あおいつくえ

晴れた公園のベンチに座り、 おにぎりやサンドウィッチを食べた後、 お茶を飲みながら、 …

あおいつくえ

晴れた公園のベンチに座り、 おにぎりやサンドウィッチを食べた後、 お茶を飲みながら、 読めるようなものを、 作りたいと思います。 その時、 前の噴水の水が上がり、 虹が架かったら、 今、 読んでいた僕の文章なんて、 忘れていいよ。

記事一覧

飛球

   飛球 「明日は君が四番を打つといいよ」 と酒屋さんのおじさんは言いました。 うちの四番が 明日から旅行に行くのです。 とは言っても、 神社の近くの 公園でや…

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夜露

   夜露 夜露に濡れた月を、佇んで眺めている。 小枝を拾い、 砂にその月の輪郭を絵描いて、 小枝を濡らして、 その輪郭をもう一度なぞる。 陰影をつけていると、そ…

あおいつくえ
2週間前
4

地図

   地図 言葉は僕と、 桜の木の下で 待ち合わせをしていたらしく、 豪華なお菓子の詰め合わせのような 物語を聞いた後、 僕は彼女に、 「途中まで、一緒に行っても…

あおいつくえ
1か月前
1

夜空

   夜空 「今日の空のような青かい」 「いいえ。もっと紺です」 「それでは この衣装はこの色に染めますね」 「お願いします。 あの役に合う色だと思います」 「あ…

あおいつくえ
1か月前
2

   畑 お昼休憩のために、一旦作業を止めて、 畑から上がって来て、 僕は着替えるために上着を脱いだ。 筋肉だと思った。 短期間の畑仕事を頂いて、 まだ二週間ぐら…

あおいつくえ
1か月前
1

つくし

   つくし 時計が鳴る前に止めて、 僕は起きてすぐにごはんを食べ 学校に着いて、 放送委員の同級生に会うと、 「何かあなたに賞を上げたいんだ」 と言いました。 …

あおいつくえ
1か月前
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かるた取り

   かるた取り 扇風機を消して窓を開けた四畳半、 西日を浴びて本を読む。 天井からの電球は、 風が吹く度 うなづくように動きました。 じいちゃんのあぐら、あいう…

あおいつくえ
2か月前
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快く

  快く あー今日はよい詩ができた。 お茶を一杯淹れて、 外を眺めようかしら。 「僕は君を信用しているし、 信用していない」 もうすぐ夢が叶うと言ってごらん。 「…

あおいつくえ
2か月前
6

馬の背中

   馬の背中 どちらにしようかどちらにしようかと いろいろ迷った夜の次の朝、 わたしは馬の背に乗り 風船を追い掛けました。 わたしはあなたのようにはなれなくて、…

あおいつくえ
2か月前
1

静寂

   静寂 外套に襟巻き姿の女性は、 まだ辺りは朝の静寂の中、 玄関外から 小さく僕の名前を呼びました。 僕はゆっくり布団を出ました。 けれど飛び石を進むように廊…

あおいつくえ
3か月前
2

一編

   一編 君は作家になり、 僕は売れない詩人になった。 「君の人気は大変なものだね」 「月夜の晩に、少し歩いて来ただけで、 たくさんの人が振り向いていたよ」 「…

あおいつくえ
3か月前
5

弱虫

   弱虫 ほんの僅かな美しい時計の中で、 僕たちは時を刻み、 いろんなことを心配しながら、 暮らしているようでした。 新たな時代の幕開けのように、 どこかの町で…

あおいつくえ
4か月前
1

弧舟

   弧舟 ここからあの汽船を見ていても、 どこの国々を 巡って来たのかはわからないけれど、 あの船やあの船を見ていて、 同じ色の電車が、 この町にあったとして、 …

あおいつくえ
4か月前
1

   朝 ベッドに座ってコーヒーを飲んでいる。 風邪は治ったみたいだ。 咳は出ない朝はまだ来ない。 去った不安はありがたい。 過ぎ去った不安はもっとありがたい。 …

あおいつくえ
4か月前
4

クレヨン

   クレヨン 畳やふすまにクレヨン口紅使って でんしゃを絵描いて、 外に出掛けてどろんこあそび。 夕方帰って来て、 「あっ母ちゃんに叱られる」 と思ったけれど、 …

あおいつくえ
5か月前
2

口笛

