錘をぶら下げる

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とうめい

東名高速の窓の外はつめたい雨と風 ひんやりとした夜の気配が 太ももあたりを伝い言葉になる わたしはだいすきなあなたに会うために はじめての夜行バスに のっている 真…

暖
1日前
3

恋人

2月16日の詩 ついに手綱から放たれた尊い生きもの 今すぐにでも本当は逃げ出したいよ 彼は私を好きだといった 泣きたくなるほど静かな 海の底まで轟くような その声 雲…

暖
12日前
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0227を巡る

バイト先の人は昨日誕生日だった 私の祖母はちょうど2年前の昨日死んだ 心臓の内壁に沿って 涙を上手に流すための 細い管が張り巡らされている として そのうちのひとつを…

暖
2か月前

0228

自分だけの言葉も 自分だけのからだ みたいに 触ればそれと分かる 分かるならいいのに 今吐き出したのに 近くで見るとなぜだか あの子の指紋がいくつか

暖
2か月前

0130

すごく好きになれた人だから すごく嫌いになれる すごく嫌いな人でも すごく好きになれる?

暖
3か月前
2

0103

空には今日も返り血が飛び散り 街灯まで頭を垂れて疲弊している 一緒に不幸になってくれそうなあの人を想う これこそ恋だと歌う チカチカ消えかかる蛍光灯の光を眺めては …

暖
4か月前
1

霜が降りる朝

12月30日霜が降りる朝 寝ぼけた姉夫婦を部屋に残して 1人ベランダに出る 2人のあっけらかんとした態度や 幸せな空気感のちょっとした切れ目に わたしを心配するような視線…

暖
4か月前
1

疲弊しきったので

憎悪、嫌悪、サディズム、劣等感 汚いものも綺麗に拭けば 意外と上手に飲み込めるんだってね 人を裏切り傷つけた時 ちゃんとあなたは痛いですか 胸が痛い、 そんなロマン…

暖
4か月前
1

客家定食の夜

例えれば昨日の早朝に見たひこうき雲 途切れながらも真っ直ぐに走る美しい線 私の目にはあなたの暮らしが そんな風に映っています あなたの人生のこと まだまだ分からな…

暖
4か月前

また散文

例えばオアシスだけ好きな女の子 オアシス以外の全てを知らないけれど オアシスの全てが彼女の全て 一方でオアシスも一応好きな私 ちゃんとブラーも聴いている レディヘや…

暖
5か月前
1

cuz I'm

昼までベッドの中 眠るわけでもなくただ ぼーっとしていた 友人からのメッセージに 寝ぼけた風で返信する ベランダに出る 荒れきった手先とたばこ 変な方向に枯れ葉が舞っ…

暖
5か月前
2

感受性の殻

電線に区切られた空の下 見上げない人々は今日も 無害だけが取り柄といったような微笑を 安いセロハンテープで貼り付けながら その裏側に無関心と底なしの憎悪を孕み 小さ…

暖
5か月前
1

話がしたいよ

会話 「あなたの言うことって、不思議と 本当に言っているように聞こえない。」 「それ本当に思っているの?」 と言われることが最近多い。 そう言われると確かに、本…

暖
5か月前
8

高野悦子20歳の原点を読みながら。深夜の殴り書き

矛盾している、と感じた時なにかと突っつきたくなってしまう。 読み物や書き物に関しては、矛盾そのものというより、矛盾を指摘されないように保険をかけた意図が読み取れ…

暖
6か月前

誰も私を救えない

生と死を経験するのは わたしの人生でわたし一人だけだから 私たちは決して互いの得体を知ることがない あなたはわたしに名をつけられない 同様にわたしはあなたを救えない…

暖
7か月前

言葉の先にあるもの

会話が好きではない 自分の取るに足らない話を 嬉々として語る人間を見飽きたからか それとも 言葉の先にあるもの それだけを見たいからか知らない 7月が終わろうとしてい…

暖
7か月前
1

とうめい

東名高速の窓の外はつめたい雨と風
ひんやりとした夜の気配が
太ももあたりを伝い言葉になる

わたしはだいすきなあなたに会うために
はじめての夜行バスに
のっている

真っ暗になった車内で
あなたが旅立つ前に残した
6時間にもわたるプレイリスト

聴いている
タイトルは一文字
わたしの名

いつでも暖かい私の手を握るあなたを前に
わたしアップルミュージック派なんだよねと
照れ隠ししたけどうれしいの

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恋人

恋人

2月16日の詩

ついに手綱から放たれた尊い生きもの
今すぐにでも本当は逃げ出したいよ

彼は私を好きだといった
泣きたくなるほど静かな
海の底まで轟くような
その声

雲を貫くひとすじの光の
真っ直ぐな眼差しを
私の瞳にそっと落とした

彼は、自然からのことづてを、
ひとり胸に秘めていたのを、
私にもわかる言葉で教えてくれた

風船のように膨らんだり伸びたりしない
わたしのからだとこころは硬くて

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0227を巡る

バイト先の人は昨日誕生日だった
私の祖母はちょうど2年前の昨日死んだ

心臓の内壁に沿って
涙を上手に流すための
細い管が張り巡らされている
として
そのうちのひとつを塞いでいる
これが
祖母のいのちの破片である

どんなに激しく鼓動を打っても
ビクとも動かない
むしろ
そこに在るのだというその気配が
確固とした気配が
咽頭あたりまで侵食してくる

0228

自分だけの言葉も
自分だけのからだ

みたいに
触ればそれと分かる

分かるならいいのに
今吐き出したのに
近くで見るとなぜだか
あの子の指紋がいくつか

0130

すごく好きになれた人だから
すごく嫌いになれる
すごく嫌いな人でも
すごく好きになれる?

