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エルディ作品集

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ナンセンス!シュール!スラプスティック! ちょっと奇天烈な読み物・音声の集合体。
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記事一覧

自作の短編を自動翻訳にかけたら、ナンセンス度がアップし、少しサイバーパンク的になった

時代はグローバル化です。
野球選手がメジャーを目指すように、サッカー選手がヨーロッパを目指すように、物書きも世界を見据えないといけない。

と思ったわけではありませんが、自分のナンセンスな短編をGoogleの自動翻訳にかけたらどうなるだろう、さらにその英文をまた日本語に自動翻訳したらどうなるだろうと、ふと興味がわきました。
プロのクリエイターなら、「わが子同然の自作になんてことを!」って思うかもし

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昔話奇譚『花咲くじいさん』

ある村のはずれの桜にまつわる話。口伝えの真偽のわからぬ話。

むかしむかし、お前のじいさんのじいさんが、まだじいさんじゃなかった頃。
村のはずれに独身老人がいた。息子を早くに亡くし、しばらくして妻にも先立たれた。それからはずっと独り。

独り身の寂しい老人なれど、村人は誰も助けようとしなかった。村の嫌われ者だった。
むしろじいさんのほうから村人を敬遠していたようだった。悪態をつく。欲張り。ときに暴

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恋愛奇譚『この星の恋愛事情 ミチルの場合』

恋愛奇譚『この星の恋愛事情 ミチルの場合』

トイレに駆け込み、扉を閉めて思った。これじゃ嬉ションする犬だ。
「でも仕方ないよ、ミチル」
私はいつもそうするように自分に話しかける。「こんな幸せなこと信じられる? かっこよくて、身長が高くて、それでいてとびきりやさしい。しかも趣味も合う。 こんな理想的な人から告白されて、しかもプロポーズされるなんてありえる?」
三ヶ月前から付き合っている彼に喫茶店に呼び出された。マイナス思考の私は別れ話も覚悟し

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恋愛奇譚『ホットケーキで逢いましょう 』

恋愛奇譚『ホットケーキで逢いましょう 』

彼女は変わっている。
食べ物から声が聞こえるという。こんなパターン初めてだ。
ぼくは笑顔で受け止めようと思うようにしている。しかし目には現れているようだ。彼女は、ぼくの怪訝な目つきを見逃さない。そして、いつもではない、ときどきだ、と彼女は自分は変人ではないのだと弁明する。
いやいや、問題は回数ではないのだけど……。

今日は、その「ときどき」らしかった。
街の古い喫茶店。テーブルには焼きたてのホッ

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創作落語『翌年の長屋の花見』

えぇ、お忙しい中、覗いていただき誠に御礼申し上げます。これもまた何かの縁でしょうから最後までお付き合いくださるとうれしいかぎりです。
で、まあなんでこんな前口上で始まっているかと申しますと、タイトルにあるとおり落語風の小説に一席お付き合い頂きたいと願ってのことです。
以前にも「おっぱい谷」という噺を作りましてここで発表させて頂いたことがありますので、読んでやって欲しいと存じます。えぇ、その「お

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短編ナンセンス小説『ウラギリのメリクリにハラキリを』

リビングの時計の長針がカチッと鳴って短針に重なる。
12月24日から25日へ。
そのかすかな音が、つけっぱなしのテレビの音声をくぐり抜け耳に届く。心に悲しく響く。
この乾いた音を聞くことになるだろうと私は予期していたのだと思う。ただ受け止めようとしなかった。できなかった。今度こそと思った。私は愚かだ。

クリスマス用のディナーで占められるテーブル。もういい加減目を覚ましなさい、夫は別の女と一緒なの

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逆から語る昔話 桃太郎編

逆から語る昔話 桃太郎編

むかしむかし、あるところに鬼ヶ島という島がありました。
赤鬼と青鬼の兄弟が住んでいました。

兄の赤鬼は金棒を磨いていました。
弟の青鬼が言いました。
「赤にい、どうしたの? 金棒なんて磨いちゃって」
「アオ! お前こんな大事な日を忘れるやつがあるか!」
赤鬼は顔を真っ赤にさせて言いました。もっとも、もともと真っ赤なので青鬼には赤鬼の憤怒の感情は伝わりませんでした。
「うーん。今日? 何の日だ?」

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短編ホラー『呪われた牙』

カタカタッ カタカタッ カタカタッ カタカタッ カタカタッ カタカタッ

都心から郊外のベッドタウンへ私鉄が走る。
空調が効いた車内。
「まもなくぅー新沼ー新沼ー」
椅子にのけぞって居眠りしている秦野に、そのアナウンスは届かなかった。
ガタン 電車が停まった。
その衝撃で体を左右に揺さぶられた秦野は目を覚ました。
電車の扉が開いた。眠気が残る目で扉の向こうの光景をしばらく眺め、もう一度目を閉じよう

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超短編小説『鼻毛スイッチ』

俺は今、かつてないほどのすがすがしい気分に満たされている。

これを特殊能力と言わずなんと言おう。心の大きな空白を埋める力を手に入れたのだ。いや、そんな小さな話ではおさまらない。

俺が、この俺が世界を変えられるのだ。

ことの顛末はこうだ。

数時間前・・・

真夜中。俺はベットに横たわり、相変わらず眠れずに天井をぼんやり眺めていた。

不眠が俺を腐らせていくのか、腐っていく過程で不眠症になった

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忙しくて読むヒマがないフォロワーの皆様のために、音声化してみました。ところどころたどたどしいですが、許してやってください。とてもクールに朗読して頂きました。
これでPC作業中や通勤中にも楽しんで頂けるかと思います。(注1)音声化しただけでシュールさが増しておりますが、再生時にどんな事態が起こっても責任は持ちません。 #ナンセンス #シュール #短編

スラップスティック小説『アナーキー・ソックス』

ボンゴレビアンコで死ぬ夢で目が覚めた。
薄暗がり。我が家と勝手が違うことにしばし戸惑う。薄っぺらな布団と無数の体臭が混ざった腐ったピーナッツバターみたいな匂い。すぐに職場だと気付く。
仮眠室での目覚めはいつもこんなだ。
我が家の布団が恋しいわけではない。ただ毎回くり返される「ここはどこだ? 職場か」という自問自答がおれを深い落胆におとしいれる。その度に早く辞めようと思うのだ。
シャツの表裏、ボタン

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スラップスティック小説『みんなボブヘア』

(投げ銭式です。無料で最後まで読めます)

空前のボブヘアブームと言っても過言ではあるまい。
いや、もはやルールと言うべきか。
なにしろ、私以外みんなボブヘアなのだ。
女だけではない。男も子どもも。老いも若きも。老若男女、ボブヘアなのだ。
時の移り行きはここまで早いものなのか。
うつ病で2ヶ月仕事を休んでる間にこんなことになっていようとは。

私は上司からのパワハラ、同僚からの嫌がらせ、部下からの

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落語風小説『おっぱい谷』​

えぇ、お忙しい中、私のノートを覗いていただき誠に御礼申し上げます。シャッフルで偶然ここにたどりついてしまったかたにも、誠に御礼申し上げます。何かの縁でしょうから、しばらくお付き合いいただけたらうれしい限りです。
今回はいつもと趣向をかえまして、落語風にお送りしようかと思います。落語風ですよ。風です。あくまでもね。だから細かいことはつっこまないでくださいね、えぇ。温かい目でお願いします。
まあそもそ

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掛け軸式小説『田舎娘の恋』























































































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