   口笛 少し風邪気味で、 友達と遊べない午後は、 口笛でも吹いて。 友達と遊べない午後は、 口笛でも吹いて、横になり、 足を組んで、 何か歌でも 唄ってみようか…

あおいつくえ
5か月前
2
飛球

飛球

   飛球

「明日は君が四番を打つといいよ」
と酒屋さんのおじさんは言いました。

うちの四番が
明日から旅行に行くのです。

とは言っても、
神社の近くの

公園でやっている野球の事です。
僕の四番は、

近頃よく言われているように、
四番ではなく

四番目の打者ということです。
でもみんなを少しぐらい驚かせてやる。

これから帰って素振りをしようと、
空き地を見つけると

ボールを空高く放り

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夜露

夜露

   夜露

夜露に濡れた月を、佇んで眺めている。
小枝を拾い、

砂にその月の輪郭を絵描いて、
小枝を濡らして、

その輪郭をもう一度なぞる。
陰影をつけていると、その動作が、

手招きに見えたようで、
おばけがやってくる。僕は

「今晩は」
と会釈をするために立ち上がると、

「これが今まで投稿した
君の全部の作品です」と広げました。

「どこが良くなかったか、
これから添削しようと思う」

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地図

地図

   地図

言葉は僕と、
桜の木の下で

待ち合わせをしていたらしく、
豪華なお菓子の詰め合わせのような

物語を聞いた後、
僕は彼女に、

「途中まで、一緒に行っても良い?」
と聞くと、

「うん」と言う。
時々あえてペンを止めて、

ゆっくりゆっくり紡ぐ旅行記のように、
古い町の地図の看板に、

「たぶんここが僕たちがいる場所」
と僕は使い終えた切符を置きました。

彼女は、
「この地図では

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夜空

夜空

   夜空

「今日の空のような青かい」
「いいえ。もっと紺です」

「それでは
この衣装はこの色に染めますね」

「お願いします。
あの役に合う色だと思います」

「あの日」
「公園から見えた」

「東京タワー」
「どんな夜空で」

「僕たちは何を話しながら
歩いていたのだろう」

「回廊を通り抜けて
見上げたいちばん星を、

希望の色に塗り変えよう」
「何色に?」

「何色だろう」
「夜露を吸

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畑

   畑

お昼休憩のために、一旦作業を止めて、
畑から上がって来て、

僕は着替えるために上着を脱いだ。
筋肉だと思った。

短期間の畑仕事を頂いて、
まだ二週間ぐらいしか

経っていないけれど、
筋肉だと思った。広がる畑は美しく、

それを熟語で表したいと
考えながら水を飲みお弁当を食べ、

また畑へ下りて行く。その熟語を、
一作目の詩集の題名にしようかと思う。
    

つくし

つくし

   つくし

時計が鳴る前に止めて、
僕は起きてすぐにごはんを食べ

学校に着いて、
放送委員の同級生に会うと、

「何かあなたに賞を上げたいんだ」
と言いました。

同級生は、
「いいよいいよ何も要らないよ。

でもそのように言われてみると、
聴いて頂きたい歌があるなあ」

と言いました。
けれど僕たちだけで

使うわけにはいかないのです。
「何々先生お電話です」

「お弁当や
パンの販売が始

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かるた取り

かるた取り

   かるた取り

扇風機を消して窓を開けた四畳半、
西日を浴びて本を読む。

天井からの電球は、
風が吹く度

うなづくように動きました。
じいちゃんのあぐら、あいうえお。

うさぎと僕は、
かるた取りをお願いしました。

ほしいもたべて、かきくけこ。
ぶんぼうぐやさんからのかえりみち、

さしすせそ、たちつてと。
教科書に僕が授業中絵描いた

あなたの似顔絵は、
数ページの他は、

いつも笑っ

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快く

快く

  快く

あー今日はよい詩ができた。
お茶を一杯淹れて、

外を眺めようかしら。
「僕は君を信用しているし、

信用していない」
