おばあちゃんとサンタクロース
弟も私も子どもだった頃のことです。
おばあちゃんはどうやら、サンタさんを見たことがあるらしい。
そう知った私たちは、おばあちゃんに
「おばあちゃんってサンタさん見たことあるんけ!」
と、ワクワクしながら言います。
おばあちゃんは大真面目に
「おいな! おーらいな体でな、きたァない長靴はいてえェ、真っ赤な顔して立ってるんやで」
と。それ、裏の田んぼのひろっさんちゃうんけ、と子ども心に思ったのでした。
真っ赤な顔?…サンタクロースが赤いのは、まず衣服だし、大きな体に長靴というのも間違ってないけど、なんしか昭和1ケタ生まれな上にずっと田舎暮らしの祖母は、カタカナ語全般にトコトン縁がないのです。
うまか棒というアイスのことは「めいじ」と言っていました。明治乳業が出しているので、箱を見てそう覚えたのでしょう。
また、うちのお風呂はかつて、シバという木片を燃やして焚いていたのですが、太陽光とガスになり、お湯か水を張る時間を、クマさんの形のキッチンタイマーで測るようになりました。
祖母は、そのキッチンタイマーをピピちゃんと呼んでいました。ピピピピッと鳴るクマさんなので。
⬇ちなみに、この記事で言う「ドン引きレベルの凄まじい嫁姑問題」を引き起こす帳本人の祖母で、なかなか個性的な人格。
⬆祖母が晩年、認知症になって自分の息子(私の父)のこともわからなくなった旨にも触れましたが、正確には、父のことは自分の甥だと思っていました。
そして弟(自分の孫)を父(自分の息子)だと思っていました。認識が1代ぐらい、ずれているのです。
1歳ぐらいだった私の息子を見せると、祖母は
「これは孫やな」
と。違う。ひ孫です。
寝室で一日を過ごすほど弱っていた祖母ですが、私の小さな息子に触れようと、懸命に手を伸ばしていました。
かつて畑仕事をしたり、庭の掃除をしたり、柱時計のゼンマイを巻いていたりした祖母。
私が認知症になっても、おばあちゃんと実家の風景はずっと覚えてるんだろうなと思います。
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