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消防士時代の話

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高校卒業後7年間消防に勤め、そこでみた景色や思ったことを書いてます。これを読んで少しでも役に立てたり同じような被害が減ってくれればなと思います。
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記事一覧

【命と保身の天秤】消防士時代の話

【命と保身の天秤】消防士時代の話

「セクハラって言われたら困るからなぁ…
AEDは使えないなぁ…」

ある日救命講習で心肺蘇生法を教えていると
1人の男性がそう言った

人の命は天秤にかけて良いものではない

だがその人は命を天秤にかけ
保身を選んだ

その考えもわからなくはないが
そんなの関係なく救命活動は
するべきなのでは?と思う

なぜなら人は
心停止から5分経過
呼吸停止から10分経過
で死亡率が100%になってしまうから

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【最期の晩餐はカップ麺】消防士時代の話

【最期の晩餐はカップ麺】消防士時代の話

天気の良い平日の昼下がり

目の前には首を吊った独居の老人

散乱したテーブルの上には1枚の遺書

それと食べかけのカップ麺

今の日本を必死に作り上げて来たであろう
功労者最期がこれで良いものなのか

最期の晩餐がカップ麺でいいものなのか

実はご老人の自殺が多い

消防時代色々な出動をしてきた
もちろんその中で自ら命を経ってしまう方にも
多く遭遇した

その割合としてご老人の多さに千葉は驚いた

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【焼肉が嫌い】消防士時代の話

【焼肉が嫌い】消防士時代の話

秋の夕暮れ

段々と赤くなる空に対抗して

目の前では家が真っ赤に燃え上がっている

消防を退職する決意をし
次の企業に合格をした次の日

あと数日しかない勤務だなぁ、、、
いつ職場には辞めること言おうかな、、、

なんてことを思いながら心ここに在らずで
いつも通りの業務を行なっていた

雪が積もる前に市内の消火栓が正常に
作動されるかどうかの点検を実施する

その日は1日中その点検だった

大き

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【災害は待ってくれない】消防士時代の話

【災害は待ってくれない】消防士時代の話

突然鳴り響く警報音

1人。また1人と連動していく音

日曜日の夕方

家族団らんの時を止める音

緊急地震速報だ

幸いにも住んでいる地区は震度が弱く
大事には至らなかった

数年振りに聞くその音で
2つの嫌な記憶が蘇る

①2018年9月6日3時7分

9月4日から5日にかけて
北海道に上陸することはあまりない
台風が上陸していた

数メートル先から先輩が出す声も
強風にかき消されるほどの雨風

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【海はそんなに好きじゃない】消防士時代の話

【海はそんなに好きじゃない】消防士時代の話

楽しくBBQしてたであろう
椅子やクーラーボックス

その景色に合わない消防の集団
本当なら救助服姿でなんて海に行きたくない
なぜいるのか…

それは若者が海に流され行方不明になったから

あれは北海道の5月末にしては季節外れの猛暑の日
かんかん照りの空でBBQ日和な日だった。

「水難救助鳴らないと良いですね…」
なんて先輩と話していた矢先
神経を逆なでするような指令音が鳴り響いた。

"水難救

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【小児の心停止現場】消防士時代の話

【小児の心停止現場】消防士時代の話

消防士2年目の6月。

時々救急車に乗るようにもなった。
僕が救急車に乗るときは基本的に心停止が予測される事案のみ。

いわゆる心臓マッサージ係だ。

何件も出動し、何人も心臓マッサージをしていたが、ほとんどが高齢者だった。

免許取得の時に心肺蘇生法は習うかと思うが、
「おおむね5㎝沈むほど強く圧迫しましょう。」
と教えられたと思う。

そう簡単ではないのだこれが。

思ってるより強く押さないと

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【聞こえないフリをした過去】消防士時代の話

【聞こえないフリをした過去】消防士時代の話

「僕これからどう生きていけばいいですか。」

中学2年生の男の子の口から出た言葉。

それに対して20歳の千葉は何も言えなかった。

20歳の初夏。
小児の心停止現場を経験し、落ち込んでいようが
日々の出動は待ってくれない。

初夏の心地よい暖かさ
訓練をしているとじんわりと
汗ばんでくる季節。

13時から15時までの定期訓練を終え
「だいぶ汗かく季節になってきたな!」
なんて先輩と話しながらT

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【親心と現実】消防士時代の話

【親心と現実】消防士時代の話

消防4年目の夏。
通常の消防士ではなく
『救助隊』に任命され日々訓練に励んでいた。

その年に職場から大型自動車免許を
公費にて取得させてもらった。

免許を取得して大きな消防車を運転するのは
実に面白い。(ガリレオやめれ)

初めて出動で自分が運転していくときは
緊張のあまりギアが上手に入らず、
隊長から「へたっぴだなお前www」
なんて言われながら運転していた。

消防を退職するころには職場で

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