もうすぐ夢が叶うと言ってごらん。

「何だいそりゃ」
わあーあ。

今日はちょっとだけよい詩ができた。
もう一杯お茶を淹れて、

窓を開けて風に触れようかしら。
「親友だし親友じゃない」

もうすぐ小糠雨が降るので、
冬に着ていた紺色の絣の着物で、

金色の星を撫でて

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馬の背中

馬の背中

   馬の背中

どちらにしようかどちらにしようかと
いろいろ迷った夜の次の朝、

わたしは馬の背に乗り
風船を追い掛けました。

わたしはあなたのようにはなれなくて、
わたしはわたしであなたではない。

わたしって何だろう。
これは孤独とは

少し違うと思うのだけれど、
この気持ちは何なんだろう。

花のなかで草のうえで、
雲のすきまで川のそばで、

小石を拾って、
大きな木に寄り掛かって座る。

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静寂

静寂

   静寂

外套に襟巻き姿の女性は、
まだ辺りは朝の静寂の中、

玄関外から
小さく僕の名前を呼びました。

僕はゆっくり布団を出ました。
けれど飛び石を進むように廊下を行く。

彼女は寒い所から、
僕は布団の中から来たというのに、

顔を合わせると、
何を言っていいか分からなかった。

今になって彼女は、
それ程の話題でもないような

気がしていました。
僕だって、怖い夢を見ていたから、

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一編

一編

   一編

君は作家になり、
僕は売れない詩人になった。

「君の人気は大変なものだね」
「月夜の晩に、少し歩いて来ただけで、

たくさんの人が振り向いていたよ」
「君は本をたくさん貸してくれた」

「予報通りなら、
どこかで温かいものを食べて、

朝雨が止んだら行こう。雨露で、
木々や果実が輝いていれば、

君の名前入り原稿用紙もきらきら光り、
僕を嫉妬させるだろう」

「僕の詩を、
ねだった

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弱虫

弱虫

   弱虫

ほんの僅かな美しい時計の中で、
僕たちは時を刻み、

いろんなことを心配しながら、
暮らしているようでした。

新たな時代の幕開けのように、
どこかの町でお祭りが開かれていても、

そこへ行くお金の余裕は無かったので、
庭で渡したさお竹に、洗濯物を掛けて、

そのままぶら下がって、
「折れるから止めて、もう買えないよ。

物を大切に使って」と叱られていた。
お金を増やす辞典を貰ったが

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弧舟

弧舟

   弧舟

ここからあの汽船を見ていても、
どこの国々を

巡って来たのかはわからないけれど、
あの船やあの船を見ていて、

同じ色の電車が、
この町にあったとして、

どちらたくさんの本を
運んでいるのかなあと想像すると、

この穏やかな海で、
釣り糸を垂らして時を過ごす、

あの人の弧舟です。

朝

   朝

ベッドに座ってコーヒーを飲んでいる。
風邪は治ったみたいだ。

咳は出ない朝はまだ来ない。
去った不安はありがたい。

過ぎ去った不安はもっとありがたい。
もっともっとありがたいのは、

僕は帽子が風で飛ばないように、
前を進んでいきたい。

クレヨン

クレヨン

   クレヨン

畳やふすまにクレヨン口紅使って
でんしゃを絵描いて、

外に出掛けてどろんこあそび。
夕方帰って来て、

「あっ母ちゃんに叱られる」
と思ったけれど、

母ちゃん、
「これ上手ねえ」と言いました。

だから僕は、
「母ちゃん、ごめんなさい」

と言いました。
「今度は駄目よお」

と母ちゃん言いました。
はじめて作った詩を先生が、

「上手いねえ」とある日、
褒めて下さった。

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口笛

口笛

   口笛

少し風邪気味で、
友達と遊べない午後は、

口笛でも吹いて。
友達と遊べない午後は、

口笛でも吹いて、横になり、
足を組んで、

何か歌でも
唄ってみようかと思ったけれど、

口笛でも吹いた。