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あたしは可愛くなんてない。

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「その感情が愛でも、憎しみでも、悔しさでも。あたしの、あなたへの感情は誰とも違うのだから」…… 1話5000字ほどの読み切り形式で送る、女性同士の感情シリーズ。
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#小説

【あたかわ】あとがきの代わりに。ギークス!世界の歩き方

【あたかわ】あとがきの代わりに。ギークス!世界の歩き方

この世界にやってきたあなたへ このシリーズは現在公開終了した作品をベースに、その並行世界ものとして書いておりますが元々の話は分からなくても大丈夫です。
(元々はpixivとdenkinovelにて連載していたものとノベルゲームで、未完のものも含まれます)

 一部イラスト等はまだ残してあります。

 『ギークス!』および『あたしは可愛くなんてない。』
 姫宮聖(ひめみや ひじり)とLシス(作中のア

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エピローグ いつかのあたしたちは

エピローグ いつかのあたしたちは

「サナちゃん!」
 小さな部屋に、ふたり暮らし。
「ねぇ見てサナちゃん、誕生日プレゼント! あ、あとね、遅れちゃったけどハッピーハロウィン!」
 ファンシーな寝間着姿の天野セナは、満面の笑みを浮かべた。
 リボンでラッピングされた袋をひとつずつ、両手に持って。
「どっちが誕生日で、どっちがハロウィンのプレゼントなの?」
「どっちがどっちなのか忘れた! えっへん!」
 セナは何故かドヤ顔だった。
 

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どうせ死ぬのに

どうせ死ぬのに

 飄々(ひょうひょう)としているという言い方があるらしいが、彼女はまさにそうだ。
 どうして、私とキスしようなんてことを言うんだろう。

 弓琉(ゆみる)……本名はちゃんと別にあるのだが、彼女はよく分からない。
 女子校にいる女子高生で、私の先輩で、十七歳。
 背が大きいのだが、それ以上に胸がヤバイ。
 一緒にゲームセンターに遊びに行くと、いつも『conflict』っていう曲のフルコンボを狙っては

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恋を知らないあなたでも

恋を知らないあなたでも

 私は、姉と血が繋がっていない。
 そんな風に見えないように努力して、ネガティブな自分を吐き出さないようにしている。
 それが、役者でありアイドルである私の仕事だから。
 アイドルユニット、「Lシス」ことLively Sisters(ライブリー・シスターズ)のオファーは、まさしく本領発揮する場を獲得できたというわけだ。
 でも、それを姉は快く思っていない。
 彼女は正直者で、生真面目なのにどこか頭

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ライブリー・シスターズ

 あたしは不安だった。
 この物語を読むことに、みんなはどう反応するのだろう。
 自分はこの、染谷くんと佐倉さんのうちのどちらになるだろう、と。
 ううん、それよりも……
 この仕事がもしうまく行ってしまったら、愛するサナちゃんと離れ離れになるのだろうか。
 そんなことを思いながら、舞台袖で台本を握りしめていた。

 うちの事務所は、「アイドルになれば何でもできる」というのをポリシーにしていて、こ

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証をください

証をください

 私には何もない。
 若さも、人気も、おっぱいも。
 何もないアイドルなのに、どうして私が選ばれたんだろう。

 芸能界でのキャリアは何年だったっけ。
 私は心が空っぽになるような日をたくさん経験したが、こんなにも……世界がモノクロに見えることはそうそうない。
「藍里ちゃん、お久しぶりです」
「え?」
 その人があまりにも鮮やかだったから。
「あ……朝比奈夏希、さん……ですよね」
「ごきげんよう」

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『あたかわ』プチ アイデアはこんな雑なものから

『あたかわ』プチ アイデアはこんな雑なものから



一部ではありますがこんな感じで描いてます。全部iPadにて。

ざっくりラフを描いて、それをもとに

清書して、加工かけるとこうなります。

小説書きは別にイラスト描けなくてよくない?っていう人もいるでしょうが、僕は自分でも描けるようになりたいです。

そこから新作ネタが思いつくこともよくありますので。

(セナちゃん目の下のホクロよく描き忘れます、ごめんね)

夏の微熱(2)

夏の微熱(2)

 この人は男……男の人じゃないと何だか怖い。
 僕は内心怯えていたのだろう。
 必死で、夏樹さんが着ていたもののことなんて考えていなかったのだが、畳の上にはしわくちゃになったハーフトップがあった。
「や、だ……何で、声オペなんかしちゃったんだろ……」
 結局、そういうことなのだ。
「な、つき……さん……」
「マジで自分が気持ち悪い」
 息を切らしながら、夏樹さんは瞳を潤ませていた。
「ひーくん……

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あたしは可愛くなんてない。

 あたしが玄関の扉を開けると、そこにはずぶ濡れの女の子がいた。
「いや、でも……でも、あなた本当は」
 男じゃないか。
 あたしがそう言いたいのを知っているのか、彼女は切羽詰まった声で「いいから何とかして」と言った。
「……なぁ、肉まん……どうしよう」
 その晩はまるで台風でもやって来たかのようで、梅雨の風情もへったくれもなかった。
 そんな中、女の子は胸元のはだけた、白いワイシャツ姿でうなずいた

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まがいモノ

まがいモノ

 風俗の人間と、芸能人って対して変わらないんじゃないかと、あたしは思う。
 だってさ、アイドルって「偶像」っていう意味なんだって。
 偶像っていうことは、本当の神様ではない。
 本物ではない。
 人間が憧れ、崇め、すがるための存在。
 人間にとって都合のいい存在。
 ……世界を掌握しているのは、神様じゃなくてむしろ人間だろうと思う。

「わぁ……カナタちゃん、いつも本当にそっくりで可愛いよ」
「や

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青く小さい、まばゆい君を

「ボクのおかげで、晴れました!!」
 小柄な彼女は両手を広げて、潮風の香りをいっぱいに吸い込んでいた。
「うーん! どこまでも青いね、サナちゃん!」
 空の青と、一面に咲き誇るネモフィラがつながっているように見えた。
 その中で彼女の派手なオレンジ色の、短い髪はとても目立った。
「ボクらは今、海浜公園に来ていまーす! どう? すごいね? すごいでしょー!」
 セナは、アマチュアとはいえ演劇畑の人間

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