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岡田将生研究㉕今こそ語りたい「小さな巨人」山田春彦の特異性

 2017年放送連続ドラマ「小さな巨人」。岡田将生が演じたのは、主人公香坂(長谷川博己)と時には敵対し、時には結託して事件解決と警察組織そのものに挑む警察官山田春彦。東大卒のエリートでありながら、内閣官房副長官である父親(高橋英樹)との確執を拗らせてるが故に、あえてノンキャリアの道を選んで警視庁に入庁したという捻くれ者である。日曜劇場初出演の岡田(当時27歳)は、本作にて主演の長谷川を始め、曲者の捜査一課長小野田役の香川照之、たたき上げの所轄刑事を演じた安田顕などのベテラン実

    • 岡田将生研究㉔「伊藤くんA to E」とはなんだったのか?

       俳優岡田将生を語るとき、かなりの頻度で引き合いに出される映画「伊藤くんA to E」(2018年)で演じた伊藤くん。ひとことで言えば「ヤバい奴」いや「かなりヤバい奴」。こんな役も見事に演じた岡田将生、ということなのだが、「伊藤くんA to E」という作品自体は、残念ながらヒットしたとは言いづらく、話題作というわけでも、賞レースにのったわけでもない。だが、岡田の俳優としての実力や個性について言及するときに欠かせない役であることは、誰もが認めるところ。そんな不思議な「伊藤くんA

      • 岡田将生研究㉓2023年総括:原点回帰と新たなステージへ

         2023年の岡田将生は、映画「1秒先の彼」で本格スクリーンデビュー作「天然コケッコー」(2007年公開)以来の山下敦弘監督とのタッグで注目を集め、俳優を休もうかと悩んだ時期に出会った代表作、ドラマ「ゆとりですがなにか」(2016年、2017年SP)の続編映画「ゆとりですがなにかインターナショナル」公開で話題となった。どちらも岡田の魅力を知り尽くす人気脚本家宮藤官九郎の作品であり、否応なくデビューからこれまで岡田が歩んできた道のりを振り返らざるを得ず、その成長ぶりに感嘆し、ど

        • 岡田将生研究㉒愛される理由

           近頃岡田将生は「パブリックイメージ」について悩んでいるらしい。2022年放送のラジオにゲスト出演した時も、2023年7月に宮藤官九郎のラジオに出演した際にも、同じようなことを言っていたので、どうやら本人にとっては深刻なことのようだ。ここで少し考えてみて欲しい。芸能人のパブリックイメージは、故意に作られるものではなかったか?売り込むためにイメージを作りこんで、2枚目で行くか、3枚目路線で売るか、戦略を立てるものだと思っていた。逆に言えば岡田のバラエティやトーク番組で見せる姿は

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          岡田将生研究㉑ファンタジーとリアリティーの狭間で

           2021年の人気ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」。岡田は、主人公とわ子の3番目の夫中村慎森をシニカルかつ愛らしく演じ話題をさらった。冒頭で、三人の元夫をなぞらえて「1回目はsuddenly、2回目はcomedy、3回目に至ってはfantasy」というとわ子の父の台詞がある。1回目の夫とは究極のモテ男(松田龍平)との急な結婚、2回目の夫は面白可笑しい男(東京03角田晃広)との結婚。では、3回目のファンタジーとは?  この台詞は「”岡田将生=ファンタジー”のイメージは視聴者

          岡田将生研究㉑ファンタジーとリアリティーの狭間で

          岡田将生研究⑳「謝罪の王様」~出会いは新たな扉を開く

           2013年公開「謝罪の王様」は、脚本宮藤官九郎×監督水田伸生×主演阿部サダヲの黄金トリオがおくる3作目のコメディ映画として注目を集め、「謝罪エイターテインメント」という新しい切り口と豪華な出演者が話題を呼び、興行収入21.8億円のヒット作となった。本作で岡田は、”CASE2.セクハラを謝りたい!”で、東京謝罪センターに依頼する沼田卓也を演じ、「気持ち悪い」と評判になった。特筆すべきは、クドカン、水田監督、大人計画といったその後のキャリアに大きく関わることになるビッグネーム製

