今日はよい詩ができた。 お茶を一杯淹れて、 外を眺めようかしら。 「僕は君を信用しているし、 信用していない」 もうすぐ夢が叶うと言ってごらん。 「…
馬の背中 どちらにしようかどちらにしようかと いろいろ迷った夜の次の朝、 わたしは馬の背に乗り 風船を追い掛けました。 わたしはあなたのようにはなれなくて、…
静寂 外套に襟巻き姿の女性は、 まだ辺りは朝の静寂の中、 玄関外から 小さく僕の名前を呼びました。 僕はゆっくり布団を出ました。 けれど飛び石を進むように廊…
一編 君は作家になり、 僕は売れない詩人になった。 「君の人気は大変なものだね」 「月夜の晩に、少し歩いて来ただけで、 たくさんの人が振り向いていたよ」 「…
弱虫 ほんの僅かな美しい時計の中で、 僕たちは時を刻み、 いろんなことを心配しながら、 暮らしているようでした。 新たな時代の幕開けのように、 どこかの町で…
弧舟 ここからあの汽船を見ていても、 どこの国々を 巡って来たのかはわからないけれど、 あの船やあの船を見ていて、 同じ色の電車が、 この町にあったとして、 …
朝 ベッドに座ってコーヒーを飲んでいる。 風邪は治ったみたいだ。 咳は出ない朝はまだ来ない。 去った不安はありがたい。 過ぎ去った不安はもっとありがたい。 …
クレヨン 畳やふすまにクレヨン口紅使って でんしゃを絵描いて、 外に出掛けてどろんこあそび。 夕方帰って来て、 「あっ母ちゃんに叱られる」 と思ったけれど、 …
口笛 少し風邪気味で、 友達と遊べない午後は、 口笛でも吹いて。 友達と遊べない午後は、 口笛でも吹いて、横になり、 足を組んで、 何か歌でも 唄ってみようか…
あおいつくえ
2024年4月27日 12:12
飛球「明日は君が四番を打つといいよ」と酒屋さんのおじさんは言いました。うちの四番が明日から旅行に行くのです。とは言っても、神社の近くの公園でやっている野球の事です。僕の四番は、近頃よく言われているように、四番ではなく四番目の打者ということです。でもみんなを少しぐらい驚かせてやる。これから帰って素振りをしようと、空き地を見つけるとボールを空高く放り
2024年4月21日 12:42
夜露夜露に濡れた月を、佇んで眺めている。小枝を拾い、砂にその月の輪郭を絵描いて、小枝を濡らして、その輪郭をもう一度なぞる。陰影をつけていると、その動作が、手招きに見えたようで、おばけがやってくる。僕は「今晩は」と会釈をするために立ち上がると、「これが今まで投稿した君の全部の作品です」と広げました。「どこが良くなかったか、これから添削しようと思う」
2024年4月9日 12:29
地図言葉は僕と、桜の木の下で待ち合わせをしていたらしく、豪華なお菓子の詰め合わせのような物語を聞いた後、僕は彼女に、「途中まで、一緒に行っても良い?」と聞くと、「うん」と言う。時々あえてペンを止めて、ゆっくりゆっくり紡ぐ旅行記のように、古い町の地図の看板に、「たぶんここが僕たちがいる場所」と僕は使い終えた切符を置きました。彼女は、「この地図では
2024年4月4日 12:07
夜空「今日の空のような青かい」「いいえ。もっと紺です」「それではこの衣装はこの色に染めますね」「お願いします。あの役に合う色だと思います」「あの日」「公園から見えた」「東京タワー」「どんな夜空で」「僕たちは何を話しながら歩いていたのだろう」「回廊を通り抜けて見上げたいちばん星を、希望の色に塗り変えよう」「何色に?」「何色だろう」「夜露を吸
2024年3月28日 12:22
畑お昼休憩のために、一旦作業を止めて、畑から上がって来て、僕は着替えるために上着を脱いだ。筋肉だと思った。短期間の畑仕事を頂いて、まだ二週間ぐらいしか経っていないけれど、筋肉だと思った。広がる畑は美しく、それを熟語で表したいと考えながら水を飲みお弁当を食べ、また畑へ下りて行く。その熟語を、一作目の詩集の題名にしようかと思う。
2024年3月19日 12:30
つくし時計が鳴る前に止めて、僕は起きてすぐにごはんを食べ学校に着いて、放送委員の同級生に会うと、「何かあなたに賞を上げたいんだ」と言いました。同級生は、「いいよいいよ何も要らないよ。でもそのように言われてみると、聴いて頂きたい歌があるなあ」と言いました。けれど僕たちだけで使うわけにはいかないのです。「何々先生お電話です」「お弁当やパンの販売が始