0103

空には今日も返り血が飛び散り
街灯まで頭を垂れて疲弊している

一緒に不幸になってくれそうなあの人を想う
これこそ恋だと歌う
チカチカ消えかかる蛍光灯の光を眺めては
あれこそが希望だと

今日もただ好きな歌だけ歌ってたら
突然世界には私一人しか居ないように思えて
不安のあまり立ち止まる
数歩歩けば全部忘れて
ぽかんと再び歌い出す

そうして何も知らないままで
最後の瞬間を迎える日
全ての謎は謎でな

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霜が降りる朝

12月30日霜が降りる朝
寝ぼけた姉夫婦を部屋に残して
1人ベランダに出る

2人のあっけらかんとした態度や
幸せな空気感のちょっとした切れ目に
わたしを心配するような視線を感じる
元気なほうが都合が良い
それはそうだろう

あの人が貸してくれた本の
ページを一枚めくるごとに
冷たい空気が指先に滲んで染みて
それがなぜだか心地いい

ふとベランダの外に目をやると
ほうきを持った近所のおじいちゃんが

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疲弊しきったので

憎悪、嫌悪、サディズム、劣等感
汚いものも綺麗に拭けば
意外と上手に飲み込めるんだってね

人を裏切り傷つけた時
ちゃんとあなたは痛いですか
胸が痛い、
そんなロマンチックな話じゃない
ちゃんと血を流していますか

痛覚はあるあるならばどこだ
今この時も徐々に鈍って
最後はなくなるのだ

客家定食の夜

例えれば昨日の早朝に見たひこうき雲
途切れながらも真っ直ぐに走る美しい線

私の目にはあなたの暮らしが
そんな風に映っています

あなたの人生のこと
まだまだ分からないことばかり
少しずつ教えてくれますか

あなたのことを知るなかで
私のことを知りました

今夜のように笑ってお話する時
ずっと続けばいいと言いながら
こんな夜は二度と訪れないでほしいと
思いました

私が彼の線に触れる時
それは私が

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また散文

例えばオアシスだけ好きな女の子
オアシス以外の全てを知らないけれど
オアシスの全てが彼女の全て

一方でオアシスも一応好きな私
ちゃんとブラーも聴いている
レディヘやスウェード、パルプも少しだけ
オアシス以外も知ってるけれど
彼らが私の全てという訳でもない

私もオアシスの全てを知っている
そんなつもりでおしゃべりしてみたい
めちゃくちゃ適当でもいい
嘘でもなんでもいいから

小さなたくさんのこと

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cuz I'm

cuz I'm

昼までベッドの中
眠るわけでもなくただ
ぼーっとしていた
友人からのメッセージに
寝ぼけた風で返信する

ベランダに出る
荒れきった手先とたばこ
変な方向に枯れ葉が舞っている
穏やかに晴れたこんな日も
風は複雑なんだな

音楽に合わせて
コーヒーの入った
ホーローのマグを
指の腹で叩いたら
カン、と意外な音が鳴った
昨夜指輪外してなかったっけ

こんなときに
あなたがいたらなあ
とおもう

突然ぶ

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感受性の殻

感受性の殻

電線に区切られた空の下
見上げない人々は今日も

無害だけが取り柄といったような微笑を
安いセロハンテープで貼り付けながら
その裏側に無関心と底なしの憎悪を孕み
小さく小さく息をする
今日も死人のように沈黙を守っている

大人になるということは
感受性を何層もの殻に
閉じ込めることだという

大人になどなってくれるな
あなたの形はあなたのものだ
あなたの感受性はあなたそのものだ

その受け皿を社会

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話がしたいよ

話がしたいよ

会話

「あなたの言うことって、不思議と
本当に言っているように聞こえない。」
「それ本当に思っているの?」

と言われることが最近多い。
そう言われると確かに、本当に思っているのか?
というか、なんだかずっと、しっくりきていない。
そもそも会話というものの本質なのかもしれないが、
うわべだなあ、って思う。
言葉はぷかぷか浮かんだり、ぐにゃっと歪んだりして頼りない。

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高野悦子20歳の原点を読みながら。深夜の殴り書き

高野悦子20歳の原点を読みながら。深夜の殴り書き

矛盾している、と感じた時なにかと突っつきたくなってしまう。
読み物や書き物に関しては、矛盾そのものというより、矛盾を指摘されないように保険をかけた意図が読み取れる文章が嫌い。他人の文章に対しても、自分の文章に対しても、なにかを守ろうとして嘘をついてるんじゃないかと考えることが多い。こうして書いてみると分かるけれども、私は基本的に性格が悪い。なんというか、ずっと自分のことも他人のことも許せないのかも

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誰も私を救えない

誰も私を救えない

生と死を経験するのは
わたしの人生でわたし一人だけだから
私たちは決して互いの得体を知ることがない
あなたはわたしに名をつけられない
同様にわたしはあなたを救えない

愛する誰かをそばに留めて
互いの生を共有した気になれば
そんな心地のいい酔いに身を任せれば
私自身の得体の知れなささえ
忘れていられるのかもしれない

でもどれだけ近くにいたって
わたしはあなたの視線の先にあるものが
やっぱり分から

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言葉の先にあるもの

言葉の先にあるもの

会話が好きではない
自分の取るに足らない話を
嬉々として語る人間を見飽きたからか
それとも
言葉の先にあるもの
それだけを見たいからか知らない

7月が終わろうとしていた
この間本を借りたお返しに
ふと思いつきで持ってきた短歌集を
灰皿ひとつ分隣のあなたが
パラパラとみている

なんとなくその手つきから
目を逸らして
そわそわと煙草をいじる
向こうから祭囃子が聞こえる
微風が汗ばんだ肌を撫でる

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