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加速主義

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#左派加速主義

反需要引き締め派宣言

反需要引き締め派宣言

一昨日の続き。低賃金カルテルとか需要引き締めの話だ。

介護を始めとする誰かがやらなくてはいけないが、誰でもできそうに見える仕事は低賃金である。そして、その仕事に大規模に国民を動員するには、低賃金でなくてはならないと書いた。賃金を低くして総需要を低く抑え込む必要があるのだ。総需要が旺盛になって経済が栄えると、エンタメとかイベントとかYoutuberとか楽しい仕事の労働需要が増えてしまうからだ。

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ゲンロン12、無料と自由と公共性と持続性と訂正可能性について

ゲンロン12、無料と自由と公共性と持続性と訂正可能性について

ゲンロン12面白かった。

まず創業者の東浩紀氏の論考「訂正可能性の哲学、あるいは新しい公共性について」と、それに関連して、東氏と政治学者宇野重規氏の対談。かなり興味深く、詳しいことは後述するが、東氏の論考から一節を引用しよう。

アーレントは、ひとがたえず新しく生まれ、新しい思考の可能性とともに参入してくることこそが、公共性の条件だとも語っていた。彼女は、子が生まれ、増えるという単純な事実が、思

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低賃金カルテルと一般意志らしきもの

低賃金カルテルと一般意志らしきもの

先日すこしばかりEvilなTweetをしたくなる記事を目撃したが自重したのである。

佐々木希をゲットできる男は元々がモテるのだし、佐々木希が妻というプレミアムがついてしまったら浮気しないでいるのは難しいなどということが言いたいのではない。また佐々木希でも飽きてしまうのか、と言いたいのでも勿論ない。

というわけで先日のこのエントリの続きです。

豊洲市場という物流の現場でのハードワークが禊とみな

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老いの苦しみは機械化で緩和できるか

老いの苦しみは機械化で緩和できるか

この週末は老いの苦しみと死の苦しみについて考えていた。ゴータマ・ブッダの四門出遊とはあまり関係がない。

老いの苦しみへの対応としては、年金と安楽死がある。しかし死の苦しみは、現代の日本ではほぼ無限大と見積もられており、なんとしてでも避けるべきものとなっている。よって現実的には年金で老いの苦しみに対応するほかない。介護などの制度については後述する。

年金とは本来は長生きしてしまった保険であった。

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『闇の自己啓発』読んだぜ

『闇の自己啓発』読んだぜ

衝動買いした『闇の自己啓発』さくっと読了。

本書は木澤佐登志氏が中心となって、江永泉氏のnoteで展開された読書会を、大量の注釈を付してまとめたものである。話題があっちにいったりこっちにったりする座談会では注釈は極めて重要である。

タイトルはもちろんニック・ランドの暗黒啓蒙からとったものである。というわけでトップバッターはニック・ランドの日本への紹介者である木澤佐登志氏の『ダークウェブ・アンダ

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書評『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話』

書評『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話』

書評です。ヤニス・バルファキスのこの本はずいぶん前から話題になっていたのになかなか邦訳がでなくて英語版(原書はギリシャ語)読むかどうしよう悩んでいたら3月に邦訳でてたらしいのでお買い上げ。

著者のバルファキスは、2015年ギリシャ危機のさいにギリシャ財務相をつとめた経済学者である。彼が10代の娘に経済について易しく語るという体裁になっており、たいへんわかりやすい。まず第1章はジャレッド・ダイアモ

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井上智洋『純粋機械化経済』読書ノート

井上智洋『純粋機械化経済』読書ノート

井上智洋氏は経済学者であるが、エンジニアの経験もありITについても積極的に言及することで有名である。本書でもそこが遺憾なく発揮されており、AIやIOTが社会のどのような変化をもたらすかについて広い視野で概説している。

第1章は現在進行中の第3次産業革命とまもなくやってくる第4次産業革命についての解説である。そして第4次産業革命は一部の人間の頭脳が生産性を規定するような頭脳資本主義をもたらし、やが