2024年3月3日 12:43
かるた取り扇風機を消して窓を開けた四畳半、西日を浴びて本を読む。天井からの電球は、風が吹く度うなづくように動きました。じいちゃんのあぐら、あいうえお。うさぎと僕は、かるた取りをお願いしました。ほしいもたべて、かきくけこ。ぶんぼうぐやさんからのかえりみち、さしすせそ、たちつてと。教科書に僕が授業中絵描いたあなたの似顔絵は、数ページの他は、いつも笑っ
2024年2月24日 12:48
快くあー今日はよい詩ができた。お茶を一杯淹れて、外を眺めようかしら。「僕は君を信用しているし、信用していない」もうすぐ夢が叶うと言ってごらん。「何だいそりゃ」わあーあ。今日はちょっとだけよい詩ができた。もう一杯お茶を淹れて、窓を開けて風に触れようかしら。「親友だし親友じゃない」もうすぐ小糠雨が降るので、冬に着ていた紺色の絣の着物で、金色の星を撫でて
2024年2月12日 11:33
馬の背中どちらにしようかどちらにしようかといろいろ迷った夜の次の朝、わたしは馬の背に乗り風船を追い掛けました。わたしはあなたのようにはなれなくて、わたしはわたしであなたではない。わたしって何だろう。これは孤独とは少し違うと思うのだけれど、この気持ちは何なんだろう。花のなかで草のうえで、雲のすきまで川のそばで、小石を拾って、大きな木に寄り掛かって座る。
2024年2月1日 12:45
静寂外套に襟巻き姿の女性は、まだ辺りは朝の静寂の中、玄関外から小さく僕の名前を呼びました。僕はゆっくり布団を出ました。けれど飛び石を進むように廊下を行く。彼女は寒い所から、僕は布団の中から来たというのに、顔を合わせると、何を言っていいか分からなかった。今になって彼女は、それ程の話題でもないような気がしていました。僕だって、怖い夢を見ていたから、起
2024年1月18日 13:01
一編君は作家になり、僕は売れない詩人になった。「君の人気は大変なものだね」「月夜の晩に、少し歩いて来ただけで、たくさんの人が振り向いていたよ」「君は本をたくさん貸してくれた」「予報通りなら、どこかで温かいものを食べて、朝雨が止んだら行こう。雨露で、木々や果実が輝いていれば、君の名前入り原稿用紙もきらきら光り、僕を嫉妬させるだろう」「僕の詩を、ねだった
2023年12月23日 12:42
弱虫ほんの僅かな美しい時計の中で、僕たちは時を刻み、いろんなことを心配しながら、暮らしているようでした。新たな時代の幕開けのように、どこかの町でお祭りが開かれていても、そこへ行くお金の余裕は無かったので、庭で渡したさお竹に、洗濯物を掛けて、そのままぶら下がって、「折れるから止めて、もう買えないよ。物を大切に使って」と叱られていた。お金を増やす辞典を貰ったが
2023年12月19日 12:50
弧舟ここからあの汽船を見ていても、どこの国々を巡って来たのかはわからないけれど、あの船やあの船を見ていて、同じ色の電車が、この町にあったとして、どちらたくさんの本を運んでいるのかなあと想像すると、この穏やかな海で、釣り糸を垂らして時を過ごす、あの人の弧舟です。
2023年12月14日 12:53
朝ベッドに座ってコーヒーを飲んでいる。風邪は治ったみたいだ。咳は出ない朝はまだ来ない。去った不安はありがたい。過ぎ去った不安はもっとありがたい。もっともっとありがたいのは、僕は帽子が風で飛ばないように、前を進んでいきたい。
2023年12月7日 12:24
クレヨン畳やふすまにクレヨン口紅使ってでんしゃを絵描いて、外に出掛けてどろんこあそび。夕方帰って来て、「あっ母ちゃんに叱られる」と思ったけれど、母ちゃん、「これ上手ねえ」と言いました。だから僕は、「母ちゃん、ごめんなさい」と言いました。「今度は駄目よお」と母ちゃん言いました。はじめて作った詩を先生が、「上手いねえ」とある日、褒めて下さった。
2023年11月30日 12:52
口笛少し風邪気味で、友達と遊べない午後は、口笛でも吹いて。友達と遊べない午後は、口笛でも吹いて、横になり、足を組んで、何か歌でも唄ってみようかと思ったけれど、口笛でも吹いた。