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コーラの泡が消える前に

コーラの泡が消える前に

好きと気づいた瞬間
涙がこぼれたのは
嬉しかったからなのか
哀しかったからなのか
わからない

叶わない恋だということだけは
わかっている

それなのに
私の時間は動き出す

派手な音をたてて
グラスに投入された氷

コーラの甘い香りは
君の魅惑的な微笑み

細かい無数の泡は
言葉にならない
私のときめき

茶色く暗い液体を
じっと見ているだけ

運命を変える力があればいいのに

コーラの泡が消え

もっとみる
滲んだ月には帰れない

滲んだ月には帰れない

乾いた髪の毛
うなだれた頭
くしゃくしゃに
撫でて下さい

そうしたら
あなたを忘れるから

もう何も云わないで
明日へひとりで帰るから

空高くには光る満月
「かぐや姫みたいだ」
そう思ったら
涙で月が滲んだ

綺麗に綺麗に洗いたい

綺麗に綺麗に洗いたい

私の心を取り出して
綺麗に綺麗に洗いたい

ごしごし擦って
汚れた心を

すみずみまで磨く

雑念や悲観や
誰かの言葉に傷ついた痕など
染み付いてしまった
かわいそうな汚れを

過去など一切
なかったことにして

綺麗に綺麗に磨きたい

ぴかぴかになった私の心は
新しい光を放って
新しい明日を語り始める

ほどけた刺繍みたいに

ほどけた刺繍みたいに

見つめて抱きしめた夜
秘密の場所だった自転車置き場

ノートをめくるように簡単に
私の時間から君は消えた

ほどけた刺繍みたいに
美しさが息づく哀しい春

流水

流水

あなたを想い続ける限り
流れ続ける水

ときにせきとめる現実
誤解を助長する言葉

わだかまったまま
流れない水は
やがてまた
何かの拍子に
愛しさを増して
涙となってこぼれる

振り向いた時

振り向いた時

価値なんてないと思っていた
見向きもしなかった石ころが
通り過ぎた後で
眩しい光を放つ瞬間
心に鋭い痛みが走る

なぜ立ち止まらなかったのか
なぜ大切に拾わなかったのか

粉々になった光と石の
悔いの破片が
まぶたを閉じても突き刺さる

とめどなくこぼれる滴

振り向いた道の真ん中にあった
思いがけない宝石

もう拾えない私の手のひら

清流

清流

小石を並べて母親に見せる
素直な子どものように

清流の前で
この気持ちをぜんぶ
並べて見せたら

あなたが黙って微笑んで
抱きしめてくれたらいいのに

幸福のサークル

幸福のサークル

君が母親になってゆくのを
哀しい気持ちで見ていたよ

恋が愛に変わるなんて
誰が言ったの?

もう戻れないね
二度と手をつなげないんだね
だって君の両手はふさがっている

僕が立ち入ることのできないサークル

君と彼が約束を結んで
年輪のように少しずつ大きくしていく
幸福のサークル

光る窓

光る窓

あなたの知らない窓がある

そこは夜でも満開の花
暗闇でそっと華やぐ

涙で育った花だから
濡れた想いは茶化せない

晴れた日には
嬉しくて膨らむ蕾

ときめくたびに光る窓

一枚のガラスを隔てて
あなたの笑顔を映すから

そこに近づいても触れられない

それでもいいと喜んで
それではちょっと切なくて

あなたとはきっと抱き合えず

切ないほどに光る窓
そこに映った優しい背中

君の豊かさ

君の豊かさ

森の中をさまようみたいに
君の豊かさに戸惑う

差し込む光になれないのなら
さえずる小鳥みたいに
ほんの少しでいい
そっとそばにいたい

桜

ともに生きていく
ありふれた幸福を
小さな温もりを
手放した風の中

狂ったように
泣き叫ぶように
散る花びら

君の胸の青い空

君の胸の青い空

優しさをなくした背中に
諦めた瞳
「これ以上孤立しないで」
君の声の幻が聴こえた

こんなはずじゃなかった
土砂降りの雨みたいに
心が真っ暗でびしょびしょ

本当は君に
花束を届けたかっただけなのに

塞がれた灰色の空に
行き先を見失ったまま
片方の眼からこぼれた涙

誰に向かって叫ぶこともなく
願いは乾いて
幻の翼

飛びたい…
君の胸の青い空
憧れ続けて

花摘み

花摘み

不本意な誰かの邪気によって
君の顔が曇る
そんな時はすかさず
君の好きな花を摘みに行こう

大地の確かな息吹を
一歩一歩踏みしめて
そこにある山も谷も
あるがままを見つめる

喉が乾いたとしても平気
川の水を手のひらですくって
ごらん、
変わり続ける世界の
澄んだ光を
その瞳に映すんだ