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バイオ研究のお金を減らされるのは悲しいけど

バイオ研究のお金を減らされるのは悲しいけど

「(政府の支援を)いきなりゼロにするのが本当なら相当理不尽だ」。11日、日本記者クラブ(東京・千代田)の記者会見で、山中所長は憤りをみせた。ストック事業への政府の支援を2020年度から減らす話が現実的になってきたからだ。
この事業は再生医療に使う高品質なiPS細胞をあらかじめ備蓄する。拒絶反応が減るように多くの日本人に適したタイプの細胞を取りそろえる計画だ。13年に22年度までの10年間の国の支援

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ビル・ミッチェルがやって来た 番外編

ビル・ミッチェルがやって来た 番外編

先週の、MMT提唱者ビル・ミッチェル先生の京都での二度にわたる講演について2つの記事をアップした。

これらを読んでもらえばどんな感じだったかは伝わると思う。しかし基本的にポジティブなことしか書いていない。また、参加者とのクロストークから生まれた発想などについてはあまり書かなかった。というわけで以下の有料エリアには、怒られそうなことや、まだ煮詰まっていないアイデアについて書いてみたい。また子宮頸が

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ついに『クライテリオン』でも新反動主義が取り上げられる

ついに『クライテリオン』でも新反動主義が取り上げられる

保守系の思想誌である『クライテリオン』11月号は安倍晋三批判特集であった。主に保守側からの安倍首相批判で多くは妥当なものであったと思う。ただ多くの安倍批判が虚しいのは、別の人間が首相であっても似たりよったりの情況にしかならず、ことによってはもっと酷いことになるかもしれないということだ。

安倍晋三はただの空虚な器であり、そこにはさまざまな勢力の多様な思惑が入り込む余地がある。そして現実の政治力の強

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ビル・ミッチェルがやって来た その2

ビル・ミッチェルがやって来た その2

昨日11月4日、京都市国際交流会館にて薔薇マークキャンペーン主催でビル・ミッチェル教授のセミナーが行われ、またしても聴講してきた。

今日は松尾匡教授と朴勝俊教授よりいくつか質問が事前に提出され、ミッチェル教授がMMTのアウトラインを話しつつ、質問に答えていくというスタイルであった。ただし通訳を介してすべての質問に詳細に答えるのは不可能なので、仔細は順次ブログにアップしていくとのことでした。誰かが

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ビル・ミッチェルがやって来た

ビル・ミッチェルがやって来た

11月2日土曜日、MMT提唱者の1人であるビル・ミッチェルさんが京都大学にて講演されたので行ってきた。本やブログで知ってる人が目の前で喋ってるというのは不思議な感覚だった。

オーストラリア訛りが凄くて聞き取るのに苦労したけど、通訳の方々の活躍により楽しく聴くことができた。

印象に残っているのは、税の役割は民間から実物支出の余地を奪うことだと強調されていたことだ。税は貨幣的な意味では財源ではない

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デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義その歴史的展開と現在』

デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義その歴史的展開と現在』は1947年のモンペルラン協会創立以来の新自由主義の浸透について語るものである。リーマンショック以前に書かれたものであるが、新自由主義を批判的に語るときにしばしば引用されるので一読推奨である。

途上国においては軍事力であったり経済的な暴力で新自由主義を受け入れさせたのだが、そもそも英米で浸透していた理由のひとつは、リベラリズムとかアイデンテ

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れいわ新選組は保守っぽい?

れいわ新選組は保守っぽい?

予想されていたことではあるが、れいわ新選組に保守層の票がかなり流入していたらしい。古谷経衡氏は下の記事でこの政党が保守層と親和性が高い要素をいくつかあげているが、本来は彼らのような経済左派は政治右派と相性が良いのだ。いつもは自民党に投票するが今回ばかりはれいわにという人はかなりいたと思われるが、代表の山本太郎の放射脳がらみ、あるいは先帝にたいする不敬などに目をつむることができるなら、今後も表を入れ

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