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「最大公約数」と「棚差しの一冊」

青山ブックセンターは、私が最も好きな書店です。先日久しぶりにBGMのプレイリストが公開されました。

ちなみに同店は雨の日に買うと、洋書&洋雑誌が8%オフになります(オンラインストアは対象外)。これからの季節はありがたいですね。

TV版「新世紀エヴァンゲリオン」の最終話かな? 「雨の日にもいいことはあるのよ」という台詞がありました。あのラスト、私は好きです。起承転結や伏線回収も大事だけど、いちばんは「作り手とキャラクターの魂が救われること」だから。

もちろんお客さんの満足が最優先の作家もいますし、プロである以上はファンを置き去りにするなという声も正しい。でも全てのお客さんに満足してもらうことはムリです。最大公約数? たしかに。ただそこばかりを追い求めてもロジックを超越した意味不明な人の喜びが喪われていくようで。

と思っていたら、こんなツイートが。

実は書店の本は、平積みよりも棚差しが売れています。特に大型書店で積む本はどこも似通っているので(青山ブックセンターはその点でもやや特殊ですが)、一冊二冊の棚差しにこそ「店の色」と「担当の目利き」が出ます。その差が積もり積もって売り上げの明暗を分けていく。

そしてそういう一冊は得てして「売れる本」でも「売れそうな本」でもありません。書店員が「売りたい本」「読んで欲しい本」なのです。最大公約数のお客さんに確実に好かれる「合理的なデータに基づいて選ばれた本」だけを置く店に行くぐらいならアマゾンで十分。

でもたとえば定番の追加発注に際してAIに判断を仰ぐのはアリです。日商簿記や英検といった資格書や春先の辞書など。過去のデータから「今年はあとこれぐらいは動く」「初動が例年より悪いからもう十分」と。そういう予測はAIの方が得意なので。

アナログだけの良さとAIの長所を上手く組み合わせ、従業員とお客さんにより充実した「書店ライフ」を提供できるシステムが生まれたら最高です。

伊坂幸太郎「フィッシュストーリー」じゃないけど「誰かに届いてくれよ、本当にいい本なんだよ」という地味な一冊を棚に忍ばせてお待ちしています。読んでもらえたら私の魂が救われる一冊を。

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