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ペキンパーの遺作

十代の頃から気になっていたサム・ペキンパー監督の遺作をやっとアマプラで観ることができた。

こういう過去の作品を観るためには、レンタルビデオやDVDのメガストアが都心部でもなくなりつつある昨今、オレのような地方在住者にとっては、配信と中古ソフトのネットショップだけが唯一の頼みの綱。

今さら過去フィルム作品を売りにした名画座の劇場経営ができるとも思えないしね。

上京前後は、それこそシティロードやぴあを首っぴきに読み込んだもんだけどさ。

それでも当時からすでに、得てして自分の気になる作品とはなかなか出逢えず、もしそれが叶う時はまさしく一期一会という言葉の意味を噛みしめながら鑑賞したものでしたな。かつてはね。ああ、感傷的で年寄りくさい…。

何はさておき、ペキンパーはとても好きな監督。彼のハイスピード撮影によるスローモーションを多用する演出スタイルは、西部劇や戦争映画、サスペンス作品におけるアクションシーンのキワモノ的な目玉となる描写として描かれがちな銃撃戦を、ただ荒々しく暴力的な場面から、むしろセンチメンタルな情動すら醸しだすエモーショナルなシーンへと変換してくれます。

撃つ方も撃たれる方も、本来は一瞬であるその動作がワンカットの中でゆっくり流れることで、そこにセリフでは語り尽くせない感情や行動の動機や意味をカット割りや編集のタイミングで演出サイドが付与できたり、逆に観る側が勝手に読み取ったりもできる感情面でのケミストリーな精神作用を生むスタイルを映像史において新たに創出した天才だとオレは思っています。

それこそペキンパーがいなきゃ、ジョン・ウーやジョニー・トーの演出法も生まれず、タランティーノもロドリゲスも監督としては出てこなかったかもしれない。

そういうわけで長年の思いも抱えて遺作を観たわけですが、さすがに年令的なところもあるのか、アクション演出はシーン的にも少なく、やはりらしいっちゃらしいけど、かなり抑えめ。原作はラドラムだから、ジェイソン・ボーンシリーズと同じなのでそういう点からも題材を選ぶ際の目の付けどころ自体はそもそもいいのかもね?

出演者はいま見るとかなり豪華だけど、少し渋すぎか? 

ブレラン前のルトガー・ハウアー主演で、ジョン・ハート、デニス・ホッパーが脇を固めるなんてさ?

あと、思いの外、裸とベッドシーンが多め。そこはペキさん、老いてますますお盛ん?

むせ返るようなオトコ臭と汗や涙も問わずドロドロのいろんな男汁あふれる「ワイルドバンチ」を人生の映画ベストテンに昔から入れる気満々なオレはコレを見て、思わず映画的な里心がついたのか、ジョン・ウーとジョニー・トーの歴代作品もその影響度の確認のために今日からコツコツ見返そうかと思っていたりします。

さらに、ついでにと言っては失礼ですけど、そこには山本陽子さん追悼の気持ちも込めて、改めて昔の日活アクション映画と男たちの挽歌シリーズとの相関関係のチェックも兼ねてね…。

https://www.kinejun.com/cinema/view/7270


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