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田原町の「すてきな本屋さん」

浅草といえば浅草。ただ最寄駅は東京メトロ銀座線の田原町になります。

「Readin' Writin'(リーディン ライティン)BOOK STORE」は行くたびに想定外の本と出会える、とても大切な場所です。

オープンは2017年4月。店主の落合博さんは元・新聞記者です。定年目前の58歳で退職して書店業を始めました。当時お子さんが3歳だったとか。

詳しい顛末は↓に書かれています。選書のプロセスや仕事とプライベートの折り合いの付け方など、かなり参考になりました。本屋を開きたい起業志望者に限らず、本好きの方や書店員、文章の書き方を学びたい人にもきっと目新しい発見がある一冊です。

ここはとても静かです。私はいつも二周して棚をじっくり見ます。やがて「以前来たときと同じ場所に同じ本がある」「このセクションは顔触れがだいぶ変わった」と気づく。さらに本たちがゆっくり心を開いてくれる感触を得られます。「あなた本気だね」みたいな。

↑に書かれていますが、こちらの本はいわゆる「委託」ではなく「買い取り」(もしくは「買い切り」)とのこと。つまり返品ができない。利益率がその分いいとはいえ、けっこうリスキーです。

篠崎にある「読書のすすめ」も返品はしないと店主の清水さんが仰っていました。だからこそ選書に対する責任感が強まり、吟味する目が磨かれ、唯一無二の空間が生み出されるのかもしれません。

ところで「買い切り」といえば岩波書店。新書担当だった数年前、岩波新書の「タックス・ヘイブン」に惹かれて(経済書なのに文体や雰囲気がどこかハードボイルドなのです)ドカッと仕入れ、店長に注意されたことがあります。当時は納得できなかったのですが、考えてみたら他の業種では当たり前。魚や野菜が売れ残っても仕入れ先に返品などできません。

出版社や取次への不満をたびたびnoteに書いてきました。でもこのテーマに関しては大型書店の人間こそ意識改革が必要です。「切らさず余らせず」の注文を心掛けなくては。

最後に「Readin' Writin' BOOK STORE」で私が出会った興味深い一冊をご紹介します。

とにかく名言の宝庫。最初に出てくる絵描きのおじさんにいきなり襟を正されます。「調和が大事。対立からは何も生まれない」。中国から来た朱さんの「静かな心でいれば、強くなれる」にも励まされました。そして十着しか服を持たないセバさんの「二分考えれば済むことを、みんな大げさに考え過ぎだよ」に全身で頷く。

プライベートでは時を惜しまずに本を選びます。でも仕事では「即断即決即行動」がモットーです。雀鬼・桜井章一さんの「ツモッたら一秒で牌を切る」を落とし込みました。ダラダラやっても終わらないし充実感も得られない。だったら区切った中で最善を尽くし、終わらなくてもスパッと終わらせよう。人生という限られた時間をより有効なことに使おう。そう決めたのです。

セバさんと桜井さん、言わんとしていることは一緒ですよね。達人の境地に東洋も西洋も肌の違いもないと学びました。

書いていたら無性に再読したくなりました。皆さんもいかがですか? お求めはぜひ「田原町のすてきな本屋さん」で。

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