          岡田将生研究⑳「謝罪の王様」~出会いは新たな扉を開く

          岡田将生研究⑲悲恋ものの名手

            近年、映画「ドライブ・マイ・カー」や「CUBE」などで狂気の演技が話題の岡田将生だが、かつては恋愛映画にも引っ張りだこの時期があった。2007年「天然コケッコー」で、ラブストーリーと呼ぶにはあまりに初々しく瑞々しい作品で本格スクリーンデビューを飾ると、2013年の「潔く柔く」まで、実に9本の恋愛要素を含む映画に出演している。そのうちドキュメンタリー風に高校生カップルを描いた「ハルフウェイ」、がっつり恋愛ではなく憧れの王子を演じた「ひみつのアッコちゃん」を除く6本には、死の

          岡田将生研究⑲悲恋ものの名手

          岡田将生研究⑱キャリアにおける”イケパラ”の重要性

           第一線で活躍する俳優には、必ず売れるきっかけとなった作品がある。岡田将生にとっては、2007年に放送された人気テレビドラマ「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス」(堀北真希主演、通称イケパラ)がそれにあたる。小栗旬、生田斗真、水嶋ヒロといった当代きっての人気イケメン俳優がひしめくこの作品で演じた関目京悟役によって、岡田将生の名は広く世間に知れ渡ることになった。  ”イケパラ”は、初回15.9%であった視聴率が最終回には21.0%まで伸びた、いわゆる勢いのあるドラマだっ

          岡田将生研究⑱キャリアにおける”イケパラ”の重要性

          岡田将生研究⑰CUBEで見せた極上の狂気

           2021年映画「CUBE 一度入ったら、最後」。豪華キャストで話題を呼んだこの作品、公開されるや否や「狂った岡田将生最高!」と岡田の狂人演技に注目が集まった。岡田の狂気の演技の出発点といえば2009年公開の映画「重力ピエロ」。一見普通の青年に見える春(岡田)が抱える孤独の闇は深く、殺意を持って炎の中にたたずむ姿は、恐ろしく美しかった。それから12年、「CUBE」で岡田が見せた圧倒的な狂気、観るものを恐怖に陥れる「底知れない得体の知れなさ」の正体とは?  CUBEで岡田が演

          岡田将生研究⑰CUBEで見せた極上の狂気

          岡田将生研究⑯舞台作品に見る美しさと危うさ~倒錯の世界

           先日、主演ドラマ「ザ・トラベルナース」が大好評のうちに最終回を迎えた。人気の秘密は、練られたストーリー展開に加えて、毎話のお約束、岡田演じる主人公那須田歩と中井貴一演じる九鬼静のコミカルなやり取りにある。師弟のようで親子のようでもあった2人の本当の関係性が明らかにされた最終話。「運命の人」という占いの言葉が飛び出し、看護師仲間からあらぬ誤解を受けたまま物語が終わり、さらに公式ツイッターが「いつまでも幸せに」のタグをつけたものだから、BLファンが騒然とし始めた。思い返せば「リ

          岡田将生研究⑯舞台作品に見る美しさと危うさ~倒錯の世界

          岡田将生研究⑮羽生晴樹から那須田歩への系譜

           現在放送中のドラマ「ザ・トラベルナース」の主人公那須田歩は、アメリカ帰りの意識高い系看護師で、思ったことをズバズバ言う一見いけ好かない人物だが、「歩ちゃん」と看護師仲間にからかわれる愛されキャラでもある。いけ好かなさと愛されキャラという相反する性質が役の中に同居する、岡田将生の真骨頂。岡田のいけ好かないエリートキャラといえば、2013年の大ヒットドラマ「リーガルハイ」の羽生晴樹を思い起こす人も多いだろう。羽生から那須田へ、必然とも言える役柄の変化の系譜をたどる。  羽生と

          岡田将生研究⑮羽生晴樹から那須田歩への系譜

          岡田将生研究⑭バディ・トリオもので輝くヒロイン感と俳優力

           圧倒的なカリスマ性で作品を引っ張る主演俳優がいる中で、岡田将生は、バディものトリオものでより魅力が引き立つ俳優の一人である。連続ドラマ初出演の「生徒諸君!」も3TDというクラスのを牛耳る3人組のひとりであった。岡田の主演ドラマで続編が製作されたのは、「ST警視庁科学特捜班」(続編は赤と白の捜査ファイル)「不便な便利屋」「ゆとりですがなにか」の3本でいずれもバディ・トリオものである点も興味深い。以下、岡田のバディものトリオもの作品の数々を振り返る。 ドラマ「生徒諸君!」(2

          岡田将生研究⑭バディ・トリオもので輝くヒロイン感と俳優力

          岡田将生研究⑬生徒諸君!配信記念~共演者たちとのその後

           「ザ・トラベルナース」のスタート記念と銘打って、2007年放送の岡田将生初連続ドラマ出演作「生徒諸君!」が配信された。改めて見てみると、現在も活躍し続けている生徒役が多く、彼らの初々しい演技が眩しい。岡田と再共演をはたしているキャストも多く、ファン必見の一作だ。そこで、今作のキャストと岡田のその後の共演作をまとめた。 【2年3組生徒】 堀北真希(樹村珠理亜) 2007 花ざかりの君たちへ~イケメンパラダイス             2013ATARUスペシャルニューヨーク

          岡田将生研究⑬生徒諸君!配信記念~共演者たちとのその後

          岡田将生研究⑫純粋培養俳優の希少価値とCM

           岡田将生は、最近の俳優としては珍しくSNSを一切やらない。その端正な容姿からアイドル俳優と誤解されがちだが、写真集やカレンダーも出さずお渡し会やファンミーティングもやらず、ファンの前に出るのは映画の舞台挨拶か自身の出演する舞台公演のみ。戦隊ヒーローものやライダー俳優でもなく、モデル出身でも子役上がりでも二世俳優でもなく、特定の作品で大ブレイクしたわけでもない。それなのに10代から15年以上も第一線で活躍し続ける非常に稀有な存在だ。少なくとも主役級の同世代で岡田のような売れ方

          岡田将生研究⑫純粋培養俳優の希少価値とCM

          岡田将生研究⑪白マサキVS黒マサキ

           最近世間を賑わわせているニュースのせいで、2020年に公開された映画「星の子」が密かに再注目されてる。新興宗教にのめり込む親を持つ女の子(芦田愛菜)の苦悩の物語。その中で岡田将生が演じるのはこの映画で唯一嫌な人間として描かれている教師の役。「岡田将生ってこういう役ハマる!」「嫌な奴の演技が最高」と黒マサキに対する賞賛の声が並ぶ。アカデミー賞外国語映画賞受賞で一躍脚光を浴びた「ドライブ・マイ・カー」でもカッとなって人を殺してしまう役どころを好演し、近年岡田の悪役は既定路線にな

          岡田将生研究⑪白マサキVS黒マサキ

          岡田将生研究⑩バディものの原点「チキンレース」

           2013年は、岡田将生のドラマ俳優としてのキャリアにおいてその後のステップアップを予感させる重要な年であった。4月には藤原竜也とW主演を務めたSPドラマ「ST~警視庁科学捜査犯」。このドラマは「ST~赤と白の捜査ファイル」として後に連続ドラマと映画が製作された。秋には熱烈なファンを持つ話題作「リーガルハイ」(主演堺雅人)に主人公の敵役として出演し、ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演男優賞を受賞。その後の弁護士役のオファーの原点となる。そしてその「リーガルハイ」放送中の11

          岡田将生研究⑩バディものの原点「チキンレース」