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確かにそうだけれど今は違うよね…つい手が出てしまう子どもに手を焼く

「それはわかるんだけど,まずやらなきゃいけないことがあるよね」

子ども同士の遊び場面で,手が出てしまった子どもに対しての保育者の対応をめぐって釈然としない思いが私に起こった。

わたしは,発達に気がかりのあるお子さん向けの「幼児教室」に心理士として関わっている。

療育につなげるか,もう少し様子見をするかの見極めの役目もある教室なので,言ってみれば定型発達からちょっとはみ出したお子さんが多く通ってくる。

未就学児の中でも1歳半健診,あるいは3歳児健診の法定健診前後の子どもさんの問題は,親子の問題でもある。

なぜなら,子どもの神経発達のパターンを作るのは,養育者,ほとんどの場合が親だからだ。

神経発達のパターンとは,親がやっていることをモデルにして,こういう時はこういう対応をすればいいとう,対人関係のパターンもそう。

このような様々なパターンを親に見せてもらって子どもは育つ。

この子のここの部分は,わたしそっくり。
あの言い方,パパそっくり。

当然,いいところばかりを子どもが真似してくれるわけじゃなく,いやーな部分もイイ感じに真似してくれるから,恥ずかしい。

そして,冒頭の幼児教室に戻る。

まだ言葉が出ていない子ども同士だから,そりゃ当然,手が出る。そんなの当たり前だ。

問題は,手が出た時のおさめ方だ。

この時もAちゃんが遊んでいたおもちゃをBちゃんが手を出して触ろうとしたところ,Aちゃんが手で押した。

Bちゃんは泣きもせず,固まったままだ。

AちゃんのCママは,「ごめんね~。Bちゃん,びっくりしたね」とまず,Bちゃんに謝った。Aちゃんも固まったままだ。

こういう場面はよくある。

また,別のDママならば,「ほら,Aちゃん謝りなさい」と,自分がBちゃんに謝る前にAちゃんにあやまらせようとする人もいる。

あるいは,まずAちゃんに「おもちゃが取られると思って叩いたんだよね」とまず気持ちを汲み取ってから,「ごめんね」とBちゃんに謝る,保育者がよいだろうか。

今回,わたしは保育者の対応に「いや,違うだろ」とさすがに思ったので,スタッフミーティングでは,やんわりとまず,「危険行為は注意され,相手に謝るルール」があることを学ぶ必要性を伝えた。

確かに子どもの気持ちを尊重することは大事だ。でも,危険行為は注意されるべきもので,別だ。

果たして,この場合,どれが一番よいのだろうか?

正解がない?

いえいえ,神経生理学的には,順番がある。どんな療育の場面でも,教育の場面でも同じだ。

それは,まず,「叩かないよ」とAちゃんを制止(注意)してから,Bちゃんに「ごめんね」とママが謝り,それからAちゃんに「おもちゃ取られちゃうと思ったんだよね。でも叩かないよ」と,伝える。

まず,体に危険が及ぶ暴力行為は止めなくてはいけない。人を叩くことはいけない絶対的なルールは教えないといけないし,注意すべきこと。気持ちを聞くのは,安全を確保した後だ。

Bちゃんがびっくりして固まっているのもポイントで,突然,目の前に手が出てきて叩かれたことへの「凍り付き」の体の反応が見られ,これをまず解除しなければならない。

凍り付きとは,危険場面に直面した時に命を守るための「死んだふり」のようなもので,野生動物が自分より大きな天敵に襲われた時に仮死状態に突然入る状態だ。

凍り付きまで行かなくても,思わずびくっと体が構えてしまったり,頭より体(神経系)が先に反応することは,よくある。

そして,そこから「闘争逃走反応」といって,闘ったり,逃げたりする「防衛反応」を取るのだけど,どちらもできない時は凍り付くのだ。

だから,同時にAちゃんの行動は,自分のものを奪われる行為への思わず手が出る自然な防衛反応で,Bちゃんの闘争反応(叩く)もAちゃんの凍り付き(びっくりして固まる)も,双方ともに言葉になる前の自然な神経系の反応なのだ。

それに叩いたら相手がびっくりしたり,痛いことを自発的にくみ取るような「心の理論」は,まだこの年齢の発達段階の子に求めても無理なので,「やってはいけない絶対的ルール」という枠を教えることが先だ。

その枠からはみ出した逸脱行動は,注意されることを教えなければならない。

これは,叱ることではない。集団ルールを教え,守ることが社会性の発達にはまず必要だからだ。

このような小さい子どものもめごとは,よくあることで,これが社会性の練習でもある。

こういう場面がいやだから,遊びの場に連れて行きたくないという親御さんも多いが,いやいやこれがないとリアルな社会性のルールが学べない。

社会性のルールは,親がまず手本を見せなければ学べないから,「自分の子どもを注意したくない。トラブルに巻き込まれたくない」なんて,危険回避を先回りしていたら,いつどこで,子どもは学べばいいのだろうか。

嫌な思いもいい思いもして,自分なりの「ほどほどの付き合い」の距離を学まぶのが子どもにとっての遊びでもある。

ということで,こういう場合は,①子どもの叩く危険行為(防衛反応)をまず止める,②相手に謝る(凍り付き解除のフォロー),③子どもに叩かないで「イヤ」と言うように伝える,一緒に練習する,というのが正しいと思われるのだがどうだろうか。

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