中村成吾

塔短歌会所属。短歌・俳句・詩・花・古典・ピアノが好きです。どうぞよろしくお願いいたしま…

中村成吾

塔短歌会所属。短歌・俳句・詩・花・古典・ピアノが好きです。どうぞよろしくお願いいたします。平成4年生まれ。短歌:2013年2月~【塔短歌会2019年10月~】・俳句:2008年4月~【一時期、知音俳句会に所属】私家版『瑠璃色の夏の終りを見届けながら』(2023年8月発行)

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歌誌『塔』2024年2月号作品批評(2024年4月号掲載)-後編-

みなさま、こんにちは。 今日は初夏の風。 四月号の歌評原稿を書き終えたら外に出る予定です。 写真はやまぶきの花です。 選者:梶原さい子 評者:中村成吾 古本を買ってひらいてみると書き込みがあった。うわ、書き込みがあるよ…と落胆するか、どれどれ何が書いてあるんだ…と愉しむか。主体は後者のようだ。歌集や句集では作品の頭に丸印がついている古本にお目にかかることが多い。気になる言葉に波線が引いてあったり、たまに自作と思われる歌が横に書き添えてあったり。味のある古本に出会うと少し

    • 歌誌『塔』2024年2月号作品批評(2024年4月号掲載)-前編-

      みなさま、こんにちは。 ここ最近、一気に気温が上がってきました。 街中には半袖の人も。 写真は「みぞそば(溝蕎麦)」の花です。 それでは2月号の作品批評をどうぞ。 選者:梶原さい子 評者:中村成吾 「やはらかな群れ」という把握が、子と向き合う主体の実感を読者に伝えてくれている。 短歌では「愛している」などと言わなくともしっかりと伝わるものだ。 そして、下の句では主格を入れ替えたリフレインが展開されている。 永井陽子の「ゆふぐれに櫛をひろへりゆふぐれの櫛はわたしにひろはれ

      • 熊野御前(ゆやごぜん)―なれしあづまの花やちるらむ―

        みなさま、こんにちは。 好きな花の香りは?と聞かれたときに、みなさまは何を挙げるでしょうか。 私がまずに頭に浮かぶのが「藤の花」です。郁々たる藤波は晩春の象徴だと思います。 さて、私のふるさと、豊田町(現磐田市)に行興寺という古寺があります。 かつて豊田町池田の地は、旅人の行き交う東海道の宿場町であり、天竜川の渡し場がありました。 なお、天竜川とは、水源の諏訪湖(長野県)から愛知県、静岡県を経て太平洋へと注いでいる一級河川です。 今日は私が学生時代に書いた熊野御前に関する

        • アーリング・カッゲ『静寂とは』(辰巳出版・平成31年)

          みなさま、こんにちは。 今日は珍しく海外の方の書籍です。 著者Erling Kagge(アーリング・カッゲ)氏は、世界で初めて三極点(南極点、北極点、エベレスト山頂)に到達した世界的に有名なノルウェーの冒険家とのことです。1963年生まれ。 なお、本書の原タイトルは『SILENCE IN THE AGE OF NOISE』です。 本書は、この命題の答えを見出すための”33の試み”が綴られたエッセイです。 さて、今日はエッセイ(essay)という言葉について少し考えてみよ

        歌誌『塔』2024年2月号作品批評(2024年4月号掲載)-後編-

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          歌誌『塔』2024年3月号掲載歌「小窓をあけて鳥語を聴きぬ」

          みなさま、こんにちは。 昨年の夏に私家版『歌集 瑠璃色の夏の終りを見届けながら』を作成しました。先日、日本現代詩歌文学館(岩手県)に寄贈したところ、受理していただきました。現在、一般書架に配架されております。書誌番号はB10931274。自分の書誌レコードが作成されているのは不思議な感じ。嬉しいけれど。 それでは『塔』2024年3月号の掲載歌。小林信也選です。 休日は予定がないほうが好き。本も休日も余白が大事。

          歌誌『塔』2024年3月号掲載歌「小窓をあけて鳥語を聴きぬ」

          歌誌『塔』2024年1月号作品批評(2024年3月号掲載)-後編-

          みなさま、こんにちは。 この前読んだ本で「来世とはまぶしきことば花こぶし」(柴田白葉女)・「みづうみは光の器朝ざくら」(片山由美子)という句に出会って、良いなぁと思いました。 それでは後半にまいりましょう。 選者:梶原さい子 評者:中村成吾 いのちの終りを見届けることのできる者はまだ生きている者である。 蜘蛛や蜻蛉などの天敵に襲われることもなく、自動車にぶつかって跳ばされることもなく、そして臨終を馴染みの花のそばで迎えることのできるこの紋白蝶はしあわせであったと言える

          歌誌『塔』2024年1月号作品批評(2024年3月号掲載)-後編-

          歌誌『塔』2024年1月号作品批評(2024年3月号掲載)-前編-

          みなさま、こんにちは。 今日はあたたかい一日になりそうです。 短歌における評とは何か…ということをあまり深く考えずに、選んだ一首について書きたいことを書いています。 ほんとうにこれで良かったのか、と不安を感じたり申し訳なく思ったりすることもしばしば。 毎月迷いながら書いております。それでは、どうぞ…。 選者:梶原さい子 評者:中村成吾 『源氏物語』須磨の巻。「ありあけの月」とは、夜が明けてもまだ空に有る月のこと。当時、夜明け前に出立するのが通例であった。 『源氏物語』に

          歌誌『塔』2024年1月号作品批評(2024年3月号掲載)-前編-

          知音俳句会の思い出

          みなさま、こんにちは。 今日は知音俳句会の思い出を書いてみようと思います。 就職して数年経ったころ、俳句と短歌をしっかりと勉強してみたいと思い、知音俳句会と塔短歌会に入会しました。 毎月、俳句二十句余・短歌十首の原稿を書いて送る生活。 三十歳までに俳句か短歌のどちらか一つに絞ろうと決めていました。 その結果、私は短歌を選んだわけですが、決して俳句が嫌いになったわけではありません。 高校生の頃に買った水原秋櫻子の『俳句小歳時記』は今も時折ひらいています。 知音は行方克巳先生

          知音俳句会の思い出

          歌誌『塔』2024年2月号掲載歌「海のなかにもまた海がある」

          みなさま、こんにちは。 早いものでもう3月に入りました。 今日はまだマフラーが必要な寒さです。 この記事には載せておりませんが、選から漏れてしまった歌にこそ、よりよい歌を詠むためのヒントがありますね。 今月は私にとって挑戦的な?テーマだったので「これはダメ、あれはセーフ」と多くの学びをいただきました。 それでは『塔』2024年2月号の掲載歌。山下洋選です。 夕顔…と聞いて私が真っ先に思い起こすのは『源氏物語』です。 夕顔という女人は、光源氏と恋に落ちるものの、六条御息所の

          歌誌『塔』2024年2月号掲載歌「海のなかにもまた海がある」

          歌誌『塔』2023年12月号作品批評(2024年2月号掲載)-後編-

          みなさま、こんにちは。 今日は時折みぞれが降っています。 それでは12月号の評の後半をどうぞ。 選者:梶原さい子 評者:中村成吾 上の句の間投助詞「よ」が余情を添えながら、下の句の主体の動作へと歌の流れをなめらかに導いている。「開けて確かむ色あせぬうち」という無駄のない引き締まった下の句も魅力的だ。 硝子窓の全面に映っている夕陽。窓を開ければさらに景が広がる。一首全体の運びに淀みがなく、たいへん気持ちのよい歌である。美しい茜色の空が眼裏にありありと浮かび上がってくる。

          歌誌『塔』2023年12月号作品批評(2024年2月号掲載)-後編-

          歌誌『塔』2023年12月号作品批評(2024年2月号掲載)-前編-

          みなさま、こんにちは。 歌誌『塔』が家に届くともう一か月経ったのだなと思います。 月日が経つのは早いものですね。 本記事では、2023年12月号分で私が担当した評の前半を採録しました。 自分が歌を詠む以上に、人様の歌を読むことに喜びを感じています。 後半はまた別の記事で…。 選者:梶原さい子 評者:中村成吾 群れ咲く白いあさおが、少しぼかしてしっとりと描かれている。そんな抒情ゆたかで涼感ある着姿が脳裡に浮かんでくる。 「日傘の影に」というさりげない観察も実に行き届いてい

          歌誌『塔』2023年12月号作品批評(2024年2月号掲載)-前編-

          由季 調『歌集 互に』(ながらみ書房・平成18年)

          みなさま、こんにちは。 今日は、由季 調さんの『互に』という歌集を取り上げたいと思います。 この歌集の特色のひとつとして、ひらがなが多用されている点が挙げられます。ひらがなを用いた歌人としては、会津八一が有名ですね。会津八一は総ひらがなの万葉調の歌を遺しています。 それでは、由季さんの歌の世界へ。 ひらながの歌は一首を読むときの滞在時間が長くなります。 「あゐいろ」は「藍色」よりも深い色合いを思い浮かべます。 「いんくびん」は「インク壜」よりもどこか可愛い感じがします。

          由季 調『歌集 互に』(ながらみ書房・平成18年)

          落合直文『御代のほまれ 巻の三』(大倉書店・明治28年)

          みなさま、こんにちは。 学生時代、古本まつりがあるとよく出かけて行って古書を漁っておりました。今日はいつかの古本まつりで買った落合直文著『御代のほまれ 巻の三』(大倉書店、明治二十八年)について、その序文を紹介したいと思います。 みなさまは落合直文(文久元年~明治36年)という人物をご存じでしょうか。歌人・国語学者として知られており、皇典講究所(國學院大學)には晩年まで在職されていたそうです。昨年5月に、梶原さい子著『落合直文の百首』が刊行されました。 「兄は、海軍の軍

          落合直文『御代のほまれ 巻の三』(大倉書店・明治28年)

          歌誌『塔』2024年1月号掲載歌「君のくちびるすこし濡れてる」

          みなさま、こんにちは。 もうすぐ1月もおしまいですね。 今年はどのような本を読み進めようか… 皆さんは読書の目標はありますか? 式子内親王集全釈、尾崎左永子短歌集成、山中智恵子全歌集など…買ったけれどまだ開いていない大部な本たちをきちんと読みたいと思います。 それでは『塔』2024年1月号の掲載歌。花山多佳子選です。 今年はどのような短歌ができるのか楽しみです。 5月号の詠草をそろそろ清書します。 それでは、また。

          歌誌『塔』2024年1月号掲載歌「君のくちびるすこし濡れてる」

          歌誌『塔』2023年11月号作品批評(2024年1月号掲載)-後編-

          みなさま、こんにちは。 今日は小雨。雨音を聴きながらこの記事を書いています。 こうしている間にも、1月号の評の締め切りがじりじりと迫ってきております。早く原稿に着手しなければ…。 それでは11月号の評の後半をどうぞ。 選者:梶原さい子 評者:中村成吾  主体はかすみ草の存在を忘れてしまったわけではない。かすみ草は花束に添える花として脇役に甘んじることが多いが、この歌ではちゃんと主役だ。かすみ草はまだ生きているが、死につつある。ドライフラワーになるということは生物としての

          歌誌『塔』2023年11月号作品批評(2024年1月号掲載)-後編-

          歌誌『塔』2023年11月号作品批評(2024年1月号掲載)-前編-

          みなさま、こんにちは。 編集部よりご依頼をいただきまして、2023年11月号~2024年4月号まで梶原さい子選歌欄の評を担当させていただいております。 実際に掲載されるのは2ヶ月後ですので、2023年11月号の評は2024年1月号の掲載となります。今号から掲載開始です。 普段のnoteの記事は敬体(です・ます調)ですが、評は常体(だ・である調)で書いております。本記事もそのままとしました。 きちんと評を書くのは初めてなので試行錯誤ですね…。もっと良い評を書けるようにな

          歌誌『塔』2023年11月号作品批評(2024年1月号掲載)-前編-