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年始に「読まれてほしい」一冊

「銀座 蔦屋書店」には、各ジャンルごとにコンシェルジュがいるようです。

おそらく同じ担当をずっと続ける文化があるのでしょう。なおかつ選書に十分な時間を割ける体制が整っていないと難しい。もしこれらの推測が事実であれば素晴らしい環境です。

あとたとえば文庫担当が本社へ異動になり、他店舗で実用書を長く見ていた人が代わりに来たとします。この場合、実用書ではなく文庫の棚を管理することになるパターンが多い。私がこれまでに勤めてきた本屋はそうでした。「蔦屋書店」では、あるいはその辺りにも配慮が行き届いているのかもしれません。

異動は仕方ない。仕事の幅を広げることも必要。でも頻繁に担当替えをしていたらコンシェルジュは育たないでしょう。「自ジャンルは詳しいけど他は何も知らない」では困りますが、スペシャルな武器を持つことも不可欠。これはどの仕事にも当てはまる気がします。

一方で、担当したことはなくても好きでたくさん読んでいるがゆえにそのジャンルに詳しい書店員もいます。かくいう私も児童書の棚を持ったことは一度もありませんが「年始の推し本は?」と訊かれたら↓を挙げます。

ボブ・ディランの名曲”Forever Young”の日本語訳に様々なメッセージを含む絵を添えた楽しい一冊です。”Forever Young"を「はじまりの日」と訳すセンスにも唸りました。

2016年にディランがノーベル文学賞を受賞した際、問い合わせが殺到したのを覚えています。ただ、その後はあまり棚で見掛けません。実にもったいない。

表紙をめくると、いきなり”DIG YOURSELF"(ひとりをたのしめ)と書かれています。私はこの一言にハートを撃ち抜かれて購入しました。シュリンクされていたら見られないので、児童書担当の皆さまには見本を用意することをオススメします。

毎日がはじまりの日。だから存分にいまを楽しめ。流されるのではなく流れを作る存在になれ。そういう声が最も胸に響くタイミングは、やはり誰にとっても平等に節目となる「年始」でしょう。

では私は何を始めるか? どんな流れを作りたいか?

私はコンシェルジュではありません。末端の非正規社員に過ぎず、読書量も目利きもまだまだです。でも実際に読み、感銘を受けた本については自信を持って推薦できます。もちろん全書籍をチェックすることは不可能。読んだものしか推せないのでは限界がある。わかっています。それでも己の心を動かしてくれたものだけをジャンルに関係なく紹介していきたい。

理想は「自分が読んで感動した良書」だけを置くこと。数字が要求される現実の棚へどこまでそれを落とし込めるか? 「売れる本」や「売りたい本」ではなく「読まれてほしい本」を売る。平積みはムリでも差しならできるはず。これがコンシェルジュでもカリスマでもない「ハードボイルド書店員」の2023年の挑戦です。

新しい年を「はじまりの日」から始めませんか